医療・介護改革法案を可決 衆院委、与党が採決強行 「要支援切り」と野党批判

2014.05.15

医療・介護改革法案を可決 衆院委、与党が採決強行 「要支援切り」と野党批判
2014年5月15日朝日新聞


 介護や医療の大きな改革案を盛り込んだ「地域医療・介護推進法案」は14日、衆院厚生労働委員会で、自民、公明両党の賛成多数で可決された。

野党各党は主に介護保険見直しの問題点を指摘、審議を続けるよう求めたが、与党が採決を強行した。
懸念が解消されないまま、6月に成立する見通しが強まった。

 

 14日夕、野党側の質問が終わった矢先に、与党側が「質疑終結」の動議を出した。
野党議員は次々、後藤茂之委員長の席に駆け寄った。騒然とする中で後藤氏は質疑を打ち切り、採決を求めた。

 「多数の法案を一つに束ねて提出する政府のやり方自体、国会の役割軽視だ」。
討論で重徳和彦氏(維新)はこう厳しく批判したが、自公の議員が一斉に起立。賛成多数で法案は可決された。

 ■費用抑える狙い

 この法案には、消費増税に合わせて医療・介護制度を効率化するさまざまな改革が盛り込まれている。
高齢化が今後も進む中で、費用の膨張に歯止めをかけるねらいだ。
関連する法案は19にのぼる。
「医療と介護の改革は一体で進めるもの」との理由で、政府はこれらをまとめて改正する一本の法案とした。

 審議の焦点となったのは、サービスの削減や利用者の負担増が並ぶ介護保険の改革だ。
野党はとりわけ、介護の必要度が比較的軽い「要支援」向けサービスの一部を、市町村事業に移す案を批判した。

 要支援と認定されたお年寄りは約150万人いる。リハビリや掃除などを介護保険サービスとして受けられる。
ただ家事の援助でも専門職のヘルパーが担うことが多く、コストが割高との指摘もある。費用は年間数千億円。
市町村への移管には、サービスの提供方法や料金の裁量を広げ、ボランティアなどにも担い手になってもらうことで、コストを抑えるねらいがある。

 これに対し、民主党や共産党などは「利用者の視点を無視した『要支援切り』だ」と批判。
担い手がいるかどうかや財政事情は市町村ごとに大きく異なるため、サービス格差が広がる、といった異論も相次いだ。
12日の地方公聴会でも、介護事業者が「ボランティアにヘルパーの代わりはできない」と訴えた。

 14日の衆院厚労委には安倍晋三首相が出席し、「利用者の多様なニーズに応えるため、地域の実情に応じて市町村が効果的かつ効率的に実施できる」と強調。

サービスの質が落ちれば、かえって利用者の要介護度が上がってコストも増えるとの指摘に対しては、「サービスを抑制しようというものではない。
重度化やコストの増大につながるとの見通しは持っていない」と反論した。

 ■増える自己負担

 法案にはこのほか、特別養護老人ホームへの新規入所者を原則「要介護3」以上に限定▽一定の所得がある利用者の自己負担割合を1割から2割に引き上げ▽施設入所者向けの食費・部屋代補助の対象を縮小、といったメニューが並ぶ。

 この日の審議では大西健介氏(民主)が「消費税が上がったのに、介護の給付が抑制されるのは道理に合わない。
これが多くの国民の声だ」と批判。安倍首相は「社会保障制度を次の世代に引き渡す大きな責任がある」と理解を求めた。

 与党が採決を強行したのは、審議時間が40時間近くになり、「他の重要法案と比べて遜色ない時間をとった」(自民の金子恭之氏)との理由からだ。
だが、野党側は「内容が多岐にわたり、もっと審議が必要だった」などと反発している。

 法案は15日の衆院本会議で可決されて参院に送られ、6月中に成立する見込みだ。来年4月以降、さまざまな介護改革が順次、実行に移されることになる。

 (石松恒、畑山敦子)

 

 ■介護保険改革のポイントと問題点

〈1〉法案の内容

〈2〉審議で出た主な懸念・批判

     *

〈1〉<「要支援」向けサービスを市町村事業に移管> 要介護度が比較的軽い人が利用する訪問・通所介護を、サービス内容や料金が全国一律の介護保険から移し、市町村の裁量を広げる

〈2〉ボランティアなどが移管後の担い手になれるかどうかは地域差が大きく、サービスの質の格差も広がる。財政が厳しい市町村では介護サービスを利用しにくくなる

 

〈1〉<特別養護老人ホームの入所要件を厳格化> 新規入所は原則「要介護3」以上に限定。それより軽度でも認知症などで在宅介護が難しい場合は特例で入所を認める

〈2〉要介護1~2でも認知症の人は珍しくなく、家族の介護負担が増える。特例入所の目安が不透明

 

〈1〉<一定の所得がある利用者の自己負担割合を1割から2割に引き上げ> 対象は「年金収入で年280万円以上」などとする見通し

〈2〉対象となる収入基準が低く、負担増となる人が多すぎる

 

〈1〉<低所得の施設入所者向けの食費・部屋代補助の対象を縮小> 所得が低くても、「単身で1千万円超の預貯金がある」場合などは補助対象外に

〈2〉預貯金だけでなく、保有する不動産なども考慮すべき