県内でも看護師不足が叫ばれている

2014.05.13

(深層2014)看護師、足りない? 大規模病院も確保に躍起 /香川県
2014.05.08 朝日新聞



 県内でも看護師不足が叫ばれている。
勤務先として人気がある大規模病院も、看護師確保に躍起だ。仕事と家庭を両立する難しさによる離職や、診療報酬を増やすために多くの看護師が必要なことなど課題が浮かんでいる。


 県と県看護協会が4月中旬に高松市内で開いた「看護職員合同就職説明会」には44病院が参加した。

来場者は172人(前年比30人増)で、県立病院や高松赤十字病院のブースは看護学生らでにぎわった。

一方で、小規模病院のブースは学生もまばらで、所在無さそうな担当者もいた。
主催者は「就職希望は大規模病院や公立病院に偏る」と指摘した。


 ■配置基準届かず

 「看護師を募集したが、確保できなかった」――。
看護師の配置基準を満たさず、診療報酬を過大に請求していたとして、四国厚生支局が昨年度、保険医療機関指定を取り消す行政処分を発表した麻田総合病院(丸亀市)と五番丁病院(高松市)は、調査に対してこう説明していた。

 麻田総合病院の問題を耳にしたある病院幹部は、すぐに事務室へ向かい、「うちは大丈夫か?」と確認したという。

以前、看護職員の退職が相次ぎ、配置基準ギリギリの状況に陥ったことがあったからだ。
いまも人繰りに余裕はない。この幹部は、両病院の法令順守に対する意識の欠如が最大の原因と指摘しつつも、「決してひとごとではない」と打ち明けた。


 ■年齢制限を緩和

 新たな看護師確保策に乗り出す病院もある。

 県立病院では、正規職員採用の年齢制限が「35歳まで」だったが、昨年度採用者からは経験者を「59歳まで」に緩和した。

それでも、県立中央病院は看護師不足などにより緩和ケア病棟を稼働できない状況が続いている。

 県は、県立病院でのキャリアアップや教育態勢などを伝える動画やDVDを初めて作製した。
県内外の大学や専門学校など約90校に配る。担当者は「幅広く募集し、より優秀な人材を採用したい」と懸命だ。

 県看護協会の調査(80病院回答)によると、2011年度採用の看護職員のうち1年以内に退職した割合は、新卒者が7・8%、既卒者が21・9%。
労働環境の厳しさから離職する看護師は少なくない。
最近は「正規職員になりたいが、夜勤はしたくない」との意識変化もあるという。


 ■報酬2億円増も

 県によると、人口10万人あたりの病床数(12年)は全国16位の1562床で、全国平均より324床多い。
看護師数も13位の1419人で、342人上回る。だが、より多くの診療報酬を得ようと看護師を手厚く配置する動きが、看護師の奪い合いの一因になっているという。

 ある病院の勤務経験者によると、入院患者10人あたり看護師1人という配置を「7対1」に手厚くしたところ、年間の診療報酬は約2億円増えた。看護職員を増やしても約1億円の収入増につながった。いま、こう振り返る。
「人手をかき集めただけで、看護の質が上がったという感じはしなかった。本当に必要な態勢強化だったのか疑問で、医療費の増加につながっただけではないか」

 (高橋福子)


 ◆キーワード

 <診療報酬> 手術や検査など医療機関が行った医療行為ごとに点数(1点10円)が決まっていて、その点数に基づいて保険者が医療機関に支払う仕組み。
看護師を手厚く配置するほど「入院基本料」の点数は高くなる。

 患者7人に対して看護師1人を配置する重症入院患者向けの高度急性期病床に対する点数は、「13対1」や「15対1」の回復期向け病床の1.4~1.7倍。