厚労省、半数の調査放置 診療報酬、不適切請求の疑い 対象、8000医療機関

2014.05.12

厚労省、半数の調査放置 診療報酬、不適切請求の疑い 対象、8000医療機関
2014年5月11日朝日新聞
 

厚生労働省が毎年、診療報酬を不適切に請求した疑いがあるとして調査対象に選んでいる全国約8千の医療機関のうち、実際には半数程度しか調査せず、残りは放置していることが朝日新聞の調べで分かった。

大阪府など調査実施率が1~2割にとどまる府県もある。
年40兆円超の税や保険料などが投入される医療費について、行政のチェックは極めてずさんだ。

 日本の診療報酬制度は複雑で、不正の発見が難しいと言われる。
刑事事件で立件されることもほとんどなく、実態は不透明だ。

 厚労省は全国8カ所の厚生局を通じて(1)不正請求の情報がある(2)前年に指導したが、改善が認められない(3)患者1人あたりの診療報酬請求書が高額で過剰診療の可能性がある――などの基準をもとに不適切な請求をした疑いのある医療機関を抽出。
作業が膨大になるため、疑いが高い順に全医療機関の4%にあたる約8千機関を毎年、調査対象に選んでいる。

 厚労省はこれにより2012年度までの5年間で毎年20億~40億円を不適切な請求として返還させたとしてきたが、調査の詳細は明らかになっていなかった。

 朝日新聞は8厚生局に情報公開請求し、調査対象に選んだ医療機関数と、実際に「個別指導」と呼ばれる調査を実施した数を入手した。集計すると、調査対象数は12年度は8014、11年度は7818、10年度7570。実際に調査したのは12年度は4315(54%)、11年度3972(51%)、10年度4076(54%)だった。

調査した医療機関をどのような基準で選んだかは不明だ。

 都道府県で格差が激しいことも分かった。12年度の実施率は秋田県や四国4県は100%だが、大阪府は15%、兵庫県13%、岡山県16%。11年度岡山県の7%、09年度広島県の4%など1割を切る例もあった。

 厚生局は未調査分の大半を翌年の調査に持ち越しておらず、実態解明はうやむやに終わっている。
厚労省の担当者は「人手が足りない中で目標に近づくよう努力はしている」と言う。

 経済産業省出身で行政改革に詳しい古賀茂明氏は「厚生局と医師会の関係は密接だ。
根本的な問題は人手不足よりも医師に配慮した行政指導にある。医師ではなく国民のために働く自覚を持たなければ厚生局の存在意義はない」と話す。

 (沢伸也、月舘彩子)

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 <厚生局> 厚労省の出先機関。北海道、東北、関東信越、東海北陸、近畿、中国四国、九州の7局と四国支局。2001年の省庁再編で八つの地方医務局と九つの地区麻薬取締官事務所を統合し設置。09年の社会保険庁解体に伴い病院や診療所の指導・監督業務を引き継いだ。覚醒剤の取り締まりや健康保険組合・企業年金の指導も行う。正規職員数は全国で1728人(14年度)、予算は計168億円(同)。