現場発2014 医師不足加速に妙薬なく悲鳴 島根西部2拠点で今春7人退職 診療日減や急患転送 国に対策訴え

2014.05.02

現場発2014 医師不足加速に妙薬なく悲鳴 島根西部2拠点で今春7人退職 診療日減や急患転送 国に対策訴え
2014.05.01 中国新聞


現場発2014

医師不足加速 妙薬なく悲鳴

島根西部 2拠点 今春7人退職

診療日減や急患転送 国に対策訴え


 医師不足が深刻な島根県西部で今春、浜田市と江津市にある二つの基幹病院から常勤医7人が一度に退職した。

既に一部の診療科で、外来診察が減るなど、市民生活にも影響が出ている。

残った医師の負担も増しており、現場からは早急な対策を求める声も上がる。
ただ、全国的な医師不足の中、特効薬はなく、関係者は頭を悩ませている。(森田晃司、川井直哉)

 県西部唯一の3次救急施設でもある国立病院機構浜田医療センター(浜田市)は、常勤医4人が減った。
外科は2人が抜けた穴を埋められず、月曜日の外来診療を取りやめ、火曜から金曜の週4日体制になった。

 医師1人が自身の都合で退職した放射線科では、週2日の外来診療を1人残った吉田弘太郎診療部長(51)が切り盛りする。

同センターは県西部唯一の地域がん診療連携拠点病院でもあり、1日平均80枚の画像を診断する。
島根、鳥取の両大から週2日派遣される非常勤医師と作業をこなす。

連日の夜間待機

 救急の呼び出しに応じる夜間待機がほぼ連日となった吉田部長は「ストレスを感じ、肉体的にも精神的にもきつい」と打ち明ける。

同センターの沖田哲美事務部長は「放射線科医が不在になれば、拠点病院の役割を果たせなくなる」と懸念。島根大医学部(出雲市)にネットで週4日計90枚画像を送り遠隔画像診断を頼み始めたが抜本的な解決にはつながっていない。

 済生会江津総合病院(江津市)も深刻だ。

消化器科などの計3人が退職。麻酔科医はゼロになった。
昨年12月には2人いた外科医の1人が自身の都合で退職。常勤医は2006年の移転拡充後最少の20人となった。

 麻酔医は、島根大から週3日、非常勤医師を派遣してもらい急場をしのぐ。
しかし、緊急手術の必要な急患は、約30キロ離れた浜田医療センターへ転送するしかない状態。
「2次救急施設としての機能を守れるぎりぎりのライン」(堀江裕院長)と綱渡りの状況だ。

 医師不足の背景には、島根県内に医学部が設置されたのが1975年度と遅かったのに加え、04年度に臨床研修制度が導入され、新人医師が2年間の研修先を選択できるようになったことが背景にある。

大学病院に残る医師が減り、大学からの派遣が難しくなっているためだ。

生活費の支援も

 県では新人医師を県内に呼び込むため、医学部卒業後に一定期間、県内病院で勤務すれば返還を免除する奨学金制度の枠を10年度の35人から13年度は45人に拡大。緊急措置として10年度から3年間、研修医向けに同様の免除規定がある貸付金制度を始めた。

1、2年目の研修医が年150万円、3~6年目の研修医に年300万円(2年間)を支給する、事実上の生活費支援にまで乗り出した。

 その上、11年度には県と島根大医学部が協力して「しまね地域医療支援センター」(出雲市)を設立。

県内で勤務しながら専門性も学べる支援体制を整えるなど、新人医師に県内病院に残ってもらおうと必死だ。

 それでも県の奨学金制度などを利用した県内の研修医や医師の合計は14年3月末で74人。
県内に何人残るかは見通せない状況だ。
県医療政策課は「医師の育成には時間がかかる。
制度の効果を待つしかない」と語る。
ただ、県内の医師が増えても、病院選びの拘束力がないため、県西部を選ぶかの問題も残る。
堀江院長は「医師不足解決には、国が過疎地に医師を誘導するような制度を早急につくるしかない」と訴える。

クリック 島根県内の医師充足率

 県の勤務医師実態調査(2013年10月)によると、病院・診療所に勤める医師の充足率は県平均で77.7%。東部の医療圏では県庁のある松江圏が82.7%、島根大医学部付属病院がある出雲圏は83.0%。一方、西部の3医療圏は浜田72.9%、大田59.9%、益田75.0%となっている。

【写真説明】浜田医療センターの吉田部長。常勤の放射線医が1人になり負担が増している