<ここが聞きたい>医師養成と県内定着 秋田大大学院医学系研究科長兼医学部長・伊藤宏さん(61) 地域一体で成長支援

2014.04.28


<ここが聞きたい>医師養成と県内定着 秋田大大学院医学系研究科長兼医学部長・伊藤宏さん(61) 地域一体で成長支援
2014.04.26秋田魁新報社 



 厚生労働省の2012年調査で県内の医師数が、資料の残っている1964年以降、初めて減少した。

県内では医師数の減少の一方で、医師や診療科の地域偏在が年々、顕著になっている。
4月に秋田大大学院医学系研究科長兼医学部長に就任した伊藤宏さんに、県内唯一の医師育成機関のトップとして、地域医療の立て直しや医師の県内定着へどう取り組むかを聞いた。

 

 -最初に取り組みたいことは何か。

 伊藤 まずは卒業前、卒業後を含めた学生、若手医師の教育に力を入れたい。

医学部付属病院長時代には質の高いチーム医療を実践するため医師、看護師、薬剤師などの「多職種連携」を進めてきた。
学部教育でも医学科と保健学科の連携を強化して、今後さらに必要性が増す在宅医療を支える人材を育てたい。

 -医師や診療科の地域偏在をどう解消するか。

 伊藤 特効薬はない。これまでも、医師の県内定着のため1年次から現場を見学させるなど、地域医療の魅力を伝える取り組みを続けている。

手術などの技術を向上させられるシミュレーションセンターの設置をはじめ、卒業後の医師のサポート体制も充実してきた。
今後は学生や若手医師が「この先生についていきたい」と思える指導医の育成に力を入れたい。
偏在が指摘される診療科については、学内で対応を協議したい。

 -どんな学生を育てたいか。

 伊藤 人間性、知識、技術がそろって初めて一人前の医師、医療従事者になれる。
特に重視したいのは人間性。医療は患者との信頼関係で成り立つ。
人間性を教えるのは難しいが、まずは教員自らが日々、人間性を高める努力をし、その姿を学生に見せていくしかない。

 -卒業後、県内の公的医療機関などで、一定期間の勤務が義務付けられた地域枠学生が増えているが。

 伊藤 県が昨年4月、医学部に設置した「あきた医師総合支援センター」を中心に、地域枠学生らが県内で医師としてしっかりと成長していけるよう「地域循環型キャリア形成システム」の構築を進めていく。

県、大学、医師会、患者が一体となって「オール秋田」で地域枠学生を支え、義務年限後も県内に残るよう努力したい。

 -厚労省調査では、本県は35~39歳の医師の減少が目立った。

 伊藤 卒業後2年間、県内で勤務する初期臨床研修医の獲得にターゲットを絞り過ぎた。

一部の病院では研修医や若手医師の給与を上げるなどした。
そのため、現場での責任が重く、後輩の指導という負担もある30代の医師の給与の伸びが抑えられた。

労働環境などの待遇面も悪化した。医師定着を促すためには研修医だけでなく、中堅医師の待遇面の改善が必要になるだろう。(聞き手=喜田良直)

 

 【いとう・ひろし】53年4月1日生まれ。東京都出身。東京医科歯科大医学部卒。同大大学院助教授などを経て、03年秋田大医学部教授。12年7月から医学部付属病院長を務め、今月1日に医学系研究科長兼医学部長に就任。秋田市住。