医療機関と患者との関わり方が大きく変わろうとしている。

2014.04.25

[論点]地域医療の効率化 主治医と病院 連携を 常喜達裕氏(寄稿)
2014.04.24読売新聞



 医療機関と患者との関わり方が大きく変わろうとしている。

 日本では国民皆保険制度のもと、体に異変があれば大病院を受診でき、検査で異常が見つかれば入院して手術を受けられる。

不治の病であれば、手術や治療をした大病院で最期まで治療を続けることも可能だ。

 だが、高齢化に伴い医療費は増え続け、年間40兆円に迫る。

国民皆保険制度を守り、医療の質を保つため、医療機関の受診の仕方や療養の考え方を抜本的に変えなければならない。

 限られた人材や財源の有効活用に必要なのは、大病院や診療所、中小病院が連携を深めることだ。

日本では大病院志向が強いが、今後は一人ひとりが地域で信頼できる「主治医」を持ち、まずはその医師を受診する仕組みを作りたい。

 主治医は日頃から患者の健康管理に努め、どんな病気にかかっても必ず診る。

足りないところは近隣の病院と連携し、なるべく大病院に頼らない「地域完結型医療」を目指すべきだ。

地域だけで十分な治療を行えない場合や命に関わる緊急時は、主治医が大病院の専門の診療科を紹介する。

 こうした仕組みで、大病院には重症患者だけが集まり、「高度な医療を提供する」という本来果たすべき役割に専念できる。患者は回復したら、再び地域の医療機関に戻る。

 今年度の診療報酬改定では、診療所や中小病院の医師が主治医の役割を担う場合、多くの報酬を支払う仕組みを新たに導入した。

主治医は24時間対応し、在宅医療も行う。

一方、大病院は、回復した患者を地域の医療機関に戻す「逆紹介率」を高める取り組みを行う。

 また、高度な医療に対応するために手厚い看護体制を整えたベッドは減らす。

今まではこうしたベッドに軽症患者を受け入れ、高額な医療費がかかっていた。

代わりに、緊急時を脱した患者や在宅医療を受ける患者が入院できる「地域包括ケア病棟」を新たに作る。

 医療機関が連携を深めることで、患者にとっても効率的に最良の医療を受けられることにつながる。

 東京では2年前、「脳卒中地域医療連携パス協会」が設立された。

脳神経外科やリハビリテーション科などを有する約80病院が参加し、治療を終えた患者がスムーズに転院できるよう、ベッドの空き状況を検索でき、患者を受け入れてもらう仕組みを整えた。

 脳卒中の場合、発症直後は一刻も早く治療しなければならない。

体の機能を回復させるためにはリハビリが必要だ。

完全に治らなくても、現状を維持する治療が求められる。

ただ、脳卒中の治療に積極的な医療機関であっても、すべての治療を行えるとは限らない。

 協会を設立したことで、患者に対するリハビリを早期に始められるようになった。
その結果、患者の回復を早め、入院日数も短縮できるようになった。

 ただ、人口構成や医療機関の数などにより、望ましい医療体制は地域ごとに異なる。
医療機関は自治体とも協力し、地域でどのような診療体制が望ましいか、真剣に考える必要がある。


 ◇じょうき・たつひろ 慈恵医大病院患者支援・医療連携センター長。脳神経外科准教授。同大卒。ハーバード大客員研究員などを経て現職。51歳。