追跡やまがた:進む病院の機能分化 医療機関の議論必要 利害衝突危惧する声も

2014.04.22

追跡やまがた:進む病院の機能分化 医療機関の議論必要 利害衝突危惧する声も /山形
2014.04.21 毎日新聞


 人口減少や高齢化が進む中、地域医療のあり方について、県内で議論が深まっている。厚生労働相の諮問機関、中央社会保険医療協議会は今年2月の答申で、症状のひどい患者を集中治療する「急性期病院」の集約化など機能分化を推進する項目を盛り込んだ。

県内の医療体制の大幅な見直しに向けて、関係者は「病院間でさらにつっこんだ議論が必要」と話す。【前田洋平】

 山形大医学部医療政策学講座の推計によると、高度な手術を必要とする患者は緩やかに減少に向かう。

その傾向を表す一つの尺度となる手術・麻酔料の合計金額は、2012年に比べて40年は▽最上地方23・6%減▽庄内地方20・8%減▽置賜地方18%減▽村山地方15・7%減。

 同講座の村上正泰教授は「このままだと、減り続ける急性期の患者を病院間で取り合うことになる」と指摘する。

 急性期医療には大勢の医師や看護師が必要だ。
医師や看護師を現在の急性期病院に求められる人数で配置し続ければ、疲弊することになる。
軽症者を重症患者向けの病床に入院させれば効率は悪く、病院の経営は苦しくなる。

 そこで、人口構造の変化に合わせて、急性期病院を集約化し、代わりに軽傷者や慢性疾患、大病院を退院する患者の受け皿となる病院を増やす試みが県内で進んでいる。

 県内は公立病院が多いことから、急性期病院の集約化は他県に比べ進んでいるという。

庄内地方では08年に日本海総合病院と酒田市立病院が経営統合。
置賜地方では2000年に、長井、南陽、川西の3市町立病院を公立置賜総合病院に再編して急性期病院の集約化を図った。

 村山地方では、山形市内に複数の急性期病院があるのに加え、県立河北病院も急性期機能を担っている。

 このため、県立河北病院の重症患者は少なく、同病院の手術・麻酔料は、県内にある医療費定額の「DPC(入院費包括払い)対象病院」の中では最低だ。

同病院によると、近年は225床の一般病棟が満床になることはないという。

 同病院は今年から「救急医療をはじめ生活習慣病のトータルケアや緩和ケアなどの地域拠点病院を目指す」として、機能の見直しを表明した。

一部の急性期機能は残しつつ、重度な患者は山形市内の県立中央病院などに搬送する。代わりに20床の緩和ケア病棟を新設する。

押野賢也事務局長は「県内にもほとんどない緩和病棟を建設することで、患者のニーズにも応えられ、経営も改善する」と話す。

 ただ、地元に急性期病院を残したいという意向は、医師・患者双方から根強くある。

患者に対しては丁寧な説明が必要だ。県立河北病院では、機能見直しの際、町内の区長会や婦人会に病院関係者が出席し、事情を説明して回ったという。

 村上教授は「医療といえば、重症患者を治療する急性期医療が花形だと思われてきた。その価値観を急に変える難しさはある」と指摘する。

 山形大医学部や関連病院などで作る蔵王協議会が3月28日に開いた総会では、病院の機能分化推進について「不用意に協議を始めれば、各医療機関の利害が露出して、衝突する場面になりかねない」と関係者から危惧する声も上がった。

 村上教授は「本当に現状を変えるには、数人単位で本音をぶつけ合い、生きた議論のできる場が必要」と語る。関連病院が集まる蔵王協議会での議論が重要になるという。