[医療再生]北海道を健康診断(3)存続の危機に「民」の力(連載)=北海道

2014.04.21

[医療再生]北海道を健康診断(3)存続の危機に「民」の力(連載)=北海道
2014.04.18 読売新聞



 ◎第1部

 赤字の地方病院をどう運営していくか。自治体を悩ませる難題を巡り、「公」と「民」の新たな関係を目指す動きがある。

 世界自然遺産の知床に隣接する知床らうす国保診療所(羅臼町)は、人口約5600人の漁業の町で唯一の有床診療所だ。かつては48床の町営病院だったが、2007年に常勤医3人のうちの2人が退職。

入院と24時間の救急外来を休止し、翌年からは19床の診療所に縮小した。

07年度に約2万8000人だった外来患者は11年度には1万4000人に半減。一時は年2億円を超えた医業収支の赤字は大幅に減るはずだったが、患者離れが響き、その後も年1億円を超えた。

 脇紀美夫町長(73)は「このままでは病院も町も立ちゆかなくなる」と考え、釧路市を拠点に8医療機関を展開する社会医療法人「孝仁会」に指定管理者になってほしいと頼み込んだ。

12年7月に新診療所(14床)がスタート。2人目の常勤医が加わり、非常勤医も定期的に派遣され、入院と救急外来を再開した。

最新式の画像診断装置や人工透析装置も新たに導入され、脳神経外科など六つの専門外来も新設した。

手塚誠所長(69)は「医療の質は間違いなく上がった」と語る。

 それまで透析患者は、約70キロ先の中標津町まで往復3時間かけて通院していた。

吹雪で通行止めが続くと命の危険にさらされる日々。
透析治療中の無職男性(74)は「車で数分の近所で透析ができるようになった。ありがたい」と感謝する。

 指定管理前と比べると、年間外来患者数は約5000人増えた。
13年の医業収支の赤字は1億3800万円で、不採算部門の救急外来や入院を再開しても、町営の頃の半分近くに圧縮できた。

     ◇

 道内全体を見ると、公立病院の経営は依然として厳しい。
道市町村課によると、12年度現在、道内87の市町村立病院のうち、医業収支で黒字を出しているのは3病院しかない。

一般会計などからの繰入金を足した経常収支で見ても、なお赤字となる割合は5割以上だ。

不採算でも地域医療を支えるのが公立病院の役割とはいえ、繰入金の総額は05年度の260億円から12年度は367億円に増えた。
総収益の15%に相当する額である。

 総務省は07年12月、公立病院の改革指針をまとめ、経常収支の黒字化を指示した。病床利用率が3年連続で70%未満の病院には病床の削減を促した。

 京極町はこの指針を受けて、12年4月に町営の国保病院を診療所に切り替え、病床数を43から19に減らした。

だが、約1億5000万円の医業収支の赤字はほとんど減らず、12年度の病床利用率は35・7%どまり。訪問診療に力を入れたこともあって、病床利用者数は約1600人も減った。

担当者は「地域のニーズに応えるためには赤字は出る。今後も経営努力は必要だ」とため息をつく。

     ◇

 羅臼町の成功例を、地域に合うようアレンジした例もある。この春、53年ぶりに町立の医療機関を開設した佐呂間町だ。

 町内唯一の入院施設だった民間診療所が、医師の高齢化で閉院することになった。高齢者は地元での入院を求める声が根強かった。町の担当者は羅臼町を視察し、「赤字分を町が負担すると約束すれば、民間の医療機関を呼び込める」と判断。近隣の清里町でクリニックを運営する医療法人「恵尚会」(宮城県)に打診し、指定管理が決まった。

 既存の無床診療所を活用し、医療機器を町が1億2000万円かけて用意し、今月開院した。赤字額を年間約1億円と見込む。町保健福祉課の斉藤裕美課長は「地域に合ったやり方を自分たちで模索するしかない」と語る。