全国医学部長病院長会議が反対声明を発表 成田市への医学部新設は「重大な禍根を残す」

2014.04.18

全国医学部長病院長会議が反対声明を発表

成田市への医学部新設は「重大な禍根を残す」


2014/4/10

加納亜子=日経メディカル 
 
全国医学部長病院長会議会長を務める別所正美氏。

 全国医学部長病院長会議は4月8日に緊急記者会見を開催。
3月28日の国家戦略特別区域諮問会議で医学部新設の検討が進められている現状について、「大変遺憾なことであり、日本の医療・医学教育の将来に重大な禍根を残す結果となることが強く懸念される」と、反対する声明を発表した。

 同声明に対し、日本医学会会長の高久史麿氏、国立大学医学部長会議、日本私立医科大学協会が支持する姿勢を表明している。

今後、文部科学省と厚生労働省に同声明を提出し、国会議員にも働きかける予定だ。

 今回の緊急記者会見は、3月の諮問会議にて「成田市への国際医療福祉大学による医学部新設が具体的な話として急展開する様相を呈している」(私立医科大学協会会長の寺野彰氏)ため、急遽開催されたもの。
「1校だけと言っているものの、これを突破口に医学部が次々にできる懸念もある」(寺野氏)と新設反対を訴えた。

 諮問会議では、国家戦略特区における医学部新設について、(1)東北地方における医学部新設との関係、(2)国家戦略特区の趣旨と求められる医学部像、(3)社会保障制度への影響――の3つの項目に関して検討が行われている。

 この今後の方向性について、全国医学部長病院長会議会長を務める別所正美氏は、「数多くの問題点、矛盾点を内包しており、到底容認できるものではない」と反対の姿勢を強調した。

検討項目に対し「支離滅裂な暴挙」と批判
 

具体的に同声明では、医学部新設の検討項目について、(1)の東北地方における医学部新設との関係は、「東北地方での医学部新設の道筋も全く見えない中で、新設ありきの議論が進められている。
客観的事実を無視しているだけでなく、論理的妥当性を欠いた支離滅裂な暴挙と言わざるを得ない」と断固反対の姿勢を示した。教員を確保するために病院勤務医の引き抜きが進められ、地域医療の連鎖的崩壊を誘発するとの意見だ。

 (2)の国家戦略特区の趣旨と求められる医学部像としては、諮問会議にて医療分野の研究者養成と、海外で活躍する医師養成が挙げられている。

 前者の研究者養成に対しては、各大学が研究医枠やMD-PhDコースなどを設置し、養成に取り組んでいる。

同声明では、「研究者の養成は医学部よりも大学院がその役割を果たすべきである。

また、既存の医学部・医科大学の中から実績があり、人材を含めた教育資源を現有している大学を選定し、相応の予算を投入し、教育体制の整備・充実を図るべき」と見解を示した。

 海外で活躍する医師の育成についても、各国における医療の背景やニーズは異なり、「全てのニーズに対応できる医師を養成しようというのは非現実的」と反論する姿勢を記載している。

 (3)の社会保障制度への影響については、国家戦略特区の趣旨である「既存の医学部とは次元の異なる、際だった特徴を有する取り組み」で養成された医師が、一般臨床医として勤務してしまうと、「社会保障制度に影響を及ぼす」と指摘。

養成された医師が一般臨床医になれるかどうかが示されておらず、「長期間にわたり社会保障制度に影響を及ぼすことは明白」とした。

 全国医学部長病院長会議顧問の森山寛氏は、「今後、国家戦略特区に関する議論を進める中で、医学教育を担う立場から意見を言う機会があれば積極的に応じるつもりだ」と話している。