[追う]空間除菌剤 甘い実験 「不当表示」17社に処分

2014.04.10

[追う]空間除菌剤 甘い実験 「不当表示」17社に処分
2014.04.09 読売新聞



 ◆人の出入り考慮せず 密閉時効果だけ確認

 生活空間での除菌・消臭をうたった製品を販売する17社が3月、消費者庁から景品表示法違反(優良誤認)で行政処分を受けた。広告表示の合理的な根拠が示されなかったのが理由だ。インフルエンザの流行期には品薄になるほどの人気商品だが、メーカー側はどのように効果を確認していたのか。(崎田雅広)

 ■「データ不足」

 消費者庁から不当表示と指摘されたのは、いずれも二酸化塩素を用いた製品。厚生労働省によると、二酸化塩素は殺菌作用があり、プールの消毒にも使用される。だが、医薬品や医薬部外品ではないため、ウイルスを死滅させるなど感染症を防ぐ効果をうたうことはできず、製薬会社などは「除菌できる」との表示で雑貨として販売してきた。

 処分対象のうち、売り上げが最も多いという、置き型商品「クレベリンゲル」を販売する大幸薬品(大阪)は、除菌・消臭の効果を実証するため、2012年度までの5年間に9億円以上の研究開発費を投入した。

 自然換気されるマンション一室に製品を設置し、室内に二酸化塩素成分が均一に広がることを確認。居室と同程度の密閉空間では、製品と同じ濃度の二酸化塩素を使い、空気中に浮遊させた菌を60分で99%除去する実験も成功したという。

 ただ、これらの実験では、人の出入りや空気の流れをほとんど考慮していなかったと判断された。同社は「データ不足という消費者庁の指摘は受け止める。今後、様々な条件での実験を重ね、分かりやすい表示をする」と説明。指摘の4日後、製品の有効性を主張するかのような広告を出し、消費者庁が問題視した件については「会社の取り組みをお伝えしたかっただけ」と釈明する。

 首から下げる除菌剤「ウイルオフバリア」などを販売する大木製薬(東京)も、密閉空間での実験が主だった。同社は「消費者庁が想定する生活空間と実験との設定に隔たりがあり、表記が行き過ぎていた。真摯(しんし)に受け止め、さらなる研究を進めたい」とコメントした。

 両社は独自に実証していたが、17社の中には自社で検証していない企業もあった。

 一方、17社とは別に、大幸薬品との共同開発で二酸化塩素を使った「車両用クレベリン」を販売する自動車部品メーカーのデンソーは3月31日、「製品の除菌効果は実証されている」との異例のお知らせをホームページに掲載。空間除菌グッズとの違いを強調した格好だ。

 ■「消費者裏切った」

 除菌グッズの効果は以前から疑問視されてきた。

 業界関係者によると、生活除菌グッズが市場に出回り始めたのは、新型インフルエンザが流行した09年頃。この2~3年で急速に普及し、病院関係者や子どもを持つ主婦などを中心に売れ、現在の年間市場規模は100億円を超えるという。

 だが、国民生活センターには効果に疑問を持つ消費者からの問い合わせが相次ぎ、同センターは10年、二酸化塩素を活用した除菌グッズについて「どの程度の除菌効果があるかわからない」と消費者に注意喚起。事業者に商品の有効性と安全性の検証を求めた。日本薬剤師会は今年に入って、「使用にあたってはより慎重さが求められる」との説明をホームページに載せた。

 室内空気汚染やその対策を研究する千葉工業大(千葉県習志野市)の小峯裕己・工学部教授は「(業界団体の)日本二酸化塩素工業会の指針に照らすと、今の製品の放散量では、生活空間で効果が得られる二酸化塩素の濃度には達しないはず。メーカー側も効果が出る濃度を明確に示しておらず、あいまいな表示で消費者の信頼を裏切った責任は大きい」と指摘する。

 「生活空間での除菌効果が不明なら、消費者がだまされていたことになる」と消費者庁幹部。日本二酸化塩素工業会は「現段階では限定空間でしか効果を実証できていないのは事実で、データを重ねて信頼を回復するしかない」と話している。