医局の窮状 大学か地域か板挟み

2014.04.05

びんごの医療 第2部 崩れるバランス <1> 医局の窮状 大学か地域か板挟み
2014.04.04中国新聞




医局の窮状

大学か地域か板挟み

 鳥取大医学部付属病院(米子市)の女性診療科教授室。

「医師を送りたくても医局も人材不足。苦渋の決断だった」。主任診療科長の原田省(たすく)教授(56)は、三原赤十字病院(三原市)への補充を断念した理由を説明した。

 約20年前から三原赤十字病院産婦人科に常勤医を派遣していた。
2013年3月末に派遣していた3人のうち1人が退職した際、補充の要請を断った。
同病院は医師を手当てできず、半年後の9月、分娩(ぶんべん)を中止した。

入局ゼロの年も

 「臨床研修制度の導入後、入局者が激減した」と原田教授。
04年度の導入前の5年間、毎年平均4人程度の入局者がいた。

ここ10年間は年1、2人。ゼロもあった。病院に派遣中を含め医局所属者は約50人。最も多い時より10人以上減った。

 制度開始前は、医学部卒業生は大学病院の診療科ごとの医局に入るのが一般的だった。
科長の教授たちの指示で地域の「関連病院」に派遣され経験を積んだ。この流れは医師を安定的に供給し、地域医療を支えるシステムにもなっていた。

 しかし卒業生が臨床研修の場を自由に選べることになり、大都市志向が強まった。
症例数が多く、生活環境が整っているからとされる。

「医局も医師確保に必死」と原田教授。
辞められないよう若手の意思を尊重するなど力関係も変わってきた。「教授が強権的に派遣先を決める時代ではない」と強調する。 

備後地域の基幹病院が主に医師の派遣を受けているのは広島大と岡山大だ。

広島県は人口当たりの医学部定員が全国でも最低水準。東部には岡山大に頼ってきた病院が多い。

 病院は、開業や出産などで医師が退職した場合、補充などを医局の教授たちに求める。

「関連病院からの要請は絶えない」。広島大の窓口役となる副学長の平川勝洋教授(61)は明かす。
約20ある医局と調整するが「どの医局からもいい返事がもらえない」という。

選択と集中必要

 平川教授が科長の耳鼻咽喉科の医局も臨床研修制度導入後、医師は6割程度の約20人に減少。
12年から尾道市民病院(尾道市)への常勤医派遣ができなくなった。
平川教授は「大学も大学病院の診療や研究、学生の教育などに人員が必要。地域に医師がいなくなることは深刻な問題と理解しているが板挟みの状況だ」と訴える。

 一方、岡山大のある教授は「限りある人材を効率的に生かすことが重要だ」と強調。
医師を派遣している中四国地方の病院の中で、基幹病院を中心に派遣の選択と集中を進める必要があると言う。

    ◇

 地域医療の前線が縮む大きな要因となっている医師不足。連載第2部は、その背景と課題を追う。

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 医局 大学病院の診療科ごとに、教授をトップとし、研修医から教官まで所属する医師の任意組織。

 臨床研修制度 免許取得後の新人医師に病院で2年間の研修を義務付ける制度で、2004年度にスタートした。さまざまな診療科に対応できる基礎的な能力を養うことが目的。現在は必修3科目、選択2科目を研修する。新卒医師は、かつては出身大学やその関連病院で研修を受けるのが慣例化していたが、制度導入後は研修先を自由に選ぶようになった。