侵襲性インフルエンザ菌感染で死産、流産が増加

2014.04.02

JAMA誌から

侵襲性インフルエンザ菌感染で死産、流産が増加

妊婦の感染リスクは非妊婦の約13倍、英国でのサーベイランスの解析結果


2014/4/2

大西淳子=医学ジャーナリスト 
 

 
 

 
 

 


生殖年齢の女性の侵襲性インフルエンザ菌(H. influenza)感染症について疫学的に調べ、妊婦が感染した場合の妊娠転帰への影響を検討した結果、妊婦の感染リスクは非常に高いこと、特に無莢膜型インフルエンザ菌の感染が多く、感染は流産や死産、早産に関係することが示された。

英イングランド公衆衛生局のSarah Collins氏らが、JAMA誌2014年3月19日号に報告した。

 

インフルエンザ菌の中で最も毒性が強いのは莢膜型インフルエンザ菌の血清型b型(Hib)で、ワクチン接種が始まるまでは、侵襲性インフルエンザ菌感染症患者の約8割をHib感染症が占めていた。

しかし、英国では1992年にワクチン接種が始まってからHib感染症は減少した。

その一方で、無莢膜型インフルエンザ菌の感染例が多く見られるようになった。

無莢膜型インフルエンザ菌はしばしば非侵襲的な上気道感染症を引き起こすが、特に高齢者において、侵襲的な疾患(肺炎、敗血症、髄膜炎など)の原因になることが知られている。

 近年行われた複数の研究で、新生児、特に生後1週間の小児における侵襲性無莢膜型インフルエンザ菌感染症の増加が指摘されている。

これは妊婦が侵襲性無夾膜型インフルエンザ菌に感染していた可能性を示唆するものだ。

イングランド公衆衛生局は、侵襲性のインフルエンザ菌感染症と妊娠の関係を明らかにするために、イングランドとウェールズで侵襲性インフルエンザ菌感染症に関する国家的な強化サーベイランスを09~12年に実施した。今回著者らは、このサーべイランスで得た情報を利用して、生殖年齢の女性(15~44歳)における侵襲性インフルエンザ菌感染症の疫学と臨床的特徴、妊娠転帰について分析した。発症例については、患者を診察した一般開業医に質問票を送付し、発症から約3カ月後までの臨床情報を収集した。

 主要評価項目は、細菌培養により確定された侵襲性インフルエンザ菌感染症とし、副次的評価項目は妊娠転帰に設定した。

 4521万5800人年の追跡で、生殖年齢の女性における侵襲性インフルエンザ菌感染症確定例のうち、血清型が同定できた患者は計171人だった。

うち144人(84.2%、95%信頼区間77.9-89.3)が無莢膜型、11人(6.4%、3.3-11.2)がHib、16人(9.4%、5.4-14.7)は他の血清型の莢膜型インフルエンザ菌に感染していた。

 全体では171人中75人(43.9%、36.3-51.6)が感染時に妊娠しており、72人(96.0%、88.8-99.2)が無夾膜型のインフルエンザ菌に感染していた。それらの女性の多くがそれまでは健康だった。

 侵襲性インフルエンザ菌感染症の罹患率は、非妊婦では10万人年当たり0.22(0.18-0.27)、妊婦では10万人年当たり3.01(2.37-3.77)で、非妊婦に対する妊婦のオッズ比は13.40(9.77-18.31、P<0.001)と非常に高かった。侵襲性の無莢膜型インフルエンザ菌感染症の罹患率は、非妊婦が10万人当たり0.17(0.13-0.21)、妊婦は10万人当たり2.98(2.26-3.64)で、非妊婦に対する妊婦のオッズ比は17.15(12.20-24.11、P<0.001)だった。

 妊婦75人(胎児77人)のうちの無莢膜型インフルエンザ菌感染者72人(胎児74人)の転帰を調べたところ、43人(58.1%、46.1-69.5)が流産しており、2人(2.7%、0.3-9.4)は死産していた。29人(39.2%、36.3-51.6)は出生児を得ていたが、うち11人(37.9%、20.7-57.7)は37週未満の早産だった。

莢膜型インフルエンザ菌に感染していた3人の妊婦では、1人が流産、1人が死産で、1人は出生児を得ていた。

 感染の時期と妊娠転帰の関係を検討したところ、47人が妊娠開始から24週までに無莢膜型インフルエンザ菌に感染していた。
感染は、胎児喪失(47人中44人、93.6%、82.5-98.7)と極早産(47人中3人、6.4%、1.3-17.5)に関係していた。妊娠12週に発症した妊婦2人は回復し出生児を得たが、それぞれ25週と28週での分娩だった。

妊娠23週で発症した妊婦はそのまま早産となり、児は極早産の合併症で3日目に死亡した。
2人の多胎妊娠例のうちの1人は22週に発症し流産した。28週で発症した妊婦は胎児のうちの1人を出産したが、もう1人は死産だった。

 妊娠24週以降の無莢膜型インフルエンザ菌感染者は28人で、感染は早産(28人中8人、28.6%、13.2-48.7)と死産(28人中2人、7.1%、0.9-23.5)に関係していた。

 出生児30人のうち、出生時の健康状態が記録されていたのは26人(86.7%、69.3-96.2)で、うち21人(80.8%、60.6-93.4)が呼吸窮迫または敗血症、もしくはこれら両方を呈していた。

 全体では胎児77人中48人(62.3%、50.6-73.1)が胎内または出生後に死亡した。侵襲性インフルエンザ菌感染妊婦における妊娠喪失は妊婦100人当たり61.0(49.2-72.0)、無莢膜型インフルエンザ感染妊婦では100人当たり60.8(44.4-81.0)だった。インフルエンザ菌に感染しなかった妊婦に比べて感染妊婦の妊娠喪失の発生率比は2.91(2.13-3.88)、無莢膜型インフルエンザ菌感染による妊娠喪失の発生率比は2.90(2.11-3.89)だった。

 女性を対象とする分析の結果、妊娠は侵襲性インフルエンザ菌感染リスクを有意に高めること、無莢膜型インフルエンザ菌の感染が多く、感染により妊娠転帰が不良になることが示された。

 原題は「Risk of Invasive Haemophilus influenzae Infection During Pregnancy and Association With Adverse Fetal Outcomes」、概要は、JAMA誌のWebサイトで閲覧できる