震災復興・大学編 超有識者場外ヒアリングシリーズ2 ファイナンス

2014.04.14

震災復興・大学編
超有識者場外ヒアリングシリーズ2 ファイナンス 2013.8



財務省開発政策課長 神田 眞人&

里見 進 東北大学総長


里見 進 
東北大学総長 東北大学医学部医学科卒業、ハーバード大学研究員、東北大学医学部第二外科講師、東北大学医学部第二外科教授、東北大学病院長、東北大学副学長などを経て、2012年4月より現職。2013年6月より国立大学協会副会長


神田 眞人 
開発政策課長。1965年生まれ。1987年東京大学法学部卒業、
十和田税務務署長、主計局給与共済課長、主計官(文部科学担当の後、司法・警察、財務、経済産業、環境担当)
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(医学部問題)
▶神田 総長は病院長も務めておられたので、医
学部定員・新設問題についてご教示ください。

センシティヴな話なので、一般論で結構です。
医療現場の疲弊、過疎地域医療の問題等から、医師を
増やすべき、ひいては医学部を新設すべきという主張が存在します。

他方で、単に増やすだけでは、地域偏在、診療科偏在の問題は解決せず、また、医師育成には長い年月がかかるところ、人口減少等を考えると将来の医師過剰を招く、更には、医学部を新設すると教員ニーズから却って現場の医師不足を加速化する、といった反論も強いところ
です。

やはり新設には問題も多く、需給を見極めた既設医学部定員のファインチューニングや地域枠の拡充といったことが現実的のようにも思われますが、総長は、震災のご経験も踏まえ、どのようにお考えでしょうか。


▶里見 確かに今でも地域に医師が不足しているのは間違いないことです。特に被災地は医療スタッフがいなくなるのではないかという危惧があるものですから、医学部新設というのは感情的にフィットしやすいものです。

ただ人材の養成は、長期的なスパンで考えるべきです。20年前に医学部を新設すべきと言われていたら、我々も諸手をあげて賛成しました。

日本の医師の養成は、昭和50年代の医療費亡国論を受けて、医学部新設は認めないことになり、むしろ医師数を減らすことを良しとする方針が進められ、現在の医師不足を招きました。

その反省から平成19年に増やす方針に変えましたが急速に増やしすぎており、平成25年度でいえば一学年で1400人も入学定員が増えています。

その状態がこれから数年は続く予定です。
医師養成数が1400人も増える一方で、日本の人口は
減り続けていきます。
 
そういうことを考えると、もっとしっかりと分
析して新設することの是非を判断しなければなり
ません。

1400人の卒業生が一定の期間は地域に留まって医療をすることを何らかの形で義務付けられれば、かなりのことができるはずです。

今現在に大きい石を投じて頂き、少なからずの具体的な
前進にも帰結しました。
秋入学は延期となりましたが、学界のみならず日本を覚醒させる大きな意義があったと思います。

国際化には様々な道があり、また、そのための意識改革や制度等の整備が必要であり、濱田総長や他の学長さん、理事者達の国際化に向けた闘いは容易ではないものの、高く評価されるべき営みと考えております。


▶里見 秋入学は完成形だと思うのです。
秋入学をやるため、つまり国際標準の大学にするために
は、一体何を準備していかねばならないかという
ことが大切です。

学生や研究者が自由に行き来できる大学にする準備として、日本の学生を海外に送り出すための仕組みや海外からの留学生を受け入れる体制をきちんと整備する必要があります。

中途半端な体制で留学生を受け入れると、日本を嫌いになって帰国することになりかねません。留学した学生が不利にならないように、企業にもいろいろと変えてもらうべきことがあります。

中学や高校の在り方も変えることになるのかもしれま
せん。そういったことが全部整備されて初めて秋入学という完成形ができるのだろうと思っています。

東京大学からは今後5年ほどの年次計画、整備の手順が示されるものと思っていましたので、延期になったことは残念です。
 

大学の改革に話を戻しますと、大学ではいろいろな競争的資金を獲得して改革を推進していこうと思っていますが、競争的資金の支援の期間は長くても5年であり、数年かけてやっと作り上げた仕組みを止めざるを得なくなることがままあります。

大学の運営交付金は年々減っていますので、大学の財政では作った仕組みを維持できなくなります。
したがって、改革はその時点で振出しへ戻ってしまいます。

企業の方からは大学のガバナンスを強化するようにとの指摘をよく受けますが、学長が全学のために使える裁量経費を増やすことへ協力していただければよいのですが。


▶神田 少なからずの大学は国際競争に勝ち抜くために正しい方向の施策を打ち出し、学内で、学部間、講座間、世代間の資源再配分の壁にぶつかの医師不足だけで医学部新設を論ずるのは非常に短絡的な発想だと思います