クローズアップ茨城)新中核病院計画、曲折の果て 立案から4年半、方針変更/茨城県

2014.03.30

クローズアップ茨城)新中核病院計画、曲折の果て 立案から4年半、方針変更/茨城県
2014.03.29 朝日新聞


 筑西、桜川両市で進めるはずだった新中核病院計画は、筑西市が単独で担うことになった。

全国でも低い水準にある筑西・桜川地域の医療環境。
県は地域の急性期医療態勢の再構築をめざして新中核病院計画を立てた。立案から約4年半。
なぜ、計画は変更せざるを得なかったのか。


 筑西・桜川地域の心疾患・脳血管疾患による死亡率は全国平均を大きく上回る。
筑西市民病院と県西総合病院(桜川市)の2公立病院が、医師不足などで急性期医療機能を事実上担えていないことなどが背景にある。

 県は医療態勢の再構築を「喫緊の課題」として2009年11月に地域医療再生計画を立てた。
2公立病院を再編統合し新中核病院を整備する計画だ。東日本大震災を受けて県はさらに計画を強化。
病床数を200から300に増やし、地域の災害拠点病院とともに専門性の高い「3次救急医療機関」をめざした。国の地域医療再生臨時特例交付金25億円を活用することが可能になった。

 ところが今月9日、須藤茂・筑西、大塚秀喜・桜川両市長が新中核病院計画の方針を大きく変える内容で合意した。
新中核病院の総事業費は約75億円。最終合意の影響で、使える交付金が12億円も減ったため、財源捻出が筑西市に重くのしかかる。
計画は50人以上の常勤医を想定している。医師確保は市にとって最大の関門だ。

 県西総合病院はどうか。
両市でつくる組合が運営しているが、今後、筑西市が運営から離脱し、「桜川市立」の病院となる。
老朽化が進む病院の施設には耐震性の低い建物もあり、早急な再整備が不可欠とされる。
建て替えとなると数十億円の費用が見込まれる。
病院によると、4月から常勤医が14人に減る。
中でも常勤内科医の不足は深刻だ。
医師確保を含め、緊急課題は市の責任で解決しなければならない。

 9日の最終合意後、両市長が記者会見をした。須藤市長は、筑西・桜川地域の医療水準の低さなどを踏まえ「新中核病院整備はどうしても2市で進めたかった」、大塚市長は「桜川の医療環境を考えると県西総合病院を残さざるを得なかった」とそれぞれ語った。


 ●「全会一致」決議、交渉に響く

 なぜ、方針を変えざるをえなかったのか。

 昨年12月、両市の市長や議長、真壁医師会幹部、再編される2公立病院長、住民代表らをメンバーに「代表者会議」が開かれた。

新中核病院に関する基本的事項を決めて合意するためだ。
それまで両市長は、2公立病院を再編統合し、300床規模で、運営形態は「公設民営」にする方針で一致していた。

 会議の目的は、最大懸案の新中核病院の建設場所の決定にあった。
当初案では、場所は筑西市の竹島地区だったが、桜川市議会の猛反対で計画自体が頓挫した。
筑西市が新たに提案したのは市内の「養蚕地区」。

3~4キロで桜川市に接する。
桜川市議会は県西総合病院存続を条件に養蚕地区を了承、代表者会議でも合意された。
懸案の建設場所の決定で、計画は実現に向け大きく踏み出した。

 新中核病院計画は、国の交付金25億円を用いて進めるため制約がある。

2公立病院を新中核病院に再編統合することから、1病院でも病床数20以上の「病院」として残す場合、交付金の性質上、13億円しか活用できなくなる。

代表者会議では県西総合病院存続を強く求める桜川市側の意向を考慮した。
再編後の県西総合病院のあり方は、大学病院関係者らが参加して新中核病院の基本構想・基本計画をまとめる「建設推進会議」での協議にゆだねることで合意した。12月13日、両市長が合意書に調印。国は交付金25億円の活用期限延長を承認した。

 その後動きは停滞する。桜川市内には医療機関が少ないため、市議会は1月24日の臨時会で、県西総合病院は地域医療を担っているなどとして存続を求める決議を全会一致で可決。この「全会一致」が大塚市長に大きくのしかかった。

 交付金を活用するには、今年度中に建設推進会議を開かなければならない。

筑西市は2月初め、「合意を遵守(じゅんしゅ)し」早急な会議の設置を求める文書を桜川市に送った。

一方、桜川市は、議会の「全会一致決議」などを理由に、県西総合病院存続の前提がなければ建設推進会議に参加できない旨を文書で回答。
「新中核病院の建設運営は筑西市が、県西総合病院の再建運営は桜川市が行う」などの提案もした。

 こうした対応に、筑西市議会も「信義違反」と反発を強めた。
須藤市長は2月21日、桜川市の提案を受ける形で、県西総合病院の運営からの離脱を発表した。
筑西市単独での新中核病院整備の選択でもあった。(吉江宣幸)


 ◆キーワード

 <新中核病院計画をめぐる最終合意の主な内容> 当初、筑西、桜川両市で実現をめざした新中核病院建設は、筑西市が単独で進める。

再編対象の2公立病院のうち、筑西市民病院は当初の計画通り病床のない診療所となるが、県西総合病院(桜川市)は172床の病院として残す。
病院の整備、運営は桜川市が担う。活用を見込んでいた国の地域医療再生臨時特例交付金25億円は、13億円しか使えなくなったが、すべて新中核病院整備にあてる。