診療報酬改定で急性期病院の救急縮小が心配

2014.03.26

.診療報酬改定で急性期病院の救急縮小が心配


2014/3/26 日経メディカル
 

厚生労働省によって2年ごとに診療報酬改定が行われ、多くの医療機関はその都度対応を迫られることになります。

診療報酬の改定には、国側が求める形に医療機関を誘導する狙いもあり、医療現場から見てマイナスの影響が生じることも少なくありません。

今回の改定では、救急医療をはじめとする急性期医療の提供体制に大きな影響が出ることが予想されます。

重症患者の多いICUを評価する一方で…
 集中治療室(ICU)の施設基準を満たし、救急患者を受け入れている病院を評価した点数として、「特定集中治療室管理料」が設けられており、改定前の点数は入院7日以内で9211点、8日以上14日以内で7711点となっています。

 今回の改定では、「より充実した体制」の施設を評価するために、この特定集中治療室管理料に上位ランクの基準が設けられました。

具体的には、特定集中治療の経験5年以上の専任医師2人以上を配置し、さらに専任の臨床工学技士の「常時院内勤務」体制を取る病院を評価した点数として、入院7日以内で1万3650点、8日以上14日以内で1万2126点の上位基準が設定されています。

従来の「9211点、7111点」の点数設定も残り、こちらは下位ランクという位置づけになりました(消費税分を含めるとそれぞれ9361点、7837点)。

 ここで注目したいのが、上記のどちらのランクにも求められる患者の重症度、医療・看護必要度に関する要件の変更です。

改定前にも重症度要件が設けられており、「A項目3点以上またはB項目3点以上の患者が9割以上」とされていました。

それが、改定後は、上位ランクで「A項目3点以上かつB項目3点以上の患者が9割以上」と厳格化。さらに下位ランクでも、「A項目3点以上かつB項目3点以上の患者が8割以上」とされました。

 中央社会保険医療協議会の資料では、「A項目3点以上またはB項目3点以上の患者が9割以上」の要件が「A項目3点以上かつB項目3点以上の患者が9割以上」に変更されると、クリアできるのは25%程度の病院にとどまります。
「8割以上」の下位ランクでも、満たせるのは4割ほどしかありません。

 厚生労働省は、激変緩和措置として「移行期間」を認めており、今改定で下位ランクの方の要件を満たせなくなっても、1年間は引き続き算定できます。

しかし、経過措置終了後になお要件を満たせない場合、コスト面からICUの体制を維持するのが困難と判断し、救急を縮小する病院が出てくる可能性もあります。そうなると、地域の当番体制や救急車の受け入れにも変化が出てくるかもしれません。

 大学病院などの高度医療機関の集中治療体制を診療報酬で評価することは確かに大切ですが、今回の算定要件の厳格化は、治療現場への影響が大きくなることが懸念されます。

二次救急医療機関の急性期ベッドが減ることで、受け皿を失った救急車が三次救急医療機関を目指し、二次から三次救急への患者紹介の流れがスムーズに行かなくなるのではないかと気になります


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二次救急医療機関にとっては、「救急医療管理加算」の算定要件厳格化もマイナス要因。

改定前は、対象となる患者として「吐血、喀血または重篤な脱水で全身状態不良の状態」「緊急手術を必要とする状態」などの9つの状態に加え、「その他準ずるような重篤な状態」が規定されていました。

しかし今回の改定では、「その他」については「救急医療管理加算2」として800点から400点に減算され、患者の状態について年に1度、報告することも義務づけられました。

医療需要のピークを前にベッドを減らして大丈夫?
 
さらに今回の改定では、看護配置7対1一般病棟でも重症度の基準が厳格化され、評価項目から喀痰吸引や血圧測定が省かれました。
基準を満たす患者を15%以上受け入れることが求められており、「重症患者が多くない病院では7対1看護基準までは必要ないから、もっと低い看護基準にしなさい」というメッセージと受け取れます。

 他にも7対1一般病棟については、「在宅復帰率75%以上」という要件が設定されました。

例えば、独居で寝たきりの方の緊急入院を多く受け入れていると、在宅復帰させることが難しく、要件を満たせなくなることも考えられます。

「急性期を続けるのならしっかり重症患者を診て、在宅復帰を目指しなさい」というメッセージは分かるのですが、密度の高い医療を行う急性期病床を減らす病院が増えると、地域医療の現場が「混乱」する可能性があります。病院のスタッフにとっても、在院日数の短縮が進み、さらに在宅復帰を求められるとなると、退院支援のための業務負荷が一層重くなることが予想されます。

 国は医療計画の5疾患5事業に救急医療を含めて、供給体制の拡充を図ってきましたが、今改定を見ていると救急医療機関を選別するフェーズに入ったことを感じます。

 既に団塊の世代は65歳以上になり、これから大都市部を中心にますます脳卒中、心筋梗塞を含め救急医療のニーズが増えるため、受け入れ先となる救急医療機関の果たす役割は大切です。

各病院のICUの入室基準について見直しの余地はあったのかもしれませんが、医療需要のピークを前に急性期病床を全体的に減らすことが正しいのか、今後の推移を注意深く見ていく必要があると思います。

 なお、日本集中治療医学会は今年1月、集中治療の客観的評価、参加施設の治療成績向上、適正なリソース配分などを目的に「ICU入室患者登録システム(JIPAD)」を始動させ、集中治療についてデータ収集を開始しました。

目的の中には「適正な診療報酬への提言」も含まれています。救急医療の充実のためには、地域の救急病院がしっかりデータ収集・解析を行い、それを基に政策提言していくことも必要ではないかと考えます。