医学部も、有名私大も、返済不要!「もらえる奨学金」をねらえ!

2014.03.22

医学部も、有名私大も、返済不要!「もらえる奨学金」をねらえ!
2014.05.01 プレジデント

 家計にあまり余裕はないが、わが子を希望の大学に行かせてやりたい--。そんな家庭の強い味方が、大学や各種団体が提供する奨学金だ。

 日本ではこれまで、日本学生支援機構(旧・日本育英会)の奨学金に代表されるように、返済義務のある貸与型の奨学金が主流だった。ところが最近、各大学が独自に学内奨学金を設けるケースが増加。しかもそのかなりの部分を、返済の必要のない「もらえる奨学金」、つまり給付型奨学金が占めるようになった。

「大学進学率が50%を超え、大卒であっても給料の高い仕事につける保証がまったくない昨今では、貸与型奨学金はもはや時代遅れの制度といえます」と、大学ジャーナリストの石渡嶺司氏は言う。「過去にも給付型奨学金は一部でありましたが、対象人数が少なかったり、世帯年収の制限が厳しい場合がほとんどでした。しかし最近の給付型奨学金は、給付対象となる学生数が多く、収入制限も比較的ゆるい。大学側が求める人材を集めるためのツールとしての性格が強くなってきています」

 その先駆けの一つは、2009年に早稲田大学が導入した「めざせ!都の西北奨学金」だろう。首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)以外の高校出身者約1200人を対象に、年額40万円を4年間にわたって給付するこの奨学金は「受験生の地元志向が強まる中、日本中から優秀な人材を集めたいという同大学の意向を反映したものといえます」と、奨学金アドバイザーの久米忠史氏は説明する。

 その後ほかの大学も、各種の給付型奨学金を次々と導入。また自治体や企業も、それぞれの意図や戦略をもって給付型奨学金を設けている。「制度がある以上、もらえるのならもらったほうがもちろん得です」と石渡氏は言う。今どんな給付型奨学金が実際にあるのか、いくつか例を見てみよう。

 高額の学費負担が障害になる進路の筆頭は、私立医大受験だ。6年間トータルの授業料は数千万円に達し、設備費等それ以外の支払額もかさみがちで、一般的なサラリーマン家庭ではとても手が出ない。そこで注目したいのが、地域医療の担い手を確保するため、一部の自治体が設けている私立医大受験生向けの奨学金だ。

 たとえば東京都の「地域医療医師奨学金」は、首都圏の三つの私立医大への進学者から各校5~10人に、6年分の学費全額(約2100万~3700万円)と、月10万円の生活費を貸与。卒業後2年以内に医師国家試験に合格すること、小児医療・周産期医療・救急医療・へき地医療のいずれかの領域で(どれも医師不足が深刻な分野だ)、都が指定する医療機関で9年以上(初期臨床研修期間を含む)勤務すること、などの条件を満たせば、奨学金の返還が免除される。対象となるのは都内在住か、都内の高校を卒業または卒業見込みの受験生で、各大学の東京都地域枠入試に合格する必要がある。

 新潟県や千葉県、神奈川県なども、出身地や出身高校を問わず、一部私立医大の各地域枠試験の合格者に対し、学費全額または一部に相当する奨学金を貸与する制度を設けている。東京都の奨学金と同様、こちらも卒業後各県の地域医療に9年間貢献することで、奨学金の返還が全額免除される。

 金額としてはこれより小さくなるが、国公立大学医学部の学生向けに、学費相当の奨学金を設定している自治体も多い。お金のかからない医大としては自治医科大学や防衛医科大学校が有名だが、卒業後の義務を果たすことによる返還免除も含め、同様のシステムを提供する奨学金が実はたくさんあるというわけだ。もし子供が医学の道を志望しているなら、知っていても損ではない。

 授業料だけでなく、書籍代や衣食住費などの関連経費も重荷という向きには、一部の国公立大学が設けている「授業料プラスアルファ」の給付型奨学金がおすすめだ。

 たとえば、山形大学の「山澤進奨学金」。卒業後4年間、山形県内で働くことを条件に、入学料・授業料を全額免除したうえで、月額5万円の援助が4年間(医学部医学科の学生は6年間)にわたって受けられる。広島大学の「フェニックス奨学制度」は、入学料と在学中の授業料を免除したうえ、月額10万円を給付。世帯収入の制限がややきつめだが、卒業後の県内での就労義務はない。

「国公立大学には以前から、家計の苦しい学生向けの学費減免制度があり、わざわざ別に奨学金制度を設ける必要はないという考え方が主流でした」と、石渡氏は言う。「その後、国立大学が独立行政法人化するなかで、優秀な学生を集めるために独自の奨学金制度を設けるところが出てきつつある状況です」

 国公立大の給付型奨学金の中でもユニークなのが、電気通信大学の「UEC修学支援奨学金」だ。入学後、同大学の広報活動等にボランティアで参加することを条件に、卒業までの4年間の授業料全額が免除されるほか、入学時に50万円が一括で支給される。「オープンキャンパスで在学生代表として大学をPRするような、学校の中核となる学生を育てるための制度でしょう」(石渡氏)

 また、地域のトップ公立校から国公立大学をめざす受験生には、JT(日本たばこ産業)が2013年に創設したばかりの「JT国内大学奨学金」制度がある。

 同社指定の国公立大学の入学金と授業料相当額のほか、受験費用として30万円、毎月支払われる奨学金(自宅生5万円、自宅外生10万~12万円)も支給される充実した内容。指定公立進学校(全国128校)の在学生であること、各校1人ずつの学校推薦を得られることなどの条件にあてはまれば、ぜひ出願してみたい奨学金だ(申し込みは在籍する高校経由で行う)。

 次に見てみたいのが、支給額が授業料全額には及ばないものの、給付対象となる学生数が多い大型の奨学金だ。

 早稲田大学には冒頭で紹介した「めざせ!都の西北奨学金」以外にも、学部で約1070人、大学院で約290人もの採用が予定されている「創立125周年記念奨学金」がある。これは各学部や大学院が、それぞれ独自の方針に基づき運用するもので、学部によって異なるが年額30万~60万円を支給。首都圏出身者も給付対象だ。

「早稲田大学の学内奨学金は8割が給付型で、専門の奨学金課があったり、ウェブサイトでの情報提供が充実しているなど、奨学金事業に非常に力を入れている印象があります」(久米氏)。学生にとっては複数給付も含め、受給のチャンスが多い大学といえるだろう。

 明治大学の「給費奨学金」(学部生対象)も、支給対象が約1400人という大型の給付型奨学金だ。やはり各学部ごとに運用され、文系は年額20万円、理系は同30万円、首都圏外からの学生にはこれに加えてさらに10万円が上乗せされる。OBや各種法人などからの支援による「未来サポーター給費奨学生」制度では、授業料の半額に相当する奨学金が支給される。

 このほか立命館大学、東海大学なども、支給対象が数百人規模の給付型奨学金制度を設けている。入試を受ける前に給付を「予約」し、安心して合格をめざせるタイプの奨学金も多い。対象人数が多いという点では、近畿大学の特待生制度は1千人規模で最大級だ(特待生制度は、80ページから詳述)。

 学生本人に意欲があればぜひ狙いたいのが、海外留学希望者のための奨学金だ。自治体、民間組織、大学などが各種の奨学金を提供しているが、そのほとんどが給付型。有名なフルブライト奨学金をはじめ、大学院レベルの留学を支援するものが大半だが、短期英語留学や学部レベルでの留学をサポートしてくれる給付型奨学金もある。

 たとえば、埼玉県がグローバル人材の育成を目的に設置した「埼玉発世界行き」奨学金もその一つ。県内の大学に在学中か、本人か保護者などが県内に在住している学生を対象にした制度で、海外の大学や大学院の正規課程への留学を対象とした「学位取得コース」と、短期の交換留学などを対象にした「協定・認定留学コース」があり、いずれも留学に必要な経費の一部(コースや世帯所得によって異なるが、年間最大100万円)を奨学金として支給する。学位取得コースの場合は、学位の取得に必要な期間(最大4年間)にわたり、継続して支給を受けることも可能だ。

 同県はほかにも、海外自治体との姉妹友好関係を活用し、米オハイオ州のフィンドレー大学や中国の山西大学への短期留学、オーストラリアの大学のファンデーションコース(入学準備課程)や短期語学研修プログラムに、受講料免除で参加できるプログラムも実施している。

 民間団体の留学支援の中では、ブリティッシュ・カウンシルや経団連などの給付型奨学金が、学部レベルの留学にも対応している。海外大学の同窓会が運営するという点でユニークなのが、「イリノイ大学日本同窓会小山八郎記念奨学制度」。アメリカ中西部にある全米屈指の名門校、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の教養学部に、授業料免除で1年間留学できる魅力的なプログラムだ。また、石橋財団奨学金やオリエント財団奨学金のように、美術史やポルトガル文化といった特定分野を学ぶ学生のための奨学金もある。

 留学志望者なら注目すべきニュースが、文部科学省と日本学生支援機構が今年から募集を開始する、新しい給付型奨学金だ。1カ月~1年間程度の留学を希望する大学生などを対象に、上限30万円程度の学費補助と、渡航費や月々の生活費の一部を支給しようという構想だ。採用予定人数が300人と、留学支援奨学金としては枠が大きく、多くの志願者の注目を集めそうだ。

「たとえ1、2年卒業が遅れることになっても、留学はできるならしたほうがいい。奨学金で行けるなら、なおさらです」(石渡氏)

 これまで見てきたような給付型奨学金を利用するためには、何らかのコツや注意点があるのか。一部の大学では特待生制度との区別がはっきりしないケースもあるが、「本人の意思に関係なく、入学してほしい人材を大学が指定するのが特待生、学生の側が意思をもって申請しないと出ないのが奨学金という理解でいいと思います」と、久米氏は説明する。

 つまり申し込みをしなくとも恩恵が受けられる特待生制度と異なり、自分から積極的に情報を収集し、具体的なアクションを起こすことが、奨学金の受給には不可欠なのだ。ところが、情報があちこちに分散していたり、同じような制度に大学によってバラバラの名称がついているなどの理由で、この情報収集が決して簡単ではない。

「国公立大学などはあまりPRもしませんから、家計状況に応じた学費減免制度があることすら知らない親御さんが少なくありません。企業の奨学金も、認知度が低くて申込者がゼロ、というケースをときどき聞きます」(久米氏)

 情報収集の最初の手がかりとしては、日本学生支援機構の公式サイトを押さえておきたい。同機構が提供する奨学金に加え、地方自治体や民間団体、各国の政府機関などが運営するもの、海外への留学生向けのものを含め、各種の奨学金が網羅的に整理されている。「細かい条件が記載されていなかったり、あるはずの制度がリストから抜けている例もありますが、さまざまな奨学金探しの出発点としては便利だと思います」(石渡氏)

 あとは志望する大学や、縁のある自治体ごとに、細かく情報を調べることになる。「ホームページやパンフレットに出ている情報がすべてではありません。たとえば、離島出身者を対象にした給付型奨学金を設けている大学もありますが、ウェブサイトやパンフレットにはあまり載っていませんから、志望校や地元の教育委員会などにあらかじめ問い合わせる必要があります」(久米氏)

 志望する大学を中心に、情報の更新チェックも随時心がけたい。「国公立大学では毎年のように、他の大学の奨学金制度の様子を見ながら新しい奨学金制度を新設する例が見られますし、私立大も制度をよく変えてきます」と石渡氏。入学前に予約するタイプの奨学金などでは、前年末などの早い時期に募集を締め切ることもあるため、募集期間についても忘れずに確認をしておこう。

 入学後に奨学金を申請する場合は、学生課にこまめに足を運ぼう。「大学や日本学生支援機構のウェブサイトに掲載されていないような奨学金のパンフレットなどが、さりげなく置かれていることも多いからです」と久米氏は言う。

 そしてもちろん、首尾よく奨学生に選ばれたあとは、努力して学業成績を維持するとともに、日々の生活態度にも気を付けよう。「万一不祥事などを起こして、せっかくの奨学金をフイにしてしまっては、泣くに泣けません」(久米氏)

 以前に比べればだいぶ増えたとはいえ、日本の奨学金全体に給付型奨学金が占める割合は、まだ3%にも満たないという。だが、本人の学力や進路設計と、大学や奨学金団体のビジョンが一致すれば、「もらえる奨学金」を受け取れる確率はぐっと上がるはずだ。

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