女性医師、子育て中もほぼ「常勤」

2014.03.15

女性医師、子育て中もほぼ「常勤」
 2014/3/15 日本経済新聞

 昼夜を問わない長時間勤務が残る医療現場で、育児を抱える女性医師を支える取り組みが広がってきた。

柔軟な働き方を認めたり、専門性の高い技術を習得できる機会をもうけたりして、活躍やキャリアアップを後押ししている。

「医師としてしっかり働けて、やりがいがある」と大阪厚生年金病院(大阪市)の小児科医師、柏木博子さん(38)は話す。
2児の母で、短時間勤務でありながら、常勤医師とほぼ同じ業務内容をこなす。

 医療現場の労働環境は過酷だ。外来の診察から手術、学会への参加や夜勤まで。労働政策研究・研修機構の調査によると勤務医の4割は週の平均労働時間が60時間を超える。
夜勤では半数弱の睡眠時間が4時間未満。翌日も約9割の医師が通常どおり勤務する。

 これに対して同病院は、医師、看護師など、それぞれが柔軟に働ける体制を整えてきた。柏木さんの場合、外来のほか、病棟回りや新生児集中治療室(NICU)の患者も担当する。

ただ夜勤は免除してもらい、代わりに週末の日直を月1~2回担当する。
その分、通常勤務の医師とは給与にはかなり差が出るが、本人の満足度は高い。

 可能にしたのは医師の増員。清野佳紀名誉院長は「(人件費増が負担になるリスクがあり)恐る恐るだったが、結果的に収益につながった」と話す。

常勤医師は現在140人程度。改革を始めた2003年度から6割増えたが、診療体制が充実したことで診療数も増え、純利益は8億円と改革前の3倍以上となった。




 「認証制度の活用を、医師の働き方を見直すきっかけにしてほしい」と話すのが、「働きやすい病院」の認証を06年から実施しているNPO法人イージェイネット(大阪市)の瀧野敏子代表理事。
これまで大阪厚生年金病院など全国で19病院が認定を受けた。

 認定は書類審査と現地調査などで判断する。重視するのが「女性医師と支える男性医師などとの関係がうまくいっているか」(瀧野代表理事)。
女性の負担を男性に振り分けるだけでは不公平感が残るからだ。
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 武蔵村山病院(東京都武蔵村山市)はこの認証をいかして、女性医師の確保につなげた。

 医師不足に悩んでいた同病院の高橋毅院長らは「働きやすさを特徴にする」と決断。
週3~4日の勤務でも常勤医扱いにする独自制度を整え、短時間勤務の導入、院内保育所の設置など総合的に整備して10年に認定を取得。
この結果、女性医師からの問い合わせが増え、現在約40人いる常勤医の半分近くが女性という。

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 ただ、こうした見直しはまだ少数だ。男性医師の就業率は年代を問わず90%台で推移するのに対し、女性は30代半ばで就業率が75%まで低下、40代にかけて回復するものの90%には満たないという。

最大の理由は「出産と育児」(日本医師会調査)。
産休すらとれない古い慣習が残っている病院もあるとされる。

厚生労働省も、女性医師が働き続けるための支援を2000年代に入って本格化している。

救急や重病患者を受け入れる病院を中心に医師は不足しており、女性医師に期待が集まっている。

 進歩が早く専門性が高い医療では、一度休むと復帰のハードルが上がりやすい。
筑波大学病院(茨城県つくば市)では短時間勤務などをしながら専門医資格の取得や高度な技術を習得し、常勤医師に戻りやすくする制度を07年から導入している。

 休職から復帰した医師が、自分に合った働き方をしながら技能を習得する。
これまで32人が利用、多くが常勤医に戻った。「専門性の高い技能を自分の武器にしてもらえる」と瀬尾恵美子キャリアコーディネーターは話す。

 利用者の1人、相原有希子さん(38)は4歳と生後7カ月の2児の母。
朝9時前から夕方6時すぎまで形成外科で外来や手術なども担当する。「高度な乳房再建などの手術技術も身につけたい」

 国立病院機構埼玉病院(埼玉県和光市)では、勤務後に子連れで勉強会に参加できる体制を整えた。同病院小児・周産期センターの上牧勇部長は「出産した女性医師にキャリアアップを諦めてほしくない」と説明する。




 同科の医師、富田瑞枝さん(32)は勤務後、子どもに夕食を食べさせてから勉強会に参加。「出産をしても専門医資格の取得などを諦めずに済んだ」と話す。

 女性医師にキャリアアップの必要性を説く声は多い。イージェイネットの瀧野代表理事は「復帰した女性の中には、さほど専門性が必要ない業務に携わる人もいる。スキル向上を目指す人が少ないと、支援の効果は半減する」と強調する。

 リクルートワークス研究所の石原直子主任研究員は「課題は民間企業と基本的に同じ」と分析する。「企業でも力点はキャリアアップ支援。医療界では病院の発展を左右する指標のひとつが女性医師の活躍度合いとなるのではないか」と指摘する。(西村絵、井上円佳)