上田あすを紡ぐ=安心して住める地域(1) 医療(上) 医療センター産科再開、お産態勢充実へ

2014.03.04

上田あすを紡ぐ=安心して住める地域(1) 医療(上) 医療センター産科再開、お産態勢充実へ
2014.02.25 信濃毎日新聞



 市民が安心して快適に暮らすために、上田市で大きな課題となっているのが地域医療の充実と新たな可燃ごみ焼却施設の建設だ。上田小県地域の中核病院に位置付けられる信州上田医療センター(上田市緑が丘)で医師不足のため休止していた出産の取り扱いが4月に再開されるものの、医療態勢の整備はまだ不十分。焼却施設の建設予定地では地元の反発が根強い。第2部は市が交通弱者対策として導入した低運賃のバスを含め、市民の生活基盤をどう整えていくべきかを考える。

   (田中陽介、田中達也)

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<役割明確化・連携さらに>

 小さな体にくまなく聴診器を当て、腕や脚を曲げ伸ばしたり、腹部を押したりして異常がないかを入念に調べる。上田市緑が丘の市立産婦人科病院。今月7日の朝、国立病院機構信州上田医療センター小児科の南雲(なぐも)治夫医師(48)が出向き、産後数日の新生児たちの検診をしていた。

 検診は火曜と金曜。医療センターの小児科医2人が同病院で生まれた新生児全員を交代で診る。自然分娩が困難な場合に同病院の産科医が行う帝王切開にも立ち会う。心雑音や呼吸障害といった異常を早く発見でき、同病院の帝王切開は、2011年度(当時は上田市産院)の20件から、本年度は昨年12月末までで57件に増えた。広瀬健院長(64)は「センターとの連携が進んだ結果、上田市内で完結できるお産が増えた」と話す。

 市立産婦人科病院は全国で唯一、産婦人科だけの公立病院だ。常磐城5にあった市産院の移転新築により12年4月、医療センター隣接地に開院した。両者で協議を重ね、医師が行き来した際の報酬の支払いや血液などの検査料、緊急搬送の手続きについて取り決めをした。市産院時代も、センター前身の長野病院の医師が応援に駆け付けることはあったが、詳細な取り決めはなく、密接な協力関係にはなかった。

 医師不足で出産の取り扱いを6年余り休止していた医療センターは、常勤産科医が3人態勢となる4月の再開に向けて準備する。森哲夫院長(64)は互いの役割について「原則として正常な出産は市立産婦人科病院で、危険度の高い出産は医療センターで扱う」と話す。市立産婦人科病院の村田昌功(まさのり)副院長(53)も「数に限りのある医師が、危険度の程度により効率的に動ける態勢が必要だ」と強調。考え方は基本的に一致する。

 ただ、上田小県地域の出産を扱う施設は一転して「供給過剰」となりつつある。各医療機関の経営が厳しさを増す中、こうした分担を進めるには課題もある。

 危険度の高い出産を含め年間500件弱を扱ってきた旧長野病院が出産の受け付けを休止したのは07年12月。坂城町を含む上小医療圏で出産を扱うのは、市産院と民間2医療機関だけとなった。当時、同医療圏の出生数が年1800~1900人台なのに対し、3カ所での受け入れは計1500件程度。危険度の高い200件ほどを含む300~400件を、県厚生連篠ノ井総合病院(長野市)など圏外に頼らざるを得なくなった。

 その後、10年度に東御市が年間120件ほどを扱う「助産所とうみ」を開所。市立産婦人科病院も受け入れ目標を市産院の1・3倍の630件に引き上げた。医療センターは危険度の高い妊婦を中心に年間200~250件を扱う予定で、医療圏全体の受け入れ可能数は約2千件に拡大する。一方で圏内の出生数はいま、少子化により1600~1700人台だ。

 産婦人科病院での本年度の出産数は目標より200件少ない430件ほどとなる見通しだ。一方の医療センターも、危険度の高い出産のみを扱うのは経費がかかり、経営的に不利な面がある。

 利用者の多様な要望に目を向ける配慮も必要だ。長野病院と市産院で出産経験があり、3月に市立産婦人科病院で4人目を出産予定の主婦桜井美幸さん(38)=上田市東内=は「難しい出産に対応できる大きな病院が地元にあるのは安心」とした上で、「できることなら市産院のように、落ち着いた雰囲気で産める所があればうれしい」と話す。

 ここまで整ってきた出産の態勢を後戻りさせないためにも、地域の各医療機関の役割分担をより明確にして連携を図ることが求められる。上小地域の中核を担う上田市の姿勢も問われている。

 [上田市立産婦人科病院開院と信州上田医療センターの出産取り扱い再開までの経緯]

 全国的な医師不足を背景に、信州大医学部(松本市)が2005年8月、上田市産院(上田市常磐城5)からの医師引き揚げを通告。市は産院廃止を検討したが、産院での出産経験者らから存続を求める声が強まり、市は同11月に存続方針に転換し、別に医師を確保してきた。

 07年11月には昭和大(東京)が長野病院(上田市緑が丘、現信州上田医療センター)に派遣していた産科医を順次引き揚げる方針を通告。同病院は出産の取り扱いを休止した。11年4月に名称変更した信州上田医療センターが医師確保を進め、今年4月に再開する。

 その間、市産院が老朽化したこともあり、市は08年6月に移転新築方針を表明。市立産婦人科病院と改称して12年4月、医療センターに隣接して開院した。

信濃毎日新聞社