特集◎大震災は医療をどう変えた 現場医師が語る(7)

2014.03.15

特集◎大震災は医療をどう変えた 現場医師が語る(7)

「東北に医学部新設なんてとんでもない」

小泉嘉明氏(釡石医師会会長)

2014/3/15 豊川琢=日経ヘルスケア


まだ詳細な時期は確定していませんが、県立大槌病院の入院機能の再開が決まり、釡石・大槌医療圏の医療提供体制は震災前の形に戻るめどが立ちました。

ただ、医師不足の状態は限度に近づきつつあります。

当医療圏の人口10万人当たりの医師数(10年時点で136.7人)は、全国平均(同230.4人)より100人弱も少ないのです。

 
こいずみ よしあき●1946年生まれ。岩手医大卒。震災前から、地域の医療提供体制の構築に尽力。震災発生後は死体検案や医療の復旧などに精力的に取り組む。

 そんな中、昨年12月に被災地復興を目的として東北に医学部新設を認める特例措置が閣議決定されました。

一見喜ばしく思えますが、現場から言わせると、医師不足をいっそう助長するとんでもない話です。

 医学部を一つ新設するには、数百人の教官が必要になります。

その供給先は医療現場で、被災地の沿岸部からも医師が持って行かれるのは目に見えています。

文部科学省をはじめとする3省庁が示した医学部設置認可の基本方針では、医師の引き抜きで地域医療に支障を来さない方策を講じることが示されました。

しかし、医師本人が大学に行きたいと希望すれば、誰が引き止めることができるでしょうか。

 釡石・大槌の被災地に目を向けると、区画整理が進まずいまだ更地のままで、町の形が見えないのが現状です。

被災者の中には、生活が一変して活動量が落ち、生活不活発病や静脈血栓塞栓症に陥る人もいます。

町ができなければ、人々はなかなか希望を持って生活できません。そうした人たちをどう支えるべきか─。今、私はそのことばかり考えています。(談)