改革 法人税(中) 優遇でも高止まる負担

2014.02.17

改革 法人税(中) 優遇でも高止まる負担
 「国内で消耗戦を繰り広げるよりも一緒になって海外で戦う」(三菱重工業の大宮英明会長)朝日新聞2・16


三菱重工と日立は火力発電事業の統合で税優遇措置を活用(2012年11月の発表時)
 三菱重工業と日立製作所は1日、火力発電事業を分割、統合する新会社「三菱日立パワーシステムズ」を発足させた。
売上高は米ゼネラル・エレクトリック(GE)、独シーメンスに近づく。

両社の決断を支えるのは、安倍晋三首相の肝煎りで1月に施行した産業競争力強化法だ。
事業分割する企業に法人税などの優遇措置を設けて、事業再編の決断を促す。

 日本は複数の企業が1つの事業分野で過当競争に陥り、再編による競争力の強化が急務だ。
M&A(合併・買収)に詳しい大石篤史弁護士は「諸外国では見当たらない画期的な制度で、企業が事業再編を行う動機になりうる」と高く評価する。

 従来の政策減税は次代の成長を担う産業の競争力を高める視点が欠けていた。
安倍首相も「グローバル経済の中での競争も考えながら法人課税のあり方を検討することが重要だ」と強調する。

 だが、政策減税だけでは限界がある。
日本では企業が稼いだ所得にかかる実際の税負担率が高止まりし、国際競争で不利になっているからだ。

 「税負担率に2倍もの差があっては勝負にならない」。

医薬産業政策研究所(東京・中央)の長沢優統括研究員は欧米製薬大手10社と日本の5社の過去5年の税負担率を比較し、言葉を失った。

 研究開発減税の恩恵が大きいとされる製薬業界だが、税負担は米ファイザー18.5%、スイスのノバルティス14.4%に対し、武田薬品工業38.9%、第一三共45.6%と大きな開きがある。
欧米大手は日本勢より年平均で約16億ドル(1600億円)多い余裕資金を得た計算だ。その分研究開発に資金を多く回せる。

 スイスの製薬企業は自国の法人実効税率が約20%と低い。米大手は低税率国のアイルランドで開発から生産までできる体制を整え、各国に輸出して税負担を抑えている。

 日本製薬工業協会の松原明彦常務理事は「税引き後の利益は投資家も重視する指標。
(税負担を軽減する)戦略を考えざるを得ない」と話す。
武田薬品工業やアステラス製薬などはアイルランドに工場を置く。いずれ米大手並みに生産を海外に移してもおかしくない。

 税負担率の高さはほかの産業も同様だ。日本経済新聞社が上場企業2249社の税引き前利益に占める税負担率を求めたところ、12年度までの3年間で平均約44%だった。

森信茂樹中央大学教授は「空洞化を防ぎ、海外から企業を呼び込むためにも、法人実効税率の引き下げが必要だ」と指摘する。


利用実績ゼロ


 大胆な法人減税に及び腰な政府は、税優遇を盛り込んだ特区制度などをたびたび掲げてきた。

グローバル企業のアジア本社誘致に向け、12年11月に始まったアジア拠点化推進制度。
法人実効税率が7%下がるとの触れ込みだったが、実績はいまだにゼロ。条件が複雑で利用しにくいからだ。

 総合特区、復興特区……。3月に指定地域が決まる国家戦略特区も同じ轍(てつ)を踏みかねない。国際競争力の向上をうたいながら、企業に使われない看板倒れの税制措置を繰り返している猶予はない。