[社説]診療報酬改定 「病院依存」から転換できるか

2014.02.14

[社説]診療報酬改定 「病院依存」から転換できるか
2014.02.13 読売新聞



 病院偏重の医療から、在宅ケア重視に転換する契機となるだろうか。

 医療機関の収入となる診療報酬の改定内容が、中央社会保険医療協議会(中医協)で決まった。

 重症者を受け入れる急性期病床の要件を厳しくする一方で、早期退院のためにリハビリを重点的に行う病床の報酬を手厚くする。

 日本の病院は、患者の平均入院日数が欧米に比べて長い。それが医療費の膨張も招いている。

 高齢化はさらに加速する。高齢者の多くが、在宅医療で対応できる慢性病を患っている現状を考えれば、急性期病床を減らし、早期退院を促す狙いは理解できる。

 問題は、いかに病床の再編を効率的に進めるかだ。

 厚生労働省のこれまでの診療報酬改定は、少なからず医療現場に混乱をもたらしてきた。

 急性期病床についても、2006年の診療報酬改定を機に過剰になった。報酬を高く設定したため、多くの病院が必要以上に急性期病床を設けた結果だ。

 看護師を多く配置する必要があるため、医療機関の間で奪い合いが生じた。都会に看護師が偏在する傾向も強まった。

 急性期病床なのに、入院しているのは病状の落ち着いた高齢者が大半という病院も少なくない。

 厚労省は、制度設計が甘かったことを反省すべきである。

 今回の改定でも、同様の懸念は拭えない。リハビリ用病床の報酬を高くすれば、これに転換を図る病院が急増するだろう。リハビリ用病床が多過ぎると、本来は在宅ケアで済む患者が、病院にとどまることにつながらないか。

 リハビリ用病床が過剰にならないよう、厚労省はしっかりとした対策を講じることが肝要だ。

 今回の改定では、在宅ケアの患者の主治医となる開業医への報酬も新設される。在宅療養する高齢者の病状を安定させることが目的だが、大病院志向が強いとされる患者が、開業医をかかりつけ医とするかどうかは不透明だ。

 病床再編には、診療報酬改定だけでなく、地域ごとに必要な急性期病床やリハビリ用病床数を正確に算出することが大切である。

 政府は、現在の地域医療計画を充実させるために、必要なリハビリ用病床数を盛り込んだ「地域医療ビジョン」を15年度以降、都道府県に策定させる方針だ。関連法案の今国会成立を目指す。

 医療機関への指導権限を持つ都道府県が、均衡の取れた病床再編に果たすべき役割は大きい。
 



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<社説>医療難民対策*安心への一歩にすぎぬ
2014.02.13 北海道新聞

 病気が癒えないのに、一定の治療を終えると退院を余儀なくされ、行き場を失う「医療難民」が道内でも後を絶たない。

 リハビリなど回復期の病床を拡大すれば、そうした患者の受け皿になるだろう。

 厚生労働相の諮問機関、中央社会保険医療協議会は、2014年度診療報酬改定案を答申した。4月から一部を除き実施される。

 重症患者向けの急性期病床を減らし、症状が安定した患者向けの回復期病床への転換を図るために、報酬額などを変更するのが柱だ。

 冬が厳しく面積の広い道内は、全国的にも患者の入院日数が長い。必要な病床を確保するには医療機関に任せるだけではなく、自治体も政策や財政面で支援を強化してほしい。

 厚労省は、高度医療の充実を目的に06年度の改定で急性期病床に高い報酬額を設定した。

 しかし、想定以上に急性期病床が増え、一定の治療を終えると患者に退院を促す病院が増えた。看護師の手厚い配置を条件としたため、結果的に看護師不足も招いた。

 医療難民を生み、病床体制をいびつにした責任は厚労省にある。その検証も合わせて行う必要がある。

 改定では、急性期病床の基準を厳格化し、現在の約36万床を約9万床削減する。その一方で回復期病床には現状より手厚い報酬を設ける。

 ただ、今回の改定により、高度な医療を受けられる病院が地域から消滅しないよう、厚労省も目を光らせなければならない。

 何より問題なのは実効性だ。日本は公的医療機関が多い欧州と違い、民間が大半を占めている。病床の誘導は、病院の判断に委ねられているだけにそれほど容易ではない。

 政府は今国会に、「地域医療・介護総合確保推進法案」を提出し、病床転換を後押しする考えだ。都道府県ごとに医療機関などが参加する協議会を設け、必要な病床数や目標の達成方法を話し合う。

 施設や人員体制を盛り込んだ医療ビジョンも策定しなければならず、自治体の果たす役割も大きい。

 もちろん患者が安心して療養する環境づくりは回復期病床を増やすだけでは十分でない。介護施設への入居や訪問医療が必要な場合もある。

 医療機関や介護施設同士が連携し、患者の症状に合った施設に振り分けることも大事だ。

 自治体も参加し、患者の橋渡しを進める必要がある。医療機関で患者ごとに療養計画をつくり、スムーズな転院を手助けするような専門職を充実させるのも一案だ。

 地域の人材や医療、福祉の資源を活用しながら知恵を絞りたい。