認知症、検査で分かる? 脳ドック上手に利用を じっくり問診、「読影」が重要

2014.01.20

認知症、検査で分かる?
脳ドック上手に利用を じっくり問診、「読影」が重要 (日本経済新聞1・19)
 

アルツハイマー病などの認知症を心配して脳ドックを受診する人が増えている。
主に脳梗塞の兆候をつかむ目的で使われてきたが、用途が拡大しつつある。
ただ、認知症の発症メカニズムは解明しきれておらず、予防・治療法も研究途上だ。脳ドックに期待しすぎないで、検査内容や、分かることと分からないことを理解したうえで上手に利用したい。


MRIで脳を検査する(慶大病院予防医療センター提供)
 
慶応義塾大学病院が2012年に開設した予防医療センター。
脳ドックを受ける人は午前中にまず先端装置を使った画像検査をする。
磁気共鳴画像装置(MRI)で脳のしわなどの細かい構造を見たり、血管の様子を調べたりする。

頸(けい)動脈の血流や血管壁を超音波で調べる頸動脈エコーの検査もある。


面談で兆候つかむ


 脳画像などの第一の目的は脳の血の巡りが悪くなり、脳梗塞をもたらす懸念もある「大脳白質病変」などの異常や血管障害をつかむことだ。
「物忘れがひどいけど、大丈夫か診てほしい」と検査を受けに来る人も多いが、画像からは認知症の兆候が直接読み取れるわけではない。
むしろ偶然、脳梗塞などの危険がわかるケースが多いという。

 認知症の診断につながるのは、午後の医師との面談だ。
1人あたり1時間ほどかけ、気になっていることを医師に話す。
「ある程度心が通じ、気持ちよく検査を受けてもらわないと本当の状態がわからない」と担当医は打ち明ける。「打ち解けるための時間を大切にしている」という。


緊張がほぐれたところで、一般的な知能テストや記憶テストを受ける。
「今日は何月何日ですか」
「これから言う言葉を繰り返してください」など、正常なら決して難しくない問いに答える。
物語を読んで30分後にどれだけ覚えているかを説明するテストもある。
いずれも、認知症を専門に扱う同病院の「メモリークリニック」で実施している検査を参考にしたものだ。

 脳ドックは通常の人間ドックの追加メニューとして用意している。
「人間ドックでは生活習慣病を把握するための問診などをしており、その情報も脳の病気を判断するのに役立てる」(予防医療センター)。
総合的な健診がよいという。

 検査で異常が見つかりメモリークリニックの受診や治療などが必要と思われる場合は医師から詳しい説明がある。問題があると言われショックで落ち込む人もいるが、あまりストレスにならないよう前向きに考える姿勢も大切だ。

 
MRIの画像を専用ソフトウエアで処理し、認知症との関係が深いとされる脳の萎縮の有無を判定する医療機関も出てきた。
南東北グループの新百合ケ丘総合病院(川崎市)は脳ドックのメニューに、同ソフトを使う「脳萎縮解析検査」を設けている。
記憶をつかさどる海馬という部位の萎縮がないかなどを調べる。


50歳以上がお薦め


 ソフトは「VSRAD」と呼ばれ、海外でも使われている。
標準的な脳のデータと検査を受けた人のデータを比べ、萎縮の程度を0~3の数値で表示する。
1以上だと萎縮が疑われ、数値が大きいほど問題があるとされる。

 ただし「脳の形には個人差があるので、最後は医師が画像を見て判断する必要がある」と同病院の笹沼仁一院長(脳神経外科)は指摘する。
ソフトは50歳以上向け。30代~40代でも脳の萎縮を心配して検査を希望する人が多いというが、正しい判定が出ないかもしれないと知っておきたい。


PET―CTの画像も診断に役立つ(窓の向こう側が装置。新百合ケ丘総合病院)

 50歳以上でも「脳に萎縮が見つかれば必ず認知症というわけでもない」(笹沼院長)。
例えば飲酒量が多い人は前頭葉に萎縮がみられる場合があるが、認知症には直結しない。

 主にがんの早期発見のために使う、陽電子放射断層撮影装置(PET)とコンピューター断層撮影装置(CT)を組み合わせた「PET―CT」の画像が役立つこともある。

がん検査よりも少し長く時間をかけ、頭部の画像をとる。
脳をスライスした画像で、働きが悪い部分などが見える。アルツハイマー病に至っていない軽度認知障害を把握できる可能性がある。

 脳ドックは最先端の診断機器やシステムが次々に導入されている。
大切なのは画像をきちんと読み取れる「読影」の専門家や、検査結果から病気との関連を判定できる医師がいるかどうかだ。
日本脳ドック学会の認定施設は参考になる。
新設の病院などはリストに入っていない場合があるが、医療機関のホームページなどで脳や神経の専門医がそろっているかをあらかじめ調べるとよいだろう。

(編集委員 安藤淳)