産後入院、ママに勇気 増える核家族・高齢出産 育児教え不安軽減

2014.01.14

産後入院、ママに勇気 増える核家族・高齢出産 育児教え不安軽減
2014年1月13日 朝日新聞

授乳指導する宮下院長=横浜市南区のみやした助産院
 核家族や高齢出産が増える中、孤立しがちな出産直後の母親を癒やし、赤ちゃんの世話も学べる「産後入院」に力を入れる助産院や産婦人科が相次いでいる。

児童虐待の予防や少子化対策にもなるとして、国や自治体も入院費用を補助する支援に乗り出した。

 「上手に飲めるね。家でも大丈夫だね」。

昨年11月中旬、横浜市南区のみやした助産院。産後入院用に改装した部屋で、宮下美代子院長は、同市戸塚区の公務員女性(38)に声をかけた。

女性は生後22日目の長男をぎゅっと抱きしめた。

 不妊治療の末に授かった長男は早産で、女性と離れて2週間入院した。

その間に哺乳瓶に慣れ、退院後も母乳を飲まずに泣き続けた。体重は出生時の約2600グラムから増えなかった。

 飲ませようと必死で眠れない。「ダメな母親……」。自分を追い込む妻を見かねた夫(39)の勧めで助産院に駆け込んだ。

 入院は3泊4日。助産師のマンツーマン指導で、授乳のタイミングやコツ、楽な抱き方などを学んだ。夜は助産師に赤ちゃんを預け、ぐっすり眠った。

 「全部自分がやらなきゃという気負いが消えた。リズムもつかめた。これならやっていけそう」。
長男の昼夜逆転も直り、落ち着いて眠るようになった。

 核家族や高齢出産が増えるなか、手本が得られず心のバランスを崩す母親は多い。

そんな母親から育児相談を受ける中、みやした助産院が産後入院を始めたのは2006年。

「出産後すぐに助産院で育児のペースがつかめれば心に余裕が生まれる」と宮下院長は話す。

 12年までの6年間で利用した113人のうち35歳以上が4割近くを占める。

高齢出産だと体力的な不安があったり、その親も高齢だったりするためだ。

宮下院長は「高齢出産は増えており、産後入院のニーズはますます高まる」とみる。

 同様の取り組みは産科医にも広がっている。

横浜市港北区の産婦人科「新横浜母と子の病院」は昨年3月に産後入院を始めた。東京都江東区の産婦人科病院も産後入院専用ベッドを増やした。

 ■自治体・国に助成の動き

 産後入院は、健康保険の適用外で1泊数万円かかる。横浜市は昨年10月、市内8カ所の助産院への産後入院費用を補助する制度を始めた。

戸塚区の女性も3泊4日で9万円のところが1万2千円の負担で済んだ。

 市こども家庭課によると昨年11月末までに26人が利用。親が介護に忙しく助けてもらえない、双子の育児に手が回らないといったケースがあった。

同課の担当者は「不安な母親を支え、産後うつの発見や虐待防止にもつなげたい」と語る。

 ただ、補助金が使えるのは保健師などとの面接で育児への不安が強いと認められる場合のみ。

今年度の予算は533万円。財政的にも対象者を絞らざるを得ず、1回2~4日で120組程度の利用を見込む。

 東京都世田谷区は08年、武蔵野大学に委託して産後入院専門施設「産後ケアセンター桜新町」を開設。

区民の場合、利用料の9割を区が負担し、1泊2日6400円で助産師の育児指導や臨床心理士のカウンセリングを受けながら休養できる。

8床あるベッドはほぼ満床の状態が続く。家族の支援が得られず育児不安を抱える母親が対象だが、「元気そうでも困難を抱えている人を見逃してはならない」(区担当者)と、初産は極力受け入れているという。

 少子化対策の一環として厚生労働省も注目。
産後入院費用の利用者負担を減らすモデル事業として新年度予算案に4億9千万円を盛り込んだ。
全国40市区町村での実施を目指す。

 ただ、国立保健医療科学院の福島富士子・特命統括研究官(母子保健政策)らが12年度に実施した全国調査では、産後入院の助成制度があると答えたのは16市区町にとどまった。
助産院が少なく、都市部に偏在している課題も浮かんだ。

福島研究官は「補助金だけでは虐待などのリスクが高い人しか救えない。
企業が福利厚生に組み込むなど、継続できる制度にする必要がある」と話す。(木下こゆる)

 ■産後入院を補助する主な自治体

       利用者の1泊2日の負担額

東京都世田谷区   6400円

横浜市       6000円

長野県上田市    6000円 

静岡市      26000円

岡山県倉敷市    9000円 

高松市      20000円 

鹿児島市     18000円

 (負担額は所得や施設によって異なる場合がある)