福島医師不足、震災で加速/2010年末比195人減/12年末時点・厚労省調査

2013.12.31

福島医師不足、震災で加速/2010年末比195人減/12年末時点・厚労省調査/福島県の2012年末時点の医師数が東日本大震災前の10年末に比べ195人(5%)減少したことが、厚生労働省がまとめた医師数
2013.12.29 河北新報


福島医師不足、震災で加速/2010年末比195人減/12年末時点・厚労省調査

 福島県の2012年末時点の医師数が東日本大震災前の10年末に比べ195人(5%)減少したことが、厚生労働省がまとめた医師数調査で分かった。

震災と福島第1原発事故を経て、医師の県外流出が急速に進んだことが要因。

人口10万人当たりの医師数は47都道府県の中で4番目に少ない。東北の他の5県も全国平均を下回った。

 医師数調査は厚労省が2年に1回実施する。

福島県の医師数は12年末、震災前の10年末の3880人から3685人となった。震災後に県外へ転出した医師は400人に上り、県内への転入(234人)を大幅に上回った。

 2次医療圏別では、原発が立地する相双地方の減少率が最も大きく、この2年間で92人(36.8%)の著しい減少となった。

相双を含む県内七つの全医療圏で前回を下回り、減少幅は県中40人(3.8%)、県北36人(2.7%)、いわき15人(2.6%)など。

 県は「県内の病院勤務医の減少傾向は12年8月に底を打ち、持ち直しているが、もともと医師不足だった震災前の水準まで戻っていない」(地域医療課)と説明し、医師の確保を急ぐ。

 被災3県のうち岩手県は2603人で、前回に比べ27人(1.0%)増えた。

宮城県は123人(2.3%)増の5358人で、大学教員が増えたことが背景にある。

津波被害を受けた両県沿岸部の五つの2次医療圏(宮古、釜石、気仙、気仙沼、石巻)は震災前より計24人少なかった。

 6県の医療機関に従事する人口10万人当たりの医師数は図の通り。
宮城県が218.3人で最も多く、山形県が210.0人で続いた。6県全てで全国平均の226.5人を下回った。
福島県は都道府県順位を2年前の41位から44位に落とした。

 震災後、被災3県には全国から応援医師が入ったが、今後は引き揚げが進むとみられる。
被災した岩手県立3病院は医師確保が困難なため、再建時に病床を縮小する方針。

 気仙沼市は市立2病院で勤務を志望する医学生を対象に奨学金制度を設けたが、12年度の応募はゼロだった。
市立病院は「本年度は応募があった。医師が働きやすい環境を整え、地域定着につなげたい」と話す。【カラー図】医療機関に従事する医師数
 

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キャップが見た この1年(上)、医学部新設、「復興の陰で」河北新報12・31

 2013年が間もなく暮れる。
東日本大震災から3年目。
被災地の復興を目指す取り組みをはじめ、ことしもさまざまな動きがあった。
地域や暮らしの再生に向けて何が求められるのか。
議論が続く現場もある。
本社取材班キャップが印象に残った取材や話題などを通じて1年を振り返る。



 昨年4月、東京・駒込にある日本医師会を訪ねたときのことだ。

 「震災を経た東北で大学医学部新設の機運が高まっている」と話を向けると、応対した中川俊男副会長から「あなたね、こんな取材をしていたら記者人生が短くなりますよ」と忠告された。

 日医はかねて医学部新設に反対してきた。
論客の急先鋒(せんぽう)の中川氏は「新設など到底実現しない。後押しする記事を書いていると、痛い目に遭う」とでも言いたかったのだろう。

 1年半後のことし10月4日、安倍晋三首相は東北への医学部新設の検討を文部科学省に指示した。
11月30日には文科省が新設容認を発表する。中川氏さえ想像困難なスピードで、事態は急展開している。

 新設には今のところ県内の2グループが名乗りを上げている。

 この間、二つの構想をなるべく詳細に紙面化するよう心掛けた。
両者が切磋琢磨(せっさたくま)をすることで、構想がバージョンアップされることを願ったからだ。

 医学部新設は東北の医師不足解消の唯一の解ではない。

卒業生の地元定着をどう図り、西高東低型の医師偏在をどう平準化するか。

打てる手は全て打たなければ、深刻さを極める地域医療の現状は改善されない。
 
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東北再生 あすへの針路/提言 地域の医療を担う人材育成/仙台に大学医学部新設/医師不足解消へ一歩/東北に新しい医学部が誕生する。文部科学省は、2015年春の開学を目指して大学の選定に着手する方針を表明
2013.12.05 河北新報

東北に新しい医学部が誕生する。文部科学省は、2015年春の開学を目指して大学の選定に着手する方針を表明。1979年の琉球大を最後に「これ以上、医学部はつくらない」としてきた封印が解かれる。

東日本大震災の被災地で奮闘する現役医師へのインタビューと、東北6県の市町村長アンケートを通じて新医学部の輪郭を描く。

◎南相馬市立総合病院医師・小鷹昌明さん(46)に聞く/「数」こそ「質」保証多様な分野で活躍期待

 医学部の新設には、日本医師会などがさまざまな懸念を投げ掛けている。
現場の医師はどう考えているのか。医大准教授の職をなげうち、南相馬市立総合病院で患者と向き合う医師小鷹昌明さんに聞いた。

 -被災地に赴いた理由を教えてください。

<既得権益が壁>

 「大学病院に19年勤め、臨床、教育、研究をこなしてきた。充実していたが、これからやりたいことは何か、と考えていたところに震災が起きた。
福島は医師がいなくて大変だと聞き、まずは現場に立ち返ろうと思った」

 -被災地の医療現場の印象は?

 「当病院は震災前、14人の常勤医がいた。
それが震災直後には4人になってしまった。
私が着任した2012年春には15人。震災前に戻ったという見方もできるが、1診療科に1、2人の医師がいるだけだ」

 「十分な医療を提供できているとは思えない。
重篤な患者を救えなくなるのではないかというリスクが常にある」

 -医学部新設に賛成していますが、医師不足は既存医学部の定員増で対応できるのでは?

 「医師の仕事は難しいことばかりではない。
検診や予防接種など免許さえあればできる仕事もある。高度な技術を持った医師が軽症患者の診療までカバーするから医療現場が破綻する」

 「医学部が増えて困るのは既得権益を守りたい人たちだけ。
医療を受ける側の住民は誰も困らない。
ないよりあった方がいいのなら、新医学部はあっていい。
『数』が充足されれば『質』も保証される」

 -数が増えると質は劣化するのではないですか。

<志に人集まる>

 「1970年代の医大新設ラッシュで粗悪な医師が量産されたかと言えば、そんなことにはならなかった。
私が卒業した医大もその一つ。
1期生や2期生には本当に優秀な医師が多い。
それは『大学の評判を決めるのは自分たち次第だ』という使命感があったからだ」

 「どんな組織も人数に対して質は正規分布する。
医学部を増やせば質の低い医師が増えるとか、少数精鋭なら全員優秀などということはあり得ない。優秀な医師を育てるのは教員の熱意だ。
医療過疎を何とかしようという志を抱く大学に、いいかげんな教員が集まるとは考えにくい」

 -医療現場の医師が大学病院に吸い上げられたりしませんか。

 「私は大学病院に勤めていたからよく分かるのだが、能力はあるのに組織の中で実力を出し切れていない医師というのがいる。
そうした人たちに新天地で力を発揮してほしい」

 「『医学部を新設したら医師数が過剰になる』と言いながら、他方で『教員医師の確保で現場の医師が不足する』という主張は明らかに矛盾だ」

 -東北に誕生する新医学部に何を望みますか。

 「医師養成の仕組みを工夫し、大学運営の新たなモデルになってほしい。
議論は必要だが、民間病院がつくった医学専門校(メディカル・スクール)に、四年制大卒の学生を受け入れて医師を養成するという発想もあるようだ」

 「医療の仕組み自体を大きく変換させることにも期待したい。
医師が介護や福祉の分野に職域を広げれば、そうした現場の士気も高まる。医療の裾野は広い。
遠い遠い将来、本当に医師数が過剰になっても地域社会が豊かにこそなれ、荒廃することは断じてない」<おだか・まさあき>1967年、埼玉県生まれ。独協医大卒。
2012年4月から南相馬市立総合病院に勤務。専門は神経内科。エッセイストでもあり、「原発に一番近い病院」(中外医学社)など著書多数。【カラー写真】小鷹昌明さん

◎東北6県市町村長アンケート/賛成圧倒8割超に/引き抜きへの懸念の声も

 医学部新設に東北6県の市町村長の8割以上が賛成していることが、河北新報社のアンケートで分かった。地域医療の充実に期待を寄せる一方、新医学部は多くの教員医師を必要とするため、医療現場からの引き抜きを懸念する意見が相次いだ。<賛否>

 アンケートは11月、東北6県の市町村長227人を対象に実施。189人(83%)から回答を得た。内訳は青森38人(市町村数40)、岩手24人(33)、宮城29人(35)、秋田21人(25)、山形28人(35)、福島49人(59)。

 政府による東北への医学部新設方針に「賛成」と回答したのは158人(84%)。宮城は全員が賛成するなど、「反対」の9人(5%)を大きく上回った。

 賛成の理由は「医師不足の解消が期待できる」が130人で最多。17人は「新医学部と連携した医療・福祉行政の展開」に期待を寄せた。「震災復興の象徴的取り組み」との声もあった。

 反対したのは青森3人、岩手4人、福島2人。賛否を明らかにしなかったのは宮城を除く5県の22人(12%)で「現場医師の引き抜き禁止など条件次第で賛成したい」との意見が多かった。

<要望>

 新医学部に何を望むかを複数回答で尋ねたところ、「卒業した医師が地元に定着する仕組み」(162人)が最多。「地域に密着した総合臨床医の養成」(122人)が続いた。

 記述回答でも、現場医師の引き抜きを危惧する首長が大半を占めた。

 既存医学部の在り方に不満を持つ首長は「新設しても入学生の地元枠を拡大しないと、資格を取ったらいなくなってしまうことの繰り返しで終わってしまう」(青森・町村)と指摘した。

 医師の地元定着率を高めるため「東北6県に医師がまんべんなく配置される仕組み」(青森・町村)、「定期的に大学で最新医療の研修ができる体制」(秋田・市)の整備を提案する首長もいた【カラーグラフ】新医学部への要望

◎東大医科学研究所 上昌広・特任教授/地元定着、自治体が提案を

 医学部新設に関する東北首長アンケートの結果を、東大医科学研究所の上昌広特任教授(医療ガバナンス論)に分析してもらった。

 8割を超える首長の賛意が明らかになった。医学部新設に対する東北の合意形成はほぼ図られたと見ていい。

 ただ、各県別の回答率や賛否を分析すると、誤差の範囲内ではあるが、岩手で新医学部への熱意や期待がやや薄れているように感じられた。

岩手で地域医療から高度医療まで全てをカバーしている岩手医大は、東北に同じ私立の医学部が誕生した場合、最も影響を受ける立場。遠慮があったのかもしれない。

 多くの首長が、新医学部による現場医師の吸い上げを心配している。
だが、こうした問題意識は、本当に自分の頭で考えたことなのだろうか。

 教員医師の需要は看護などの福祉系学部にもあり、医学部に限った話ではない。
東北市長会は医療現場からの引き抜き禁止を既に決議しており、これだけでも抑止力になるはずだ。

 総合医の養成を求める意見も、誰かの受け売りのように思える。
多様な専門医がフルセットで地域医療を担う方が、より住民ニーズにかなうのではないのか。

 記述回答の中に「岩手医大への補助を増額してほしい」という意見があった。もっともな主張だ。

 国から私立の単科医大への運営交付金は、年間50億円が限度。
その分、授業料を高くせざるを得ない。
ところが、授業料が安ければ受験生の裾野が広がり、優秀な学生が自然に集まるという法則もある。新医学部は、このジレンマをどう乗り越えていくのだろうか。

 独自に奨学金を支給し、返済免除を条件に医師の地元定着を目指す自治体も少なくないが、給与水準の高い医師は短期間で奨学金の返済を終え、都市部に流出してしまう。

 自治体が優秀な医師を地元に定着させたいのなら、医学部に資金を提供して授業料を引き下げ、その見返りに安定的な医師の派遣を確約させるという方法もある。東北に貢献する新医学部を実現するため、自治体は真に効果的な提案をすべきだ。