医学部新設に「絶対反対」 日本医師会の論理と倫理

2013.12.28

医学部新設に「絶対反対」 日本医師会の論理と倫理
2013.12.28 週刊東洋経済


医学部新設に「絶対反対」 日本医師会の論理と倫理

 筆者は社会保障費の削減のためには、薬のコストを下げなければダメだと言い続けてきた。
少しは筆者の声が届いたのかもしれない。

 2013年12月7日付の日本経済新聞によると、厚生労働省は公定価格である「薬価」が市場の実勢価格より平均8・2%高かった、と中医協に報告した。

“割り増し”分は約6000億円。これだけの金額が調剤薬局などの懐に余分に入っていたわけだ。

薬剤師会が処方薬のネット販売を禁止すべきと主張したのは、これを守るためだったのか、とあらためて思う。

国滅びて──

 さて、今回、取り上げるのは、日本医師会である。

 医師会は農協、薬剤師会、日教組と並ぶ日本最大の既得権益団体の一つだ。
かねて筆者は、政治家、芸能人、医者を「日本の3大世襲職業」と考えている。
いずれも「おいしい」職業だが、医師=開業医の「うまみ」を守るのが、医師会の仕事である。

 14年度の予算編成でも、診療報酬のプラス改定に向けて決起集会を開き、「地域医療を崩壊させる医療費抑制政策は断じて容認できない」と圧力をかけた(日経新聞)。

 「地域医療を崩壊させる」というのは、「開業医が儲からなくなる」ということなのだろう。厚労省が毎年行っている医療経済実態調査によると、設備のない開業医の平均年収は2683万円、入院設備のある開業医の平均年収は3440万円に達している。

 この収入を守るために、医師会は医者の“供給制限”に躍起になっている。医師会は医学部の新設に大反対なのだ(13年9月の医師会声明「医学部新設について」)。

医学部を新設し、医者が増えると需給関係が崩れ、従来の年収が危うくなるからだ。

 かつて特権階級の一つとされた弁護士が法科大学院の濫造で供給過剰になり、仕事にありつけない弁護士が続出したのを目の当たりにしているだけに、彼らも必死である。

 だが、民間の企業社会では、参入障壁を下げ、競争を通じて消費者の利便性向上を図るのは当たり前のことだ。

 医師会は反対理由として「教員確保のために医療現場から勤務医師」を移動させねばならず、特に大震災の被災地の「沿岸部の医療が壊滅すること」を挙げている。この論理はちょっとおかしい。

 むろん、被災地の医療体制を維持することは、残業に次ぐ残業で疲弊しきっている大病院の勤務医(平均年俸1500万円といわれる)の状態を改善することと同様に、至上命題だ。
地方や被災地の医者や病院勤務医には特段の政策措置やインセンティブがあってしかるべきだろう。

 だが、根本的には、医学部新設で医者を増やさないかぎり、地方医療の充実も、病院勤務医の状況改善も絵空事でしかないことは明らかだろう。

 国滅びて開業医栄える、というような結末だけは勘弁してほしい