社説 東北に医学部新設方針 地域医療へ配慮が必要

2013.12.25

社説 東北に医学部新設方針 地域医療へ配慮が必要
2013.12.24 山形新聞



 東北地方に新しい医学部を設けようと、文部科学省が2015年春の開学を認める方針を示した。

 東日本大震災からの復興支援の特例措置で、新設されれば1979(昭和54)年の琉球大以来になる。

被災地の医療が打撃を受け医療過疎が進んだだけに、久しぶりの開設に期待が掛かる。
医師不足に悩む東北に医師が増えることは望ましい。
しかし、手放しで歓迎できるかというと、必ずしもそうではない。

 医学部を新設するとなれば、多数の医師を教員として確保する必要がある。200人は必要との見方もある。

それが、今でさえ医師が足りない東北地方から採用された場合、地域医療に深刻な影響が出かねない。

大学や付属病院から人材が引き抜かれれば、大学病院の医師そのものが不足し、地域の中核病院から派遣医師が引き上げられて、地域医療が崩壊する危うさをはらんでいる。

 開設を求めていた東北市長会も、東北以外から採用するよう配慮を求める要望書を文科省に提出した。
本県の吉村美栄子知事も同様の懸念を示している。医師会など医療界は新設に反対している。

 文科省は、公立大や私大などの学部新設構想を来年5月まで受け付ける。
有識者会議による審査で1校に絞り、大学設置審議会に諮る予定だ。

 審査のポイントとして、
▽教員や付属病院の医師、看護師を周辺地域から引き抜かない
▽地域枠奨学金の設定など卒業生が東北に定着して地域医療を支える仕組みを講じる―など四つの留意点を示した。
認可に当たっては、周辺の地域医療に影響を及ぼすことなく教員を集められるのか、しっかり審査してほしい。

 東北の医師不足は深刻だ。人口10万人当たりの医師数(10年末)は、本県(206・3人)を含め東北6県はいずれも全国平均(219・0人)を下回り、地域偏在や診療科偏在も顕在化している。

 医師不足に対応するため政府は従来の養成の抑制方針を転換して、6年前から医学部の定員増を進めてきた。総定員は全国で約1400人増えている。

 それでも東北の医師数はまだ絶対的に不足している。一段と進む高齢化で医療ニーズはさらに増す。

適正な教員確保策を講じた上で、復興支援など災害医療、地域・へき地医療に力点を置いてほしい。医学部の総定員は増えており、将来人口と高齢化率の推計や将来的な必要医師数なども考慮する必要があるだろう。

 四つの留意点にも含まれているが、不可欠なのは大学卒業後の人材の定着だ。
若手医師が都市部に流れて戻らない傾向があり、地域定着率は低い。
地方では、規定の年数を地域の病院で働けば奨学金の返還を免除するなどの「地域枠」を増やしたり学資金の貸与制度を設けたりするなど、あの手この手で定着率向上に迫られているのが実情だ。

 これらの問題や懸念材料がクリアされず、卒業生が東北各県に医師として定着する仕組みがないままで学部を新設しても十分な効果は得られないだろう。

 医師養成だけでなく、地域偏在と診療科偏在という課題改善にも力を注ぐべきだ。政府には東北の現状を踏まえた真の意味での地域医療の充実策を求めたい。