町立松前病院:危機回避へ 町長謝罪、院長は辞職保留

2013.12.21

松前病院長が続投決定*「守る会」議会動かす*参加5000人 思い結実
2013.12.20 北海道新聞 

 ・・・病院の独立行政法人化を検討し、経営の自主性を強化するための調査費を一般会計補正予算に計上・・・

 

【松前】渡島管内松前町立松前病院の木村真司院長(49)ら常勤医10人中8人が辞意を表明していた問題で19日、院長ら大半が辞職しない見通しとなり、地域医療崩壊の危機は回避された。

病院の現体制存続を望む町民の声の高まりを背景に、職員雇用問題などに絡んで病院と対立していた町、議会が歩み寄ったためだ。
ただ、亀裂は修復されたとはいえず、病院運営に曲折も予想される。

 同病院の医師9人が家庭医。診療科にこだわらない「全科診療」を掲げ、地域医療の先駆的な取り組みで知られる。
毎年、全国各地から多くの研修医が訪れ、学んでいる。

 一連の問題は、病院の安定経営に手腕を発揮した前事務局長が、3月の定年退職後も嘱託職員として勤務することについて、町と議会が今春以降、その報酬額の高さなどから反対したのがきっかけ。

前事務局長の勤務継続を求める院長らは9月以降、相次いで辞意を表明した。

 危機感を抱いた住民は10月末、「町立松前病院を守る会」(高山智会長)を発足させ、会員は町民の4割と町外の住民合わせて約5千人に増加。

町役場や議場付近で「病院存続」を求めるシュプレヒコールを上げたこともあった。

 こうした声を受け、町は、10月以降の議会に、前事務局長を月額報酬50万円という厚遇の非常勤参与、もしくは期限付き職員として雇用するための条例改正案を提出し、町議会が可決した。

石山英雄町長は前事務局長に「非礼」をわび、全議員が病院に院長を訪ね「不快な思いをさせ申し訳なかった」と謝罪した。

 院長は19日、病院内で町長と会談。院長の運営方針に協力することに同意し、握手を交わした。

院長は「町長や議会の謝罪があり住民の強い思いを受け止め判断した」と話す。

 ただ、町議会とのしこりは完全に解消されてはいない。

病院は老朽化が進み、建て替えが急務だが、院長が進める改築プラン作りの手法などについて、議員は支持していない。病院側と議会側の信頼関係の再構築には、時間がかかりそうだ。

◇町立松前病院◇

 常勤医10人、100床。24時間体制の救急や人工透析にも対応し、周辺の渡島管内福島町や檜山管内上ノ国町からも患者が訪れる地域拠点病院。
札幌医大助手から2005年に就任した木村院長の下、「全科診療」体制を整備した。

*木村院長と町、町議会との経過

 3月31日 前事務局長が定年退職。院長が非常勤嘱託員の辞令を交付

 4月15日 町、辞令撤回を指示。前事務局長を臨時職員として雇用

 6月21日 定例会で嘱託員として再雇用できるとする条例改正案を否決

 9月 7日 定例会で12年度病院事業会計決算を不認定

   27日 院長が町長に辞職願を提出

   30日 臨時職員として勤務していた前事務局長退職

10月23日 町民有志が「松前病院を守る会」設立

12月 4日 8人目の医師の辞職願

   17日 定例会で町長、議長が院長、町民に謝罪

   19日 院長が辞意を撤回

【写真説明】看板を手にシュプレヒコールを上げる「町立松前病院を守る会」会員=17日


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町立松前病院:危機回避へ 町長謝罪、院長は辞職保留 /北海道
2013.12.20 毎日新聞



 松前町立松前病院(100床)の前事務局長の雇用継続を求め、院長側と町側が対立していた問題で、石山英雄町長は19日、病院を訪れ木村真司院長に謝罪し、辞表撤回を申し入れた。

木村院長は「当面、ここでの医療を続けてまいりたい」と述べ、来年3月末に退任するとした辞職願を保留した。
他の医師も辞表を取り下げるとみられ、病院存続の危機は回避される見通しになった。【鈴木勝一】

 対立のきっかけは、今年3月末で定年を迎えた前事務局長について、木村院長が「病院改革と黒字化に取り組んできた」と評価。

好待遇での雇用継続を求めたにもかかわらず、町側は再雇用後の給料を削減すべきだとして拒否したことだった。
木村院長は「このままでは医療を継続できない」と9月に辞表を提出。院長のもとで地域医療を学んでいた他の7医師も辞表を提出した。

 これを受け、町側は17、18日の町議会で、前事務局長の再雇用に道を開くための条例案を可決。
議場で石山町長と斉藤勝議長が木村院長と町民に対して謝罪の言葉を述べた。
また、病院の独立行政法人化を検討し、経営の自主性を強化するための調査費を一般会計補正予算に計上した。

 19日は、前町長の前田一男衆院議員(道8区)が仲介役となり、町長と院長の話し合いが行われた。

石山町長は「町民の命と健康を守る上で病院は不可欠。良い環境で院長に松前に残ってもらえるようバックアップして行きたい」と表明。

木村院長は「住民の皆さんの熱い思いを受け止めた。今後は町長、議会と意思疎通を緊密にしたい」と語り、辞表を提出していた他の医師の慰留に努めるとしている。

 ただ「黒字化した(2012年度の)病院決算を不認定にした議会には何らかの態度を表することを求める」と注文をつけ、町・議会側と信頼関係が修復されるまで辞表は取り下げない意向を示した。

 松前病院は医師が内科や外科などの専門を超えて診療する「全科診療」を掲げ、地域医療のモデルケースを目指す先進的な取り組みで知られ、住民から院長の残留などを求める運動が起きていた。

町民らでつくる「松前病院を守る会」会長の高山智さん(81)は「『病院がなくなったら困る』という町民の切実な声が届き、お互いの誤解が解けて良かった。すごくうれしい」と胸をなで下ろした。