人件費高騰で敬遠 国立病院入札不調

2013.12.03

人件費高騰で敬遠 国立病院入札不調
2013.12.01 岩手日報


 【解説】建設業の人手不足が深刻になり、国立病院などの入札に支障が生じてきた。
小泉政権以降、公共事業が削減され、建設現場からの転職が続いた。熟練工の高齢化も進んでいる。
東日本大震災の復興や防災事業によって公共事業は再び拡大しているが、働き手の確保は難しくなっている。 【本記1面】

 人件費の高騰で、受注後にコストが増加するケースは珍しくない。
公共、民間の工事を問わず、赤字受注を敬遠するゼネコンは、売り上げを伸ばすよりも利益重視に軸足を移そうとしており、入札不調は今後も増えるとみられる。

 建設業の就業者数は1997年の685万人が最多。2012年は503万人にとどまり、ピーク時に比べ約3割減った。

 国土交通省の推計によると、建物の骨組みをつくる技能労働者は2割近くが60歳を超えている。
7年後の東京五輪までに多くの熟練工が一線を離れる。しかし若者の「現場離れ」に歯止めは掛かっておらず、人手不足はさらに深刻化する恐れがある。

 政府内でも「人手不足が建設投資の障害になるのは避けられない」(財務省幹部)との見方が広がっている。国交省は4月に、国の直轄事業の労務単価を原則15%引き上げ、被災地の単価は21%アップする対策を打ち出した。

 しかし他の官庁や自治体の発注工事は対応が遅れている。
人手不足と人件費の上昇を前提に工事費を検討したり、工事の発注時期を、計画的に分散化したりする工夫が求められている。

 

地域医療に影響も 老朽化、耐震性…

 入札不調が続く国立病院機構は、建て替えが迫られる病院の老朽化問題に頭を悩ませている。
各地の担当者は「今の病棟はバリアフリーに対応していない。耐震性の問題もあるし…」と語り、地域医療への影響を懸念している。

 1960年代に建てられたある医療施設は、病棟の壁にひび割れが目につき、床に貼られた「外来」のテープもはがれかけて、ほとんど判読できない。1年近く入札が進まず、新病棟の完成は予定より遅れる見通しだ。

 建設費を抑えるため、病棟の規模縮小を検討する案も浮かんでいる。しかし担当者は「今から計画を見直すと、さらに時間がかかる」と悩んでいる。

 別の病院も着工が半年以上遅れる見込み。「長く入院している患者さんには、新病棟はしばらく待ってほしいと伝えた」という。

 国立病院機構本部の整備課も「患者のアメニティー(居心地)の観点から老朽化した病院の建て替えは必要だ」とみている。
しかし工事費用は個々の病院が負担するのが原則とされ、「落札予定価格を大きく引き上げるのは体力的に難しい」と対策に苦慮している。