軽症も深夜も安心受診 小児救急センター運用半年 疲弊する地域医療補う 

2013.12.02

軽症も深夜も安心受診 小児救急センター運用半年 疲弊する地域医療補う /静岡県
2013.12.01朝日新聞 



 県立こども病院(静岡市葵区)で、「いつでも、あらゆる患者を受け入れる」小児救急センターの運用が6月に始まり、間もなく半年を迎える。

疲弊する地域の小児救急医療を補い、親が安心して受診できる体制作りを目指す。

様々な患者と接し、社会に問題提起できる小児科の専門医を育てる狙いもある。


 10月中旬、日曜日の夜。
センターには、泣き叫ぶ子どもの声が響いていた。
肺炎の疑いのある2歳の男児が、診察室に入っただけでおびえ、暴れてしまう。
「ごめんね、ちょっとだけだから」。
看護師が声をかける傍らで、医師はタブレット端末を取りに走り、アンパンマンの動画を見せる。
「注意をそらすと、恐怖心も薄れる。
お母さんのストレスも違います」と、加藤寛幸センター長。

 この日、午前10時~深夜0時に訪れた患者は約20人。過呼吸になり言葉も出ない11歳の女児、「ミルクを飲んですぐにはいてしまう」という生後間もない乳児、肺炎の疑いのある4歳児。
症状も緊急性も様々だ。

 微熱がある程度の患者も、骨折で手術が必要な患者も、すべて受け入れるのがセンターの特徴。
こうした病院は、全国でも数施設しかないという。

 県内の小児救急医療は12地域ごとに体制が作られ、症状の軽い初期救急は当番の開業医や自治体の夜間救急医療センターで、入院が必要な重症患者は2次救急の病院で対応している。
こども病院も、静岡市の2次救急の当番を月10日ほど受け持つほか、さらに重い患者を診る3次救急も担っている。

 厚労省の調査によると、県内の小児科医は小児人口1万人あたり9・2人(2010年)。

00年の7・1人と比べると増えてはいるが、全国の9・4人を下回る。
医師が減って救急体制の維持が難しい地域もある。また、軽症でも2次救急病院で受診する患者もおり、現場に負担をかけている。
疲弊する地域の救急医療を補完する役割を担うのが、センターの狙いだ。

 「子どもは自分で症状を伝えることができないし、大人と比べて病状が急に悪くなる。
軽症でも救急を受診するのは、親が不安だから。いつでも信頼できる医療機関で診てくれるという選択肢があることが重要」と加藤さん。

 受け付けでは、看護師が年齢や症状を聞き取り、「すぐに診療が必要」から「2時間待てる」までの5段階で優先度を判断。
軽症の場合は長時間待つこともある。
2次救急の当番の日以外は、他の医療機関の紹介状がない軽症の患者は、特別初診料2620円がかかる。

 1日の平均受診者数は15人。6月に始めて以来、徐々に患者が増え、島田、藤枝、富士など近隣の市からも訪れているという。


 ●「専門医育てる場に」

 センターの医師は、昼は2人、夜勤が2人。
重症患者が重なれば慌ただしくなるが、比較的余裕がある体制だ。
赤ちゃんの負担を和らげるための措置を取るなど、従来は人手が足りず難しかった治療にも取り組む。
虐待が疑われる子どもについて児童相談所に情報提供し、保護につながったこともあった。

 仕事が休めず夜に救急外来に来るのは、親の身勝手ではなく、雇用の問題が背景にある場合もある。
軽症の患者も含めて診察することで、子育て環境の問題点も見えてくる。
「子どもを守る」という責務を果たすために、そんな専門医を育てたいというのが、加藤さんの思いだ。
「社会に問題提起することも、これからの小児科医の仕事。専門医を育て、日本の小児医療を変えていくような場にしたい」と話す。(仲村和代)


 ◆キーワード

 <県内の小児救急医療> 症状の重さに応じて3段階の受診体制になっている。
入院治療が必要な2次救急は、12地域に分け、輪番などで対応している。
ただ、不安を抱える親が、軽症でも2次救急病院を受診するケースが増えている。

 県は06年、夜間に専門家が対応する電話相談窓口(#8000)を設置。昨年度は約3万2千件の相談があった。うち、すぐに受診や119番通報が必要と助言したケースは、約2割にとどまったという。