記者の眼 医療職の雇用の「質」って何だろう?2013/12/12

2013.12.12

記者の眼
 
医療職の雇用の「質」って何だろう?2013/12/12

井上俊明=日経ヘルスケア 
 

厚生労働省は、2014年度から医療機関のスタッフの「雇用の質」の改善に本格的に取り組む考えだ。

今年8月の2014年度予算の概算要求で、その目玉として各都道府県ごとに設ける「医療勤務環境改善支援センター」(仮称)の設置費用など、約3億円を要求している。

 既に今年度から、勤務環境の改善に取り組む病院に、社会保険労務士や医業経営コンサルタントなどをアドバイザーとして派遣する事業をスタートさせた。

来年度は、こうしたスタッフを医療勤務環境改善支援センターに配置し、労務管理と経営の両面にわたって、ワンストップで個別の医療機関のニーズに応じた「勤務環境改善計画」の策定、実施、評価などをサポートする体制づくりを目指す。

 厚労省は、2011年度にも雇用の質の向上に取り組んだが、それは主に看護師を対象としたもの。

今回は、医師を含む全医療スタッフに対象を広げた。医療勤務環境改善支援センター事業の経費を、労働基準局と医政局という二つの局の予算で賄う計画となっている点も、同省の意欲の表れだ。

ワークライフバランス向上がメーン
 
ところで、雇用の「質」とは具体的に何を意味するのだろう。マンパワー不足の解消、すなわち雇用の「量」の確保とは一線を画した取り組みであるのは当然のこと。厚労省の資料では、ワークライフバランス(仕事と生活の調和)による離職の防止などを中心的な対策として捉えている。

 
例えば、毎年違う看護師を100人ずつ3年間雇用する場合と、同じ看護師を100人ずつ3年間雇用する場合とを比べると、雇用の量は変わらない。
しかし、勤続年数が増えることによる経験の蓄積を考慮すれば、3年間メンバーが変わらない方が、医療安全面では望ましいだろう。厚労省は、この点も雇用の「質」向上のメリットとして挙げている。

 時間外勤務の削減や短時間正職員制度の導入などによって、離職の防止が図られ、平均勤続年数が延長できれば、確かに雇用の「質」は改善されたといえるだろう。

 しかし、「質」を口にするのであれば、勤務環境改善やワークライフバランスだけでは、十分な対策とはいえないのではないだろうか。

仕事のやりがいや公平な人事考課など、もっと業務に直接かかわる部分の見直しも同時に実現してこそ、本当の意味で雇用の「質」が改善されたといえるはずだ。

 医療勤務環境改善支援センターを活用して雇用の「質」を改善しようとする医療機関には、そこまで視野に入れた取り組みを求めたい。

同センターに配属される予定の専門スタッフにも、それに応えられるだけの突っ込んだアドバイスを望みたいものだ。