[論点]超高齢社会の医療体制 総合診療 重要度増す

2013.11.27

[論点]超高齢社会の医療体制 総合診療 重要度増す 橋本信也氏(寄稿)
2013.11.26読売新聞



 超高齢社会に対応する医療体制には「総合診療」は不可欠であり、これを担うのが「総合診療医」である。
現在ではほとんどの地域中核病院や大学病院に「総合診療科」が設置されている。

 明治期より、ドイツ医学を踏襲してきた日本の医師は、病気を臓器別に診ることを長く学んできた。しかし戦後、米国医学によって患者を全人的に診る、プライマリーケアという新しい診療が知られるようになった。

どんな患者に対しても、臓器を問わず適切な初期対応が出来、地域や家庭に密着することを基本特性とし、医療のほか保健や福祉にも積極的に関与する診療領域である。

 プライマリーケアと総合診療は、ほぼ共通した概念だ。英語のprimaryには「初歩的」という意味もあるので、誤解されがちだが、むしろ「基本的」と訳すべきだろう。総合診療の「総合」も、臓器を問わず全人的に診る、という意味である。

 成人患者を対象とする医療は主に、救命・治癒・社会復帰を目指す「病院完結型医療」である。

しかし高齢者は複数の難治性・慢性疾患を持っていることが多いので、病気と共存しながら生活の質(QOL)の維持・向上を目指す医療が中心となる。

患者の住み慣れた地域や自宅で生活をしながら、地域社会や家族が支える「地域完結型医療」だ。

超高齢社会を迎えた今日、病院完結型医療とは違う角度の医療システムが求められるのは当然と言えよう。

 この地域完結型医療の中心的役割を果たすのが総合診療医である。

 今年8月にまとまった社会保障制度改革国民会議報告書「医療・介護分野の改革」の中でも、総合診療医が地域医療の中核として期待されている。

総合診療の重要性が認識されるようになった今、研修医や若い医師で総合診療医を志望する者は多い。心強いことだ。

 総合診療もまた、臓器を横断的に診る、人体を総合的に診る、という高度な専門性が求められる。

全人的医療は身体のみならず、心理的な面への配慮も必要であり、患者医師関係の倫理面や予防医学についての専門性も要求される。

超高齢社会を迎えたわが国では、在宅ケア・終末期ケア・緩和ケアなども、総合診療医の専門性の範疇(はんちゅう)に入って来る。

総合診療医は専門医の一つとして、認知されるようになった。

 厚生労働省は「専門医の在り方に関する検討会」を設置し、今年4月に報告書を発表した。

専門医の認定は従来のように学会が個別に行うのでなく、2017年度からは中立的な第三者機関が専門医を養成することになった。

「総合診療医」も専門医として、認定対象の一つとなる。これにより、患者の受療行動パターンにも変化が表れることを期待したい。

 今後の医療提供体制において、病院側も開業医側も、総合診療医がまず診察して、臓器別専門診療医へとつなぐゲートキーパー的機能を持つことを求めている。

それは医療費の節減のみならず、臓器別専門診療医の負担軽減にもつながることだろう。


 ◇はしもと・のぶや 医療教育情報センター理事長。慈恵医大教授、日本医学教育学会副会長、日本医師会常任理事など歴任。80歳。