静清合併10年:70万都市の今/下 人口減で経営苦しむ診療所 /静岡

2013.11.24

静清合併10年:70万都市の今/下 人口減で経営苦しむ診療所 /静岡
2013.11.23 毎日新聞


 ◇山間部の医療維持課題

 「診療を続けていくのは非常に厳しい」。
静岡市葵区の梅ケ島診療所の医師、滝浪慎介さん(51)は悲痛な表情を見せる。
旧梅ケ島村で生まれ、父も約20年間、同診療所に務めた縁で、公設民営のこの診療所で2002年から梅ケ島地区の医療を一人で担う。

 同地区は約700人いた人口がこの10年で約570人まで落ち込んだ。
高齢化も進み、患者は75歳以上が7割を占め、65歳未満は1割。
1日に訪れる15人ほどの患者を診察するだけでは、診療所の経営が成り立たない。

 梅ケ島のような中山間地は市の総面積(約1412平方キロメートル)の8割ほどを占める。

市は、公共交通機関が乏しい中山間地の医療体制を維持するため、7カ所の診療所を設けたが、11年度末に医師の高齢化を理由に1カ所を閉鎖。
今年度から葵区にある大河内診療所の専属医師が不在となり、滝浪さんが兼務する状況だ。

 合併によって、市街地では夜間救急体制の運用が強化された側面もある。今年4月、静岡市急病センターは、従来あった葵区城東町から、清水区側の葵区柚木に移転。
10年前から医師の高齢化で主に小児科の夜間救急が脆弱(ぜいじゃく)な体制だった清水区の患者にも対応できるようになった。

 だが、品川―熱海間(直線で約80キロ)と同距離の太平洋側から山梨県境・南アルプスまでを抱える同市にとって、山間部の医療体制をどう維持するかは重い課題だ。

そこに全国的な医師不足の悩みも加わる。
市は「診療所には今年度から10万円増やして月30万円を補助している」として、新たな支援策や施設整備の予定は現段階で考えていないという。

 梅ケ島診療所を訪れる患者にとって、医師の滝浪さんは「生命線」だ。

「厳しい状況なのは見ていて分かっている。

それでも近くにいてもらわないと困る」。
近くに住む市川重平さん(86)は、診察の度に頭が上がらない思いを新たにする。

 滝浪さんは週末、アルバイトとして市内の医療専門学校で教壇にも立つ。

「医師としてもっと違う生き方もある」と何度も思ったが、患者の顔を見ると、地域医療を担うのは自分しかいない思ってしまう。
「どこに住んでいても医療を受ける権利はあるんですから」

     ◇

 静岡市は05年、14番目の政令市に移行した。
合併を繰り返した後発政令市は、都市と山村が混在する「日本の縮図」。
行政課題が多岐にわたり、強化された権限と財源が住民のメリットになったかが見えにくい。
同市の真価は、合併10年以降も問われ続けることになる。【山本佳孝】