国家戦略としての在宅医療 東大高齢社会総合研、国際シンポ 多職種連携がキーワード

2013.11.22

国家戦略としての在宅医療 東大高齢社会総合研、国際シンポ 多職種連携がキーワード
2013.11.22 環境新聞社



 東京大学高齢社会総合研究機構は17日、「国家戦略としての在宅医療シンポジウム」を開催、同機構が柏市、市医師会と共同で取り組んでいる柏プロジェクトの進捗状況を報告した。
海外からは、「家庭医」としてプライマリケアの第一線で取り組む医師が参加、報告した。

 2010年に柏プロジェクトがスタートした時点では、訪問診療をする在宅医が少なく、担い手を増やすことが大きな課題になった。
そのため、在宅医療の勉強会、多職種連携を学ぶ研修を試行し、医師の意識改革を行ってきた。
その一方で、主治医の負担軽減のために、「副主治医」制を導入、情報共有システムの導入も行っている。

 2011年度からは研修に参加した医師5名が在宅医療を開始。発表者の古田達之医師もその一人だ。

 「研修を受けたことで、構えずに訪問診療に取り組めるようになった。在宅の現場を知ることで、外来でも生活に踏み込んだ診療ができるようになった」と感想を話した。

古田医師は、プロジェクトを受け、医師会内に発足したプライマリケア委員会の担当理事だ。
同委員会で11月から取り組みを始めるのが、医学生の地域医療実習だ。機構とプログラムを練り上げた。「医師会会員にとっても新たな学びになる」とした。

 日本では、往診=在宅医療と捉えられるが、外来を通じて訪問も行う「家庭医」が地域医療を総合的に担っているヨーロッパの国々から見ると不思議かもしれない。税により医療が供給されているイギリスの家庭医は有名だ。

 「プライマリ・ケアのプライマリは、”初期の”という意味ではなく、”主要な”という意味で使われている」

 イギリスの医師免許を持ち、現地で「家庭医」として勤務している澤憲明医師が報告した。

家庭医を通さなければ、病院にはかかれない仕組みが徹底しており、患者の90%が家庭医によるプライマリケアで対応しているが、医療コスト全体の9%に過ぎないという。

 近年の医療改革が功を奏し、患者満足度も高くなり、家庭医の地位も向上している。
英国の家庭医は、内科、外科などの区別はなく全科診療。病気だけでなく、家族関係についても、何でも相談に乗るという。
それを可能にしているのが、多職種連携。「社会的処方」として、医師が生活に積極的にかかわることも推奨されているという。

 医療制度の「門番」としての役割でありながら、患者中心の医療が提供できている背景に「医療面接」の技法があるという話が興味深かった。

 「風邪だから抗生物質が欲しいという患者の欲求に応えるのは消費者中心。一見、優しいように見えて、患者にとって安全とは言えない。

患者の話を聞き、こちらからは医療情報を提供しながら二人三脚で意思決定をしていくやり方が患者中心。学校で体系的に学ぶが、難しく、面接技法が専門医試験に合格できるレベルに達するのに3年かかった」

 医療資源に制限がある一方で、社会の期待も高まるという矛盾が深まるほど効果を発揮すると考えられていると説明した。

 オランダでも家庭医を中心とした多職種チームがプライマリケアを支えている。
「ZWIP」と呼ばれる情報共有システムで、患者を中心に情報交換していることなどが報告された。

 「高齢化により亡くなる人が増えるから『在宅』ではない。ここまでの長寿を実現させた医療の発展形として多職種連携を基礎とした在宅医療学を構築していきたい」と同機構の辻哲夫特任教授は締めくくった。