[教えて!yomiDr.]医療情報の電子化 患者の症状 地域で共有

2013.11.18

[教えて!yomiDr.]医療情報の電子化 患者の症状 地域で共有
2013.11.17 読売新聞



 治療した記録や、処方薬の情報を電子データとして医療機関の間でやりとりしたり、データベースに保存して分析したりする動きが広がっています。電子化にはどんなメリットがあるのでしょうか。

 --どんな医療情報が電子化されているのですか。

 「病院、診療所、薬局が医療費の請求に使う診療報酬明細書(レセプト)が最も件数が多い電子情報です。

1996年度には年間約7億件のレセプトが紙に書かれ、積み上げると富士山より高くなるといわれていました。それらの約9割が現在、電子化されています」

 「レセプトを審査する社会保険診療報酬支払基金では、コンピューター入力の省力化で、職員数が最も多い2001年度時に比べ、約1700人減りました」

 --データは蓄積、保存されているのですか。

 「レセプトの電子情報は、国が09年から『ナショナル・データベース』として、全て保存しています。

同じ診療報酬関連では、DPC(診断群分類)データベースもあり、入院治療に関してより詳しいデータを集めています。
登録する段階で、患者の名前は分からないようになっています」

 --どう活用されていますか。

 「データ集計で、診療行為ごとの回数や処方薬の量などがほぼ全数分かります。
これらのデータは、国、都道府県が医療費の伸びを抑える計画作りに使うことになっています。
研究者にも活用されています。最近の研究では、統合失調症の入院患者の6割以上に、3種類以上の抗精神病薬が投与されているという不適切な実態が分かりました」

 --国以外が運営するデータベースもありますか。

 「大規模なものでは、心臓や呼吸器、消化器などの手術を登録する『ナショナル・クリニカル・データベース』があります。
日本外科学会などが設置した法人組織の運営で、11年から年間120万件の情報が蓄積されています。
今月から、胃がんや食道がんなどの手術成績を病院に示しています。自分たちの病院や医師の成績がどの程度の位置にあるか知り、技量の向上をはかってもらう狙いです」

 --ほかに、どんな分野で電子化が進んでいますか。

 「医師が書くカルテ(診療録)です。
患者の症状など詳しい情報が入力されています。電子カルテは、400床以上の大規模な病院の約半数が使っています。
近年、病院の電子カルテを診療所の医師が閲覧できるシステムを大手情報通信会社が販売し、患者の情報を共有するネットワークが一部の地域で作られています。
国のまとめでは、160の地域でネットワークが稼働しています」

 --ネットワーク化を推進する必要はありますか。http://saitama-hospital.jp/med-personnel/carna_virtual.html

 「病院、診療所が役割分担し、住民の健康を守るのが地域医療の理想的な姿です。
医療費の伸びを抑える効果も期待できます。国は現在、病院、診療所で普及しているレセプトコンピューターを使ってのネット構築を検討しています」

 --情報漏えいの危険が高まりませんか。

 「医療機関では今でも郵便やファクスなどで、患者情報の交換を日常的に行っていますが、ネット化されると、大量の情報を閲覧できるため、ネットに接続できる人や見られる情報を限定する必要があります。
将来的には、医療に関する情報保護法などを制定し、不適切な利用には罰則を科すことなどを検討する必要もあるでしょう」

 --患者にとって電子化は良いことなのでしょうか。

 「目立った成果はまだありませんが、今後、長年の受診や処方薬を一覧できる『生涯電子カルテ』が実現するかもしれません。個人の健康づくりや治療法の選択に役立つことが期待されます」(渡辺理雄)


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