(いしかわフォーカス)加賀市新病院、実現は? 全室個室・差額ベッド代不要/石川県

2013.11.10

(いしかわフォーカス)加賀市新病院、実現は? 全室個室・差額ベッド代不要/石川県
2013.11.09 朝日新聞



 「全室個室、差額ベッド代は不要」。
加賀市が2市立病院を統合する新病院計画=キーワード=でこんな方針を打ち出し、今年8月に着工した。
だが、先月30日に就任した宮元陸・新市長が、第三者機関を設けて採算面の検証をする意向を明らかにした。計画は実現するのだろうか。


 ●プライバシー確保へ 年8600万円減収試算も

 個室をはじめ、設備の整った病室に入院すると、患者は保険外の差額ベッド代を自己負担する。
厚生労働省は、地方公共団体が運営する医療機関については、差額ベッド代を徴収する病床を全体の3割以下とし、7割は無料にするよう定めている。

 加賀市が計画で全個室にするのは、プライバシーが確保された環境を特別な負担なしに整えることが時代のニーズととらえるからだ。

 小松市民病院では、大部屋が満室のために個室に移ってもらった患者からも、承諾書なしに差額ベッド代をとっていたトラブルが起きた。こうした事務手続きの簡素化もできる。

 医師ら12人でつくる「市医療提供体制推進委員会」は、差額ベッド代を徴収しないと年間8600万円の減収になるという試算をまとめた。


 ●減床で稼働率90%に 開業7年目で黒字化見込む

 減収分を補うため、市は病床の稼働率を上げ、全病室を約17平方メートル、トイレ・シャワー付きに統一することで経費を節減できるとしている。

 現在の病床稼働率(2012年12月時点)は2病院ともに70%台だが、統合後は125床減るため、稼働率は90%に上げられるという。
市は、開業1年目は2億8千万円の赤字だが、医療活動の本業部分を示す医業損益は7年目には黒字化できると見込む。

 出費の大半を占める職員給与費は35億円と試算するが、適正職員数を明らかにしておらず、流動的な部分もある。

 職員数は、市民病院が286人(3月時点)、山中温泉医療センターが201人(2月時点)。
市は全員の雇用を確保する方針だが、すべて病院職員になるかは未定という。


 ●「民間圧迫」懸念の声 公的病院、優位さで突出

 全国自治体病院協議会(東京)によると、近年は患者の経済的事情で、個室でも差額ベッド代を徴収しない小規模な自治体病院は増えてきている。
それでも、担当者は「自治体病院の全室個室無料化は聞いたことがない」という。

 民間からは懸念の声も漏れる。南加賀の病院長は「理想的だが、民間では考えられない」と話す。

 さらに「地域医療は自治体と民間が役割を補完しあって成り立っている。
税制上や人材確保で優位な公的病院が突出し、ほかの医療機関を圧迫するのではないか」と指摘する。

 (福田純也)


 ◆キーワード

 <加賀市の統合新病院計画> 加賀市民病院と山中温泉医療センターの2病院を統合し、JR加賀温泉駅前の5万1千平方メートルの敷地に新築する計画。
全15診療科で計300床。高度治療室を除く一般病床290床を個室にして差額ベッド代を徴収しない。
2016年4月開業予定。総事業費は102億1500万円。

 宮元市長は、第三者機関の検証結果次第で「全室個室、差額ベッド代なし」の変更も示唆している。
ただ、既に実施設計に入っており、建物構造など大幅な手直しは現実的でないとみられる。


 ■県内の主な自治体病院の差額ベッド代

 病院名      全病床数 うち差額代徴収病床 1日当たりの徴収額(円)

 加賀市民病院     226     56     1575~1万2600

 山中温泉医療センター 199     15     3150~7350


 県立中央病院     662    143     3250~1万5750

 小松市民病院     364     88     2620~1万2600

 金沢市立病院     311     57     3990~7875


 ※加賀市まとめ(6月現在)