医学部受験と聞いたら9割の親が抱く疑問集

2013.11.09

医学部受験と聞いたら9割の親が抱く疑問集
2013.12.01 プレジデント

東大より難しいの?

 医学部には入試科目に小論文や面接がある場合が多く、科目が違うため、難易度は一概に比較できないが、まずは偏差値で比べよう。

旧帝大や都市にある大学の医学部の2次試験のレベルは東大(理科一・二類)より難しい大学があるが、一部の地方の国公立大医学部は東大(同)より入学しやすいといえる、と代々木ゼミナールの鈴木氏は言う。

「東大の理一と理二の偏差値は順に69と68。そして大阪大70、東京医科歯科大と東北大、九州大は71。

名古屋大69、千葉大は68と東大と同じレベル。
一方、山形大65、愛媛大66など一部の地方大医学部では東大よりも4ポイント前後下がります。
東大と医学部どちらも高いレベルの話ですが」(※偏差値は代々木ゼミナール算出の数値)

 入試倍率では国公立大医学部平均は2012年度で5・5倍。対して、東大理一で2・5倍、理二で3・7倍。倍率でみれば競争が厳しいのは東大よりも医学部だといえる。


浪人生はどのくらいいる?不利になる?

 円グラフの通り国公立大と私立大ともに入学者の浪人生の割合は過半数。
ただし、10年前と比べると国公立大は現役生が10ポイントアップしており、現役生が勢力を増している。その理由を鈴木氏は次のように解説する。

「地元出身者を出願条件にしたり、将来、地域医療に従事することを条件とした推薦枠である“地域枠”が増えたことで、地方大学医学部に地元高校から出願しやすくなったことが関係しているでしょう。

ただし、大学によって(現浪の)割り合には差があります。データを公表している中で現役生が多いのは、東大、横浜市立大、浜松医科大、神戸大など。逆に浪人生が多いのは、奈良県立医科大、和歌山県立医科大、熊本大、琉球大などです」

 では浪人生は受験には不利か。

「合格率は現役と1浪、2浪ではそれほど差はありませんが、3浪以上は次第に低くなります。
勉強のモチベーションを維持するのが難しいということが最大のネックでしょう」(同)

 医学部受験を何度か繰り返した生徒は、学科試験はできて当たり前と思う大学もあるそうだ。
駿台予備学校市谷校舎の校舎長・塚原氏は面接のことを指摘する。

「2次(個別)試験の面接で、医療に従事するに値する倫理観や患者とのコミュニケーション力、社会教養などを、現役生よりも厳しくチェックされることが多いようです」

 ある国立大では、「2浪しても医学部へ行きたいの?」と答えにくい質問をされるケースもあったとか。浪人生はそんな圧迫面接に耐えねばならない。


難しい問題が出るの?

 国公立大の2次試験ではとりわけ難しい問題ばかりが出るわけではない。
ただ、いかにケアレスミスをしないかが大事だと駿台の塚原氏は言う。
ほとんどが記述式で、基本的な読解・思考・表現・情報処理力があるか否かが試される。

「最難関の東大でも、超難問というより、学習指導要領からは逸脱しない出題であり、高校で学んだ事柄の本質をつなぎあわせて思考しないと解けないような問題が多いです」

 その点、私立大の出題方式はマークシート形式や記述式などさまざま。
最難関の慶應義塾大は記述式で出題はややマニアックになることもあり、東大に合格していても不合格になる受験生もいる。


女子は少数派?

 下の円グラフの通り、女子の入学者の割合は医学部全体で33%となっている。
ちなみに大学全体(全学部合計)の女子学生の割合は44%。理学部では28%、農学部では45%だ。

「横浜市立大、福井大、島根大、佐賀大などの医学部では女子が4割以上と平均より多いですが、一部の旧帝大(北海道大、京都大、九州大など)や、私立の上位校(慶應義塾大、昭和大、東京慈恵会医科大)の入学者の女子は1~2割台で少数派です」(鈴木氏)

 鈴木氏は、難関大学医学部では数学の入試問題が極めて難しいことが多く、理数系を得意とする男子が有利ということから、「男多女少」化が起きているとみている。
ただ、理系女子(リケジョ)ブームで男女の勢力図に今後変化が出てくる可能性はあるだろう。


面接・小論文では何を見ている?

 面接試験には個人・集団・討論などの形式があり、ほとんどの医学部の2次試験で実施している。

「面接を重視するのが最近の受験トレンドです。チェックポイントは、憧れでなく医師としての職業観があるかどうか。
倫理観やコミュニケーション力など医師としての適性のほか、なぜその大学に入学したいかという意欲を観察されます。
出身県外の医学部を受験する場合は、その地域の医療体制や問題点などを下調べする必要があるでしょう」(駿台・塚原氏)

 医学部の面接は就職活動の面接と似ているという。
千葉大では、担当者を代えて10分の面接を3回実施するほどの念の入れようだ。
現役生は制服だが、浪人生は面接にスーツ着用で行くのが当たり前とか。
駿台でも、成績は良かったが面接がネックになり、3度目の挑戦でようやく合格した生徒がいたそうだ。

 一方、小論文も同じように重要視する大学が多い。
例えば、「自由診療と保険診療の問題点を千字以内で書け」など、日ごろから新聞や本を読み社会教養を高め、医療・医学への関心や問題意識を持つなど医師になるための準備をしているかが問われるのだ。


何校併願できるの?

 国公立大学の場合、受験できるのは前期と後期から1校ずつの最大2校のみ。
対して、私立大学はスケジュールと体力などが許す限り、何校でも受けることができる。
実際、受験日も例年、各校が重ならないよう配慮しているとみられ、“受け入れ態勢”は万全だ。
しかし、多くの受験生は10校も20校も併願するわけではないという。

「平均すれば、1人あたり3~5校の私立を併願する人が多いのではないでしょうか」(鈴木氏)

 ちなみに受験料は、国立大なら1・7万円。私立大は5万円超のことも珍しくはない。


医学部のAO入試は特殊?

 AO(アドミッション・オフィス)入試とは、一般入試とは違い面接や志望理由書などを中心にした入試形態のことで、大学入試では広く実施されている。
だが、医学部に関しては事情が少々異なる。

「ほかの学部のAO入試は人物重視の傾向が強いですが、医学部は人物に加えて、センター試験の成績をみる大学がほとんど」(鈴木氏)

 国公立大の医学部で、14年度AO入試を実施するのは8校で、うち7校がセンター試験が必須。
ただし全入学定員の4%であり、AO入試は少数派だ。私立大では、獨協医大と金沢医大の2校のみAO入試を行っている。

 他学部のAO入試は秋に実施され、年内には合格発表があるのが一般的。
医学部の場合は、センター試験の成績を見るため、センター試験後に個別試験を実施する大学もあり、合格発表は国公立大の2次試験前(2月中旬)という大学が多い。


医学部受験はいつから準備?

 どの大学の医学部を受験するにせよ、難関であることに変わりはない。ではいつから勉強を開始すればいいのだろうか。
駿台・塚原氏によれば、現役合格を目指すなら遅くとも高校2年の夏からは受験に備えたほうがいいという。

「医学部の試験問題は受験科目数が多く、面接、小論文と多岐にわたるため、短期間で一気にこなそうとしても、なかなか合格までの力は付きません。
時間をかけてコツコツ積み上げていくことです」

 高校3年から医学部を目指すのでは遅いだろうか。代ゼミ・鈴木氏は語る。

「高3からでも、もともと基礎学力があれば合格は不可能ではないです。しかし学力以外の、医師としての適性(コミュニケーション力、思考力、協調性、人間性、倫理観、責任感など)が備わっていないと厳しいでしょう。
理想としては高校1年くらいから受験を意識した勉強を始めるといいでしょう」


私立中高一貫校のほうが有利?

「医学部受験の決め手となる科目は、合否の差が出やすい数学でしょうか」

 とは、代ゼミ・鈴木氏。その意味で、数学など理数系科目を先取り学習(高校3年間で習う範囲を高校2年までに終わらせてしまうこと)する私立中高一貫校は有利といえる。さらに一貫校のメリットは、その環境だ。

「医学部志望の子が多ければ、互いに切磋琢磨できる雰囲気が自然とできあがっている点では有利でしょう」(同)

 さらに、例年、医学部進学者が多い一貫校では、医学部受験対策の授業をしたり現役医師を招待してセミナーを開いたりと、生徒のモチベーションを高めるような工夫をしている学校もある。


お金持ちではないけど大丈夫?

 親が医師という受験生は多いが、ふつうのビジネスマン家庭の受験生も増えている
。国公立大なら6年間で学費は350万円程度。卒業後に地域医療に貢献する代わりに奨学金がもらえる「地域枠」も広がっており、一般家庭でも手が届く。

「最近では私立大でも、6年間の学費が2千万円台前半で、子供が自宅から通う場合なら、ビジネスマン家庭でも手が届くようになってきた」と駿台・塚原氏は言う。とはいっても一般家庭では、なかなか難しいかもしれない。私大では特待生制度を実施するケースもあるが、いずれも募集枠はごくわずかだ。


医学部に行けば全員医者になれる?

 いくら医学部に入り6年間勉強しても、厚生労働省の医師国家試験に合格しなければ医師にはなれない。
その試験内容は膨大で猛烈な勉強が不可欠ということだが、大学によってその医師国家試験の合格率に差はあるのか。

「合格率は全体で90%前後です。国公立大ではあまり差はありませんが、私立大は、大学によって差があり、90%を割るケースもあります」(鈴木氏)

 私立大の場合は入試難易度と国家試験の合格率が連動する傾向があるという。ごく少数だが、研究の道に進むなどの理由で、国家試験を受けないで卒業する学生もいるそうだ。


入学しても留年が多いって本当?

 厳しい受験をくぐりぬけ、無事に医学部に入学しても難関が待ち受けているのは確か。
大学4年生までの基礎教養課程を終えると、5、6年生では病院実習を勉強する課程に。
だが5年生になるには試験(共用試験)があり、クリアしないと進級ができない。

「そして医師国家試験を受験するためには、大学の卒業試験に合格しなければならない。これに合格しないと、国試留年です」(鈴木氏)

 近年、地域枠などで推薦入試枠が増えたため、医学生の学力低下が不安視されているという。

「一般入試では国公立の医学部にはセンター試験で85~90%得点しないと合格できないのですが、推薦枠であれば80%を切っても入学できることもあります。
仮に推薦枠などで一般入試より多少楽に入学できたからといって、入学後の勉強は受験勉強を超越したハードなものです。
医学部受験生は医師としての資質を磨き学ぶ覚悟をしっかり持ってほしいと思います」(駿台・塚原氏)


手先が器用なほうがいいの?体力、視力などは?

 もちろん、受験で「あなたは不器用そうだから、不合格」と言われることはない。面接などでも手先の器用さを問われることはないが……。

「器用に越したことはないでしょう。特に、外科医は細かな作業を手早く正確にする素質があったほうが向いているでしょう」(鈴木氏)

 体力や視力はどうか。入試では身体能力は基本的に関係ないが、面接であまりにひ弱な印象を与えるとマイナスとなるリスクはある。そして防衛医科大だけは身体チェックがある。

「体重、身長測定や視力検査があります。基準値がありますが、基準を少し下回る程度ならOKとなることもあるようです」(同)