年間12万人の戦い!「医学部受験」丸わかりデータ集

2013.11.01

年間12万人の戦い!「医学部受験」丸わかりデータ集
2013.12.01 プレジデント 


全体志願者数 空前の医学部受験ブーム!“定員増”でも“難化”

 今春の大学受験で東京大学を志望する地方の受験者が減ったことをご存じだろうか。
理由のひとつは、国公立大医学部志望者の増加だと受験関係者は口をそろえる。
つまり、かつてなら東大理一、二(おもに工学部や理学部に進学する理科一類、おもに農学部や理学部に進学する理科二類のこと)などを目指した成績優秀な生徒が、地元の国公立大学医学部に進学するケースが増えたのだ。

 同じ理系学部でも、医学部へ。
そんな医学部受験ブームが始まったのは10年以上前からだと代々木ゼミナール医学部情報室の鈴木誠氏は言う。

「私立医学部を中心に志願者が増えはじめました。
医学部の入学定員増が人気に拍車をかけている傾向が見られます」

 医学部進学専門校舎として知られる駿台予備学校市谷校舎の校舎長・塚原慶一郎氏も医学部受験ブームの理由として定員増をあげる。

「各地域の医師不足解消のため、医学部の定員をここ数年で増やしました。
07年度に国公私立計で約7600人だった定員は、13年度には9000人を超えたのです」

 国公立大学医学部の志願者数は、それまで1万7000人台で推移していたのが、ここ3年で2万人前後に増加した。
なぜ今の受験生に医学部が人気なのだろうか。

「都会の難関大学を卒業した後、地元で就職しようとしても、専門を生かしたい理系出身者にとってはその受け皿となる企業や仕事は少ないのです。
また、企業があっても、ここ数年は業績の悪化で研究職での就職は安定感に欠ける。そうなると医師になるという選択肢が出てくるのです」(大学通信の情報調査・編集部ゼネラルマネジャー・安田賢治氏)

 さらに、「地域枠(※)」推薦も登場。これは卒業後、地域医療に従事することを出願条件とした地元(および特定地域)出身者のための推薦入試の枠を指し、一般入試よりも入りやすい傾向がある。
定員が05年度は64人だったのが、13年度は1400人台になったのだ。

「定員が増加したからといって志願者も増加しているので、一概に合格しやすくなったとはいえません。
国公立大も私立大も医学部の偏差値は上がっており、難化しています。ただ、地方在住の受験生のチャンスは広がったといえるでしょう」(前出・塚原氏)


難易度 古くからある大学ほど偏差値が高い傾向あり

 将来は医者になれるならばどこの医学部に入っても同じ、と思いきやそうではない。
医学部は設立の経緯で4グループに分類され、時の経過で薄らいだとはいえ、医学部の入学者に求めることが違うという。

 国公立大の場合、東大・京大を含む「旧帝国大学」、千葉大などの「旧制医科大学」、群馬大などの「旧制医学専門学校」、筑波大などの「新設医学部」がそれだ(上表参照)。

「同じ医学部でも、設立の経緯により求める学生像が異なります。
例えば、旧帝国大系は伝統的に基礎研究・教育機関の側面が強く、研究ができる医師を育てようとしています。旧制医科大学系は、研究にも力を入れているが、患者を治療する臨床にも力を入れる傾向があります。
一方、医療の地域格差解消を目的に1県1医大を目指して1970年代にできた新設医学部系では地域医療を支える臨床医を育てようとする傾向があります」(塚原氏)

 私立大にも「御三家」と呼ばれる慶應義塾大、東京慈恵会医大、日本医大を筆頭に四つの分類がある。左表で色分けした通りだ。国公立大、私立大ともグループによって難易度も異なる。簡単に言えば、歴史のある大学ほど合格ライン(偏差値やセンター試験の得点率)が高い傾向だが、最近では、一部で変動が起きている。

「国公立大では東京医科歯科大の難易度が東大・京大・大阪大に迫る勢いでアップしています。
ハーバード大学型の教育カリキュラムを取り入れるなどで医療研究者を育てようとしています。
新設医学部では筑波大も難易度が上がっています。
西日本では神戸大や広島大が難化しています。私立大では、東京慈恵会医科大や、学費を大幅に値下げした順天堂大の難易度が上がっています」(同)

 なお、国公立大では入試の配点によっても、その大学のポリシーが想定できるという。
一般入試では、1次試験でセンター試験を課し、2次試験に大学独自の問題(数学、理科、英語、国語などの科目と小論文や面接)を課す。その配点比率は各大学が決める。

「センター試験に比べて2次試験の比率が高く、重視しているのは、旧帝大。逆に、センター試験の割合が高く、2次試験の中で学科試験よりも面接・小論文の配点比率が高いのは新設大学や旧制医学専門学校に多くみられます。
選抜方法で、現在その大学が育てようとしている医師像が推測できるのです」(同)

 たとえば旧帝大系の東大理三ではセンター試験1に対し2次試験は4。一方、旧制医学専門学校系の鳥取大の前期試験では、センター試験が3に対し、2次試験が2。2次試験のうち3分の1に面接の配点があり、面接の割合が高い。


入試倍率 偏差値が低いと倍率が上がるのは本当?

 約52倍! 国公立大で最も志願倍率が高かったのは岐阜大(後期)だった(62ページ右表)。

「後期試験は、実施している大学が少ないうえ、募集人員も少ない大学がほとんどのため、高倍率になります。また倍率は、試験科目とも関連しています。
2次試験では面接や小論文を重視する大学が多いのですが、岐阜大は2次で英語、数学、理科2科目だけで受験できます。小論文や面接より学科試験のほうが得点が読みやすいので、受験生が集まりやすかったのでしょう」(塚原氏)

 ただし岐阜大学は14年度入試よりセンター試験の点数による選抜を厳しくし面接も実施するため、倍率は下がると見られる。
一般に国公立大の医学部では比較的偏差値が低めの大学は倍率が高くなり、偏差値が高い大学は倍率が低くなる傾向がある。

 次は学費(62ページ左表)を見ていこう。私立大医学部の場合、学費は偏差値と相関関係がある。伝統のある慶應義塾大、東京慈恵会医大などは学費が割安であり、国公立大学志望者の併願も多く、偏差値は高い。

「最近は順天堂大や昭和大が学費を値下げし、受験者数を増やしています」(代ゼミ・鈴木氏)

 6年間の学費が大幅に下がるとぐんと倍率が上がり、偏差値も上がるという。帝京大は6年間で約5千万円と高額だが、14年度入学生より学費を1170万円下げる。

 慶應義塾大、東海大……。私立医学部では高校からエスカレーター式に医学部へ進学するルートはあるにはあるが、狭き門だ。

「高校内でもかなりの成績上位者でないと、医学部への希望は通りません」と、前出・安田氏は語る。ただし、岡山県の川崎医科大学附属高校は、適性テストなどをクリアすれば川崎医科大への進学が可能だ。9割が進学したという。

 他方、医師不足が問題になっている昨今、医学部新設の噂が絶えない。医学部新設は大学側には研究の幅を広げるというメリットがある。しかし、学部の新設や定員の増減には国の認可が必要であり、医学部は79年に設置された琉球大学を最後に新設されていない。

「日本医師会が医師を増やすと患者の取り合いになるとの考えで新設には反対。厚生労働省や文部科学省がゴーサインを出すのをためらっている側面もあります」(同)

 表のように新設の希望は多数あり、特区に限り新設を認める動きもある(13年9月時点)が、国が許可を出すまでは実現しないのだ。


医学部合格高校 西の私立中高一貫校が目立つ

 医学部に強い高校はほとんどが私立の中高一貫校だ。それも上位には関西エリアなど西日本の学校が名を連ねている。

 大阪の女子中高一貫校・四天王寺高校などは、東大・京大への進学者よりも医学部進学者が多い。こうした現象の背景にあるのは、地方に理系のトップの就職先がないということ以外に、「国立大学理系学部(工学部、農学部など)で、大学院へ行くケースが増え、それなら同じ6年間の医学部に進学したほうが将来的に有利と考える受験生が増えたのではないか」(安田氏)という意見もある。

プレジデント社