知と技の空間 筑波大学40年(3) 人気集める付属病院

2013.11.01

知と技の空間 筑波大学40年(3) 人気集める付属病院
2013.10.31 茨城新聞



■研修医獲得は全国4位

「焦るな。力を抜いて」。
顕微鏡をのぞく医大生に、教官の山本哲哉講師が優しく声を掛けた。

ガーゼの升目に針を通す縫合練習。
糸の太さは肉眼でかろうじて見えるほど。
わずかな空気の揺れで糸が浮く。神経を集中させ、ゆっくり糸を通し、結び目を作った。

9月のある晩。医学教育用の高機能機器がそろった大学病院の訓練室に、脳神経外科で実習中の筑波大生らが集まった。年長の後期研修医も縫合のこつを熱心にアドバイスする。

「先輩が後輩の面倒を良く見る屋根瓦方式がここの教育特色」と鶴田和太郎講師。
「よし、OK」。そう言われて緊張が解けた医学類5年の小沢佑さんは「難しかった」と頬を緩めた。

手厚い指導に充実した設備環境。
2カ月の院外研修で来ていた初期研修医の男性は「手術室も最先端。
質の高い脳外科研修が受けられている」と教えてくれた。

筑波大付属病院(つくば市)が近年、若手医師の初期臨床研修先として人気を集めている。
2年間の研修が義務化された2004年度以降、毎年60~70人を確保。
大学病院の中で常に上位で、12年度の76人は全国4位。県全体で見ても半数以上を占め存在感を示す。

「国立大の卒業生が自分の付属病院に残るのは年平均2割だが、4割が残る点も筑波の特徴。
12年度の49人は国立大で全国2位の良さ」と話すのは総合臨床教育センターの前野哲博部長。
選択度の高い研修プログラムが支持される一番の理由で、大学病院で不足しがちな地域医療教育を充実。
市中病院での研修を最大16カ月確保し、地域で総合診療能力を身に付けたい人の要望に応える。

地域医療を支える人材育成方針は、水戸協同病院(水戸市)に09年開設したサテライト拠点という新しい発想も生んだ。
研修医が市中病院でも満足な教育が受けられるようにと、公募採用した教員医師11人を水戸に配置。
これは医師不足対策としても全国の注目を集め、今や医師が3人以上のサテライトは県内6カ所に拡大。
研修医に様々な症例を経験してもらっている。

「研修医はより良い環境があると県外にも移る。
今は教育環境をじっくり整えること」と前野部長。
確実に定着させるには、専門医を目指す後期研修のプログラム強化が今後欠かせないという。

人口10万人当たりの医師数が全国ワースト2位の本県。県保健福祉部の土井幹雄部長は「教育と診療が一体でできる大学の力は大きい。地域医療を行う信念を持った医師の育成は、医師不足地域の対策につながる」と期待した。

★筑波大付属病院

1976年開院。高度な先端医療が有名で、昨年末に完成した「けやき棟」には術中MRI(磁気共鳴画像装置)やハイブリット手術室など最新設備が備わる。病床数800床