産科補償制度 事故対象者の拡大、議論を

2013.10.18

(記者有論)産科補償制度 事故対象者の拡大、議論を
朝日新聞 10・18

 
お産の事故で重い脳性まひになった子どもに補償金を支払う「産科医療補償制度」。

多額の剰余金が生じていることを課題のひとつに、厚生労働省の審議会などで見直しが議論されている。
 
医師らに過失があってもなくても、対象者に計3千万円が支払われる。
産科医不足の一因は訴訟リスクの高さにあると考えた国が2009年につくった。
原因を第三者が分析し、再発防止につなげることも重要な目的の一つだ。
 
健康保険から妊婦に支給される出産育児一時金が3万円増額されて掛け金となり、年間約300億円が集まる。

ところが9月時点で支払われていない補償金は、最初の年に生まれた子の分だけで約200億円に上る。

掛け金の減額を求める声もあるが、大事なのは理由を調べ、産科医療の質の向上につなげる見直しをすることだと思う。
 
なぜ余るのか。まず、制度の存在が一般に知られていない。

医師側には、第三者にチェックされるのを嫌がり、申請を避ける傾向も一部にある。
対象は原則2千グラム以上、33週以上で生まれた子と、狭く設定されている。
脳性まひでも対象外の子がいる。
 
制度を運営する公益財団法人の原因分析委員長を務める岡井崇・愛育病院長は、医師の意識変革が不可欠だと指摘する。
「誰かに調べられているという受け身でなく、自分たちで事例の検証を進めるという姿勢を全ての産科医に広めなくては」と話す。
 
患者の家族からは、対象拡大を求める声が上がる。神奈川県の坂口朋子さん(54)の長女・成美さん(16)は、お産の事故で重い脳性まひになった。

「生まれつきの病ではないか」との説明に納得がいかず、病院を提訴。
病院の不手際がわかり、和解した。
「真相が伝わる仕組みがほしかった。同じように悩む親が一人でも多く救われるような制度に」と訴える。
 
対象者を狭く限定したのは、財源不足から制度が破綻(はたん)しないように、と考えた結果だった。
余裕があるとわかった今、患者や家族にとって公平となるように対象拡大を図るのは当然でないか。
 
申請の期限は5歳の誕生日まで。
初年に生まれた子の期限が近づく。対象者なのに申請していないというケースの掘り起こしも急務だ。
 原因分析では、関連する学会の診療指針を守っていない例も見つかった。事故の再発防止につなげる取り組みも強化してほしいと思う。
 (つじときこ 科学医療部)