(下)辰野町あすへの一歩=医師不足の町立辰野病院 運営安定化へ多い課題

2013.10.18

辰野町あすへの一歩(下)=医師不足の町立辰野病院 運営安定化へ多い課題
2013.10.17 信濃毎日新聞



 辰野町のJR辰野駅近くに立つ町立辰野病院。同町伊那富の高台から移転新築し、昨年10月に開院して1年が過ぎた。病床は計100床。

だが、使われているのは75~80床にとどまっている。
「受け入れ態勢が取れない」(赤羽博事務長)ためだ。移転前の旧辰野総合病院時代からの医師・看護師不足は依然、解消していない。

 医師不足は2004年度に導入された新臨床研修制度の影響が大きい。
それまで新人医師は大学の医局を通じて地方の病院に派遣されることが多く、旧病院も信州大から派遣を受け、03年度末には15人の常勤医がいた。
しかし新制度で研修先を選べるようになり、医師が都市部に流出。派遣医師の引き揚げもあり、常勤医は現在8人まで減った。

 旧病院時代の10年度に外部コンサルタントに委託した調査では、医師1人が診た1日当たりの外来患者数は42人。
同規模の公立病院の統計値と比べて約2・6倍に上り、医師の負担は大きい。
03年度末に82人いた常勤看護師は現在73人。看護師は女性が多く、出産や子育てによる退職や休職で人数が安定しない。
町は医師と看護師を募集しているが、確保が難しい状況だ。

 医師の増員を前提に、赤羽事務長は「70床埋まらないと赤字になる。
80、90床は確保したい」。
急性期を脱した亜急性期の患者の治療に力を入れているが、亜急性期用30床のうち使われているのは平均で15床程度。急性期を担う伊那中央病院(伊那市)からの受け入れ強化も課題だ。

 また辰野病院には産婦人科があるが、診察のみで出産はできない。常勤医がいないためだ。
初の出産を控え、同病院にほぼ月1回通う町内の20代主婦は「違う病院で産むのは少し不安」と話す。
旧病院で出産に対応していたころは年間200人前後を扱っていた。
新病院も増築して対応できる設計になっており、出産の受け入れ再開は常勤医を確保できるかにかかっている。

 同病院の決算によると、純損益は11年度1040万円余、12年度1080万円余と2期連続で黒字を計上。
11年度は亜急性期の患者が多かったこと、12年度は整形外科の患者が増えたことが要因とみる。
だが13年度は、新築に伴い始まる減価償却で約1億5千万円を計上せねばならず、純損益は赤字となるのが確実だ。

 県医療推進課によると、県内23町のうち、町立病院があるのは辰野を含め5町。
移転新築を機に、町民有志はボランティアで病院を支援する会「きずな」を結成した。
来院者の案内や敷地内の草取り、除雪などを手伝っている。事務局の遠藤裕子さん(81)は「年を取ると、遠くの病院に行くのは不便になってくる。
地域に自分たちの病院があることは大切」と話す。

 町は通院者にも配慮し、郊外と町中心部を結ぶ予約制のデマンド型乗合タクシーの運行を4月から始めた。「自分たちの病院」をどう支え、軌道に乗せていくか。新町長の手腕が試される。