<あすを拓(ひら)く 新温泉町長・町議選挙>(上)病院 苦境が続く地域の医療

2013.10.18

<あすを拓(ひら)く 新温泉町長・町議選挙>(上)病院 苦境が続く地域の医療
2013.10.17 神戸新聞

苦境が続く地域の医療


 2013年5月10日、神戸地裁豊岡支部であった裁判の尋問で、男性は「地方の都合。自分は知りません」と言い放った。

 男性は07年から約3年半、公立浜坂病院に勤めていた整形外科の元非常勤医師。
退職後に所得税の源泉徴収漏れが発覚し、新温泉町が昨年、返還を求めて提訴に踏み切った。

 被告に賠償を命じた地裁判決によると、元医師側と当時の町長らが、正式な雇用契約に代えて、報酬の支払いなどについて協定書を取り交わしていた状況が明らかに。
ある関係者は「病院の足元が見られたのでは」と振り返った。

 同病院は現在、内科や小児科など6つの診療科を備える町立の総合病院として地域医療を担っている。
04年の新臨床研修制度施行後、かつて10人以上いた常勤医は09年に3人となり、慢性的な医師不足に陥った。

 立て直しを目指し、同町では09年度、「常勤医の数を5人まで増やし、黒字化を目指す」とする3カ年の改革プランを示した。
しかし、少子高齢化の進行などで改善はならず、累積赤字は12年度決算で33億9200万円と、逆に約3億円増加した。町では一般会計からの穴埋めと、国の交付金拡充で対応するが、毎年1億円を超える赤字が出る。

 医師の確保も思うようにいかない。県の派遣に頼る構図は変わらず、現在も常勤医は4人にとどまる。今年9月には整形外科の非常勤医師1人が退職し、週2回だった診療日は半減、新患診療が制限される事態となった。

 10年ほど通院する温泉地域の80代女性は、「待ち時間が長くなったので足腰が痛くなる。なんとか医師を増やしてほしい」と語り、つえをついて病院を後にした。美方郡内に住む男性医師も「ニーズが高い整形外科の診療日が減った意味は大きい」と話す。
入院患者数は12年度までの4年間で1割減った。

 新たな対策として同病院が注目するのは、北播地域などで進められている診療情報の共有化だ。

 高齢化を迎え、介護などの在宅医療の重要性が増す中、民間の診療所がインターネットを通じて情報を閲覧・活用できるようにし、地域全体で医療体制を補完し合うことで生き残りを図る。
同病院の仲村秀幸事務長は「広域での連携をさらに高め、住民に対して最大限の利益になるよう努めていきたい」と意気込む。

 先の医師も「総合病院を目指すのではない」と指摘する。「交通弱者や軽症者など、地元で本当に必要とする層に合わせた病院へとかじを取るべきだ」。

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 県西北端に位置する新温泉町。旧町合併から8年が過ぎ、少子高齢化への対応や広域行政のあり方が注目されている。10月22日には町長選、町議選が告示され、27日に投開票を控える。町の現状と課題を考える。