「産後入院」体制整備へ 「ケアセンター」授乳指導も

2013.09.17

「産後入院」体制整備へ 「ケアセンター」授乳指導も
 




 産院を退院した女性が再び入院し、休養したり授乳指導を受けたりできる「産後ケアセンター」の整備が、政府の少子化緊急対策に盛り込まれた。産後の手伝いを実家に頼れないケースが増える中、体調や育児に不安を抱える女性たちが頼れる場所として期待される。(森谷直子、福士由佳子)

 6月下旬、福島県猪苗代町の助産所「会津助産師の家 おひさま」で、入院中の郡山市の女性(40)が、助産師の助言を受けながら、赤ちゃんのオムツを替えていた。女性は6月15日に別の産院で男児を出産。20日に退院したが、東日本大震災で実家が被災し、産後の手伝いを頼める人がいないため、2週間の予定で今度は「おひさま」に入院した。県の助成があるため、入院費の自己負担は1日3000円で済む。

 入院中は、栄養バランスを考えた食事が提供され、睡眠を取りたい時は、赤ちゃんを預けることもできる。赤ちゃんのもく浴や授乳をする時には、助産師が指導する。

 このように、産院を退院した女性が、再び入院し、1週間ほど休養したり、育児指導を受けたりすることを「産後入院」といい、それができる施設を「産後ケアセンター」と呼ぶ。多くは助産師が常駐する。

 政府は先月決定した「少子化危機突破のための緊急対策」で、産後ケアセンターの整備の方針を打ち出した。厚生労働省は「2014年度に全国の自治体でモデル事業を行いたい」としている。

 実は、国が産後ケアセンター整備を打ち出すのは、今回が初めてではない。1995年度から2011年度まで、産後ケアセンター事業を行う市町村に補助金を出していた。

 現在も独自に事業を行っている自治体はあるが、その数はわずかだ。厚労省の研究班が昨年度に行ったアンケート調査によると、助産所や病院に委託したり、専用の施設を作ったりする形で産後ケアセンターを設け、利用者に入院費を補助している自治体は16。回答のあった786自治体の2%にとどまった。

 補助金を受けずに産後入院を受け入れている助産所や病院、民間の施設も少しずつ増えているが、入院費は、1日数万円かかるケースが多い。

 2011年3月に開院した埼玉県和光市の「わこう助産院」は、「産前・産後ケアセンター」としての機能を併せ持ち、産後入院を受け入れている。しかし、入院費が1日2万5000円かかることもあり、利用者は2年間で5人にとどまっている。

 こうした現状を踏まえ、政府は、産後ケアセンターに対し、今後、補助金を出すことなども検討する。

 同省の研究班の代表者で、国立保健医療科学院・特命統括研究官の福島富士子さんは、「高齢出産が増えているが、その場合、赤ちゃんの祖父母も相当の年齢になっていて、産後の手伝いができないことがある。また、産科医不足のため、出産を扱う病院の入院日数は短くなっており、母親の体力が十分回復せず、育児にも慣れないうちに、退院の日を迎えてしまう」と指摘。「経済力や住んでいる場所にかかわらず、産後ケアセンターを利用できるようにすべきだ」と話す。

家庭で支援する専門職 アメリカ発「ドゥーラ」養成

 日本助産師会前事務局長の市川香織さんによると、女性が産院から退院して数日から1週間過ぎた頃は、ホルモンバランスの変化もあり、精神的に最も不安定になりやすい時期だという。「この時期の母子を支援することが、産後うつや乳児虐待の予防にもつながる。様々な形の支援が必要」と話す。

 施設での見守りまでは必要としていないが、家事などで親に頼れない人にとって、心強いのは自宅を訪問してくれるヘルパーだ。

 しかし、厚生労働省の研究班が2012年度に全国の自治体を対象として実施したアンケート調査によると、産後のヘルパーの利用料を補助している自治体は100市町村(13%)にとどまる(786自治体が回答)。産後のヘルパーの必要性があまり認識されていないのが実情だ。

 こうした中、出産前後の女性を支援する「ドゥーラ」(doula)という職業を育成しようという民間の動きがある。「ドゥーラ」とは、出産に付き添ったり、産後まもない母親の家事を手伝ったり、赤ちゃんの世話をアドバイスしたりする職業で、アメリカで広まった。

 一般社団法人「ドゥーラ協会」(東京)では、現在10人のドゥーラを産後の家庭に紹介しており、さらに約20人を養成している。仕事は、食事作りなどの家事、上の子どもも含めた育児のサポート、母親の話し相手――など。

 理事で助産師の宗祥子さんは「家事だけを手伝うヘルパーとは違い、母親の悩みにも向き合える知識を身につけたドゥーラのサポートを受ければ、産後の母子が夫や上の子どもと一緒に過ごしながら、安心して子育てをすることも可能だ」と話す。

 一方、産前産後の女性を支援しているNPO法人「マドレボニータ」(東京)は、友人たちが交代で産後の家庭を訪れて育児や家事を手伝う「産じょくヘルプ」を提案している。

 理事の吉田紫磨子しまこさんは、「母子を施設に入れて世話する形だと、夫が育児参加できないというマイナス面もある。ヘルパーの利用や、友人の助け合いなど、様々な方法で家庭で安心して産後を過ごせるようにすることが必要だ」と指摘する。
 
(2013年7月9日 読売新聞)


http://www.nhk.or.jp/ohayou/marugoto/2013/03/0301.html