被災地 戻らぬ医療*東北3県沿岸部*再開遅れる病院/通院に丸1日/「入院用のベッド早く」

2013.09.10

被災地 戻らぬ医療*東北3県沿岸部*再開遅れる病院/通院に丸1日/「入院用のベッド早く」
2013.09.08 北海道新聞 


 東日本大震災の被害が大きかった岩手、宮城、福島3県の沿岸部では、被災した病院や診療所の再開が遅れ、2年半たってもなお厳しい医療環境が続く。
拠点の公立病院は病床数が減少し、原発事故の影響が残る福島県は、医師や看護師の確保に悩む。

 国は人手不足に対応するため、看護師の配置基準緩和など特例措置で支援するが、もともと医療過疎地だった3県沿岸部では、身近な病院が失われ通院を諦める人も。避難生活が長引く中、住民の健康悪化の懸念は深刻だ。

 街全体が津波に襲われた岩手県陸前高田市。20施設あった医療機関のうち、現在稼働するのは13にとどまる。開業医が廃業に追い込まれ、地域のかかりつけ医を失った。
近くの病院がなくなり、通院に丸1日かかる人も。市内の県立病院は県内外から応援医師を投入しているが、「態勢維持が課題」(岩手県)という。

 宮城県南三陸町は中心部が壊滅し、13施設のうち再開は2施設のみ。
気仙沼保健所は「建築制限があり、町の復興計画も見通せず、再開に二の足を踏んでいる」と説明。重症者の救急搬送先は車で30分以上かかる隣の石巻市だ。

 一方、地域医療を担う公立病院の機能も低下している。岩手県は県立の山田病院(山田町)と大槌病院(大槌町)が津波で壊れ、各60床ずつベッドを失った。
隣接する県立病院が入院患者を受け入れるが、「わざわざ隣町の病院まで行く患者や家族の負担は大きい。地元病院にベッドがある安心感を早く与えたい」と県担当者は話している。

 放射能への不安を抱える福島県は人材確保に苦労する。沿岸部の南相馬市立総合病院は看護師が減少。
「採用してもすぐに辞める」(同病院)といい、ベッドの稼働数を230床から150床に制限した。同市立小高病院は来年4月に内科診療を再開するが、「放射能問題もあり、医師や看護師のめどはついていない」と不安を抱える。

*患者宅で診療*応援医師が頼み

 身近な病院がなくなり、困難を余儀なくされる患者や高齢者。
自宅を訪ねる在宅医療に携わる応援医師らが、疲弊した被災地の医療を支えている。

 宮城県気仙沼市で、震災後の応援に入るのは横浜市の整形外科医岩井亮さん(49)。
市内3カ所の仮設住宅を2週間に1度訪問する。病院から遠く、診察を受けにくい住民のため、腰痛や肩こりの治療、血圧測定、健康相談を無償で続けている。

 「夜は眠れていますか」。震災の半年後、宮城県石巻市で在宅医療を始めた武藤真祐(しんすけ)医師(42)は、認知症で寝たきりの大島リノさん(92)に優しく声を掛ける。リノさんの長男武志さん(69)は「震災後は病院が減り、母が通う病院の患者が増えた」。訪問看護師の紹介で昨年7月から在宅医療を利用。夜も電話で相談でき、安心につながっている。