患者周辺の環境表面に殺菌銅を用いた感染抑制

2013.08.30

患者周辺の環境表面に殺菌銅を用いた感染抑制

ビジネスとしての事例

発表番号212、2013

 

始めに

感染抑制においては、手洗いの励行および院内環境の殺菌の二つが中心となるのは言うまでもないが、医療機関が常に抱える院内感染の問題を低減するためには、さらなる追加策が必要となる。患者の状態を改善する措置はまた、入院日数さらには抗生剤の使用を低減することにもなる。

 

院内感染を起こす病原体は、環境表面上で何日も、場合によっては数ヶ月生き延び、それが頻繁に触れられる場所であれば、その表面が感染源となってしまう。耐久性にすぐれ殺菌効果のある銅を、そういった場所に用いれば、院内感染を起こす病原体の増加を抑える方法としての工学的な解決策のひとつとなる。世界各国で行なわれた臨床試験ではどれも、銅を含有した環境表面は、バイオバーデンを継続的に90%以下に減らし続けることが実証されている。頻繁に触れる環境表面におけるバイオバーデンの低減と感染率の減少の相関関係は米国国務省が資金提供した研究で明らかにされており、この研究において個室のICU内で感染の鍵となる重要な製品六点を通常の材質から銅合金に変えたところ、感染率が58%低減された。銅の有効性が次々と証明されていくにつれ、世界中の医療現場で銅製品の設置が加速されていった。設置場所は、感染に対してより無防備な状態でいる場合が多い患者のいる場所、ICU、嚢胞性線維症患者の病室、小児科、新生児ICUなどである。こうして設置が進んでいくと、殺菌銅製品の費用に関する情報が得られ、設置費用をデータとしてまとめることができた。

 

費用対効果モデル

国際銅協会からの依頼で、医療関連費用モデルの研究では世界のトップレベルにあるヨーク大学医療経済学コンソーシアムは、病院経営者のための費用対効果モデルを開発した。このモデルはすべて出典の確かなデータを使い、殺菌銅を使う経済的論理性を示すものである。

モデルでは、銅環境表面の設置による追加費用と、その設置により院内感染率が低減し、その結果、節約できる費用との対比を行なう。ここでは開発されたソフトを使って計算した例を実際の画面で説明する。ソフトの詳細やモデルの論理性について解説する論文は現在ヨーク大学医療経済学コンソーシアムによって準備されている最中である。

 

 

 

データ

院内感染にかかわるすべての費用を正確に計算するのは難しく、院内感染について公表された比較データも不足している。そこで本モデルは、出典の確かなデータを用いて、銅製品を新設の施設、または改修時に設置した場合、費用回収にどれぐらいの期間が必要かを推測した。モデルに入力されたのは、裏付けのある英国のデータを率にしたもの、院内感染にかかわる費用、銅製品の費用、似たような製品で殺菌銅の効果がないものの費用であるが、利用者が個々のデータを入力の上、それぞれの場合を計算できるようにした。

 

 

計算例:英国の集中治療ユニット

項目

数値

病床数

20

個室として計算

年間の患者数

1,200

平均入院日数を6日として計算(Edbrooke、2011年).

感染率 (すべての院内感染症)

25%

2010年ケアンズでの報告では27.1%
英国保健衛生庁(Health Protection Agency)による2012年度、全国有病率定点調査(National Point Prevalence Survey)では23.4%

院内感染一件あたりの費用

£6,000

ネグリーニ報告書(2006年)では、英国の75病院のICUにおける一日あたりの平均費用を£1,000(約$1,512)、院内感染症に罹患すると入院日数が6日増えるとしている。本モデルでは外来での診察や家庭医による診察による費用を入力することもできるが、ここではこれらは考慮に入れていない。

材質を銅(または殺菌銅)に取り替えた製品

感染源になりやすい6品目:
点滴の支柱、ナースコール用ボタン、オーバーベッド・テーブル、ベッドの手すり、コンピュータのキーボードなど入力装置、来訪者用の椅子

米国サウスカロライナ州立サウスカロライナ医科大学医微生物・免疫学科、Schmidt MGによる『銅の環境表面イニシャチブ』、BMC Proceedings 2011, 5(Suppl 6)、(2011年6月29日~7月2日スイス、ジュネーブにおいて開かれた第一回感染症の予防と抑制についての国際会議でのプレゼンテーション):O53.
『銅の導入による一般的な病院の表面における微生物負荷の持続的減少』 Michael G Schmidt 他, Journal of Clinical Microbiology、2012年7月、Vol 50, No 7.
本研究は個室ICUで行なわれた。ここに挙げた品目以外に銅製品と取り替えた例、たとえばドアの持ち手、プッシュプレート、水道の蛇口などもある。これらは病院の規定に沿った形で取り替えられ、また臨床分野では感染源になりやすいとされた場所である。

取り替え費用

£30,600

これは銅製品と銅を使わない製品との価格差である。一般的な市場価格を用いた。この事例は新築もしくは改築・改修をベースにしたものなので設置にかかわる費用はほぼ同等であり、そのため設置費用の差は考慮しなかった。

取り替え後の院内感染低減率

20%

『集中治療ユニットにおける院内感染を銅表面が減少させる』 Cassandra D Salgado他、Infection Control and Hospital Epidemiology、2013年5月、Vol 34, No 5. この研究では銅製品を設置したICU内での感染は、58%低減しているが、以下のモデルでは控えめに20%という数字を使っている。

 

5 年後の結果

上記の数字をモデルに入力すると、投資は二ヶ月以内で回収できることがわかる。銅製品の費用£105,000に対し、通常製品の費用は£74,400である。銅製品を使った場合の感染数が1,200件であるのに通常製品の場合は1,500件。つまり感染一件あたりの費用換算は£102となる。このモデルには、空きとなる病床数や質調整生存率(QALY)といった追加情報も入力でき、入院日数をさらなる効果を計算することができる。ダウンロードは下記ウェブサイトで:

www.antimicrobialcopper.com/uk/why-antimicrobial-copper/the-business-case.aspx

もしくは、下記メールアドレスまで:

info@copperalliance.org.uk

 

通常の素材

追加費用

費用計 (複数の感染に関する費用は除く)*

£105,000

£74,400

£30,600

感染件数

1,200

1,500

300

感染一件あたりにかかる費用換算(複数の感染に関する費用は除く)*

£102.00

増加した質調整生存年

107.40

質調整生存年あたりの費用

£284.92

複数の感染費用*

£7,200,000

£9,000,000

-£1,800,000

追加措置の費用計*

£7,305,000

£9,074,400

-£1,769,400

感染一件あたりにかかる費用換算

有意差あり

*これらは病院が直接負担する費用 
(家庭医や社会保障が負担する費用は含まない)。

有意差ありとは殺菌銅が費用も低く抑えられ、効果もあったという意味

 

年間削減できた使用ベッド数

360

年間削減できた使用ベッド数一日あたりの費用

£85.00

年間削減できた使用ベッド数は360床であり、その結果平均的なICU滞在日数を5.7日とした場合、その収容能力を63床増やすことができる。

 

投資回収期間

2ヶ月以下

銅設備にアップグレードした場合の費用£105,000に対し、通常製品の費用は£74,400である。銅製品を使った場合の感染数が1,200件であるのに通常製品の場合は1,500件。つまり感染一件あたりの費用換算は£102となる。

 

 

 

 

www.antimicrobialcopper.org