(社説)患者ビジネス 医療の押し売りは困る

2013.08.27

(社説)患者ビジネス 医療の押し売りは困る
 朝日新聞 8・27 


施設で暮らす高齢者や、鍼灸(しんきゅう)院に通う患者を医師にまとめて紹介し、見返りに医師から金を受け取る。
そんな患者紹介ビジネスが広がっている。
 
高齢化が進み、病院以外の施設や在宅で治療を受けるお年寄りは増える。
患者と医師との仲介機能が求められるのは不自然ではない。
 
しかし、医師が患者集めに紹介料を払うことは、公費のむだ遣いや過剰診療を招きかねず、看過できない。
 
医師に払われる診療報酬は、たとえば訪問診療は1回8300円というように、公的に決まっている。
それによって医療経営が成り立っている。
 
診療報酬の原資は国民が負担する保険料と税だ。病気やケガをした時に助け合うため、保険加入者や雇用主が拠出する貴重なお金である。
直接、医療を提供するわけでもない業者に払う余裕はないはずだ。
 
医療の質が低下するおそれもある。
 普通の商品やサービスと比べて、医療は専門性が高い。
一般的に、どんな治療が必要なのかは素人の患者には判断できず、医師に任せるしかない。
 だからこそ医師には、患者の利益を最優先する高い職業的倫理が求められている。
 
ところが、本来、想定されていない費用(紹介料)を払うとなると、不必要な診療の「押し売り」や手抜きへの誘惑が高まるだろう。
 
実際、鍼灸院に患者を集めていたケースでは、報酬が高めの訪問診療を偽装したり、診療回数を水増ししたりするなど、不正請求の疑いが濃い。
 
国が後押しする「サービス付き高齢者住宅」などの施設が増えると、紹介料をやりとりしながら、患者を囲い込む動きが広がる可能性がある。
 
第三者が患者と医師とを仲介する場合のルールづくりが必要だ。あくまで患者の側に立つことを大原則とし、誰がその仲介機能を果たし、どう規制をかけていくか。議論を急がなければならない。
 
今月まとまった社会保障国民会議の報告書は、患者が「かかりつけ医」を持ち、そこで必要な医療を判断し、適切な病院を紹介する姿を描く。
 
医療全体の効率性を高めるための提案だが、
かかりつけ医との間で長期的に信頼関係を築くことができれば、患者のメリットは大きい。地元医師会も積極的に役割を果たすべきだ。
 不透明な患者紹介ビジネスを排除する対策は、医療の将来像と深く結びついている。