医療の現場、存在感増す男性看護師

2013.08.24

医療の現場、存在感増す男性看護師

朝日新聞
2013年8月22日
 

【神元敦司】 男性看護師が増えている。
厚生労働省の調査では約6万3300人(2012年)。
20年前の約6倍、10年前の約2・4倍に。とはいえ、ようやく全体の6・2%。なぜ、女性の多い職場を就職先に選ぶのか。



やりがい魅力、10年前の2.4倍

 神奈川県厚木市の厚木看護専門学校には今春、112人が入学。約17%にあたる19人が男性だ。

うち12人は20代後半~40代半ば。転職を図る人たちで、同県海老名市の山口祐一郎さん(31)もそんなひとりだ。 
大学卒業後、3月まで予備校の事務員として働いたが、身分は契約社員。
4年前に結婚、3歳の子どもがいる。
将来への不安を感じていた昨年8月、子どもが入院し、看護師の仕事を目の当たりにした。「患者や家族に頼りにされ、魅力を感じた」と話す。
 
2010年4月、大阪市内に看護学部を新設した宝塚大(兵庫県宝塚市)。
同部には今春、118人が入学し、28人が男性だった。
 兵庫県南あわじ市出身の同大4年、橋本圭祐(けいすけ)さん(22)は看護学部の1期生。
高校時代は救急救命士を目指していた。だが自治体などの採用数が少ないことを心配した母親が、看護師を勧めた。同県内の総合病院への就職が内定している。
 
柴田恭亮・同大副学長兼看護学部長は「看護師志望の学生はいま、売り手市場だ。
正職員で採用されるし収入も低くない。労働時間が長く厳しい仕事だが、テレビドラマに取り上げられるなど、格好いい職業と男子学生にも思われている」。

仕事は厳しい、でも収入安定

 人事院によると、看護師の12年4月支給の平均月給は34万6千円(37歳)。
一般の事務職員(35歳)を2万6千円上回る。日本看護協会によると、看護師(勤続10年)の平均月給はここ5年、ほぼ横ばい。景気の影響を受けにくいという。
 
北海道社会事業協会小樽病院(240床)は3年前から、男性看護師の採用に力を入れている。
現在、正職員の看護師は137人、うち男性は12人になった。
 坂本みよ子看護部長は「妊娠すると辞めてしまう女性が年に数人いる。一生の職業として考える男性が多く入ることで、離職率を下げられる」と期待する。
 
日本看護協会によると、11年度の看護師の離職率は全国で10・9%。一番高いのは大阪府の14・3%、次いで東京都の14・2%。都市部で高い傾向にある。
 
男性看護師は、小児病棟では入院する子どもの「父親役」になり、女性看護師とは違った安心感が与えられるという。また、思春期の男性の中には「女性看護師に処置されるのは恥ずかしい」と訴える人もいる。

少数派で苦労、悩み語る会も

 ただ「少数派」ならではの苦労も。静岡県内のある病院では新人の男性看護師9人中、6人が辞めた。
「職員用男性トイレが少ない」「休憩室が男女共用で女性が多いと入れない」。そんな不満を漏らしていた。
 将来への不安や悩みを語り合う「男性看護師会」が横浜や大阪、北九州など各市にできた。三重県では昨年11月、病院の枠を超えて「三重男性看護師会」が結成された。三重、愛知両県の7病院の20、30歳代を中心に約20人が参加する。
 
元看護師で会の代表の前田貴彦・三重県立看護大准教授(39)は「悩みを共有し、仲間を増やしていきたい」と話す。