消費税引き上げを前提に社会保障制度改革

2013.08.23

消費税引き上げを前提に社会保障制度改革――負担のあり方は「年齢別」から「能力別」へ 国民会議が最終報告書をまとめる
2013.08.23 



 政府の社会保障制度改革国民会議は8月5日、医療、介護、年金、少子化対策の4分野の改革に向けた報告書をまとめ、6日に安倍晋三首相に手渡した。

持続性の高い社会保障制度を実現するため、消費税の引き上げを前提とした各改革に取り組むとともに、負担のあり方を「年齢別」から「負担能力別」に切り替える方向性を打ち出した。


特に医療制度改革では、これまでの「病院完結型」医療から「地域完結型」医療への転換を提言。

急性期医療を中心に人的・物的資源を集中投入し、その受け皿となる地域の病床や在宅医療・介護の充実化を図る。
その一方で、高齢者や高所得者に応分の負担を求める改革項目も盛り込んだ。
 
国民会議では昨年11月の初会合から計20回の審議を重ねて報告書を作成。
これを受けて政府はすでに与党との調整を進めており、国民会議の設置期限である8月21日までに、報告書に沿って個別の法案の提出時期などをまとめた、いわゆる「プログラム法案」の大綱を閣議決定し、秋の臨時国会での提出を目指す。

医療法改正法案や健康保険法改正法案などは来年の通常国会に順次提出していく考えだ。
 
報告書の概要としては、社会保障制度改革の基本的な方向性を示した「総論」と、医療・介護や年金、少子化対策といった「各論」で構成されている。まず「総論」において、従来の高齢者者世代を給付対象の中心とする考えから、全世代対象の社会保障制度への転換を強調。「給付・負担の両面で世代間・世代内の公平が確保された制度とすることが求められる」と指摘し、特に負担のあり方に関しては、従来の「年齢別」から「負担能力別」の仕組みに変更するよう促した。


■紹介状無しの大病院受診に定額自己負担
 
「各論」部分のうち医療・介護分野では、まず医療提供体制の改革方針として、救命・延命や治癒、社会復帰を前提とした「病院完結型」の医療から、患者の住み慣れた地域や自宅で生活するための医療、地域全体で治療・支援する「地域完結型」医療への転換を提言。

改革の実現に向けた取組みとして、医療機関が持つ医療機能の情報を都道府県に報告する「病床機能報告制度」に関して、「早期に導入する必要がある」と主張した。

さらに、医療機関から報告を受ける都道府県に対しては、「地域にふさわしいバランスの取れた医療機能ごとの医療の必要量を示す地域医療ビジョンの策定」を求めた。

加えて、提供サービスのあり方を「地域完結型」に変更するための政策手段として、「全国一律に設定される診療・介護報酬とは別の財政支援の手法が不可欠」との見方から、補助金を活用した基金方式の検討も挙げている。
 
医療のあり方自体に関しても変化を要求し、総合的な診療能力を持つ医師(総合診療医)を地域医療の核に位置付け、「専門性を評価する取組みを支援するとともに、その養成と国民への周知を図ることが重要」とした。

総合診療医の養成と併せて、医療職種の職務見直しを通じたチーム医療の確立や、医療従事者の勤務環境の改善、看護師の新たな養成制度の創設などの必要性も掲げた。
 

報告書ではまた、患者のニーズに見合った医療提供体制の構築に向けて、「医療機関に対する資源配分に濃淡をつけざるを得ない」として医療費の効率化も提言。

患者が受診する医療機関を自由に選べる「フリーアクセス」を維持するため、「緩やかなゲートキーパー機能を備えた『かかりつけ医』の普及は必須」とし、具体的な施策として、紹介状を持たない患者の大病院での外来受診について、選定療養費の対象となっている初再診料への定額自己負担の導入を求めた。
 

現在1割負担となっている70~74歳の窓口負担に関しては、政府の規定方針通りに2割に引き上げる時期について「早期の結論を得るべき」と指摘。

引き上げに際しては、新たに70歳に到達する人から段階的に進めることが妥当とした。高額療養費制度にも触れ、「現行の仕組みは一般所得者の所得区分の年収幅が大きいため、中低所得者の負担が重くなっている」と分析し、より細かな所得区分の見直しを要求している。


■全面総報酬割の導入で国保運営を広域化

 医療保険制度改革においては、財政基盤の安定化と保険料負担の公平性の確保を課題として明記。

特に皆保険制度の最終的な支え手と位置付ける国民健康保険の財政安定化に関しては、「構造的な問題が解決され持続可能な制度が構築されるならば、市町村とともに積極的に責任を担う覚悟」とする全国知事会の意思表明を踏まえ、一定の条件のもとに運営単位を市町村から都道府県に広域化する方針を明記した。

広域化の前提条件である財政的な構造問題の解決に向けては、現在特例で被用者保険が負担している後期高齢者支援金を巡り、「全面総報酬割で生じる財源も考慮に入れるべき」とした。
 後期高齢者支援金の負担方法は現在、特例で被用者保険が負担する支援金の3分の1を、各被用者保険の総報酬に応じた負担としているが、報告書では総報酬割の全面導入を通じて、被用者保険間の保険料負担の平準化を目標に掲げている。

全面総報酬割を導入に伴い、不要となる協会けんぽの公費負担の活用法について報告書は「社会保障の機能強化策全体の財源として有効に活用し、国民に広く還元すべき」「国保の財政上の構造的な問題を解決し、(国保の)保険者の都道府県への円滑な移行を実現するために不可欠」としている。