医療・介護、負担増へ道 社会保障改革、手順案を閣議決定 今秋以降に具体化作業

2013.08.22

医療・介護、負担増へ道 社会保障改革、手順案を閣議決定 今秋以降に具体化作業 2013年8月22日朝日新聞

今後の社会保障改革の流れ/プログラム法案が定める改革スケジュール
 



安倍内閣は21日、消費増税に伴う社会保障改革の手順を示す「プログラム法案」の骨子を閣議決定した。

社会保障国民会議の報告書に沿った内容で、医療分野の改革は2014~17年度、介護分野は15年度をめどに実施するとした。

秋の臨時国会で成立させ、その後、個別の改革を進める方針。ただ関係者の異論が強まる可能性もあり、実現には曲折がありそうだ。
 
「国民会議の精神を生かして個別の法律をつくっていく」。プログラム法案の骨子決定後の記者会見で、田村憲久厚生労働相はこう述べた。
 
国民会議は民間有識者の集まりで、昨年夏に自公民3党が消費増税とセットで成立させた社会保障制度改革推進法に基づいて設けられた。
 
同法は「国民会議の審議結果を踏まえ、政府は法制上の措置を講ずる」と定め、その期限が21日だった。
民主党政権が着手した「税・社会保障一体改革」は、自公政権が受け継ぎ、実行していくことになる。
 改革の背景には、急速な少子高齢化への危機感がある。社会保障の給付額は毎年3兆円ほど増え、財源不足を国の借金で穴埋めする状況が続く。
 
国民会議が5日にまとめた報告書は、将来へのつけ回しに歯止めをかけるため、負担のあり方を「年齢別」から「負担能力別」に切り替えることを提言。
所得が高い人には高齢者も含めて、負担増を求める方向性を打ち出した。
 
プログラム法案の骨子は医療・介護が中心だ。医療分野では、国民健康保険の運営を市町村から都道府県に移す▽会社員らの健康保険から高齢者医療に出す支援金の算定方法を変え、中小企業の「協会けんぽ」の分担を軽減し、大企業健保の分担を増やす――といった制度改革について、15年の通常国会への法案提出を明記。

70~74歳の医療費窓口負担の引き上げ(1割→2割)など、個人負担の仕組みを変える案も多く並べた。
 
介護保険制度の改革では、要介護度の低い「要支援」向けサービスの市町村事業への移管と、所得が一定以上の利用者の自己負担を1割から引き上げる見直しについて、14年の通常国会で法改正し、15年度をめどに実施するとした。
 
年金は、受給開始年齢の引き上げなどを検討課題としたが、時期には触れなかった。抜本改革に踏み込まず、現行制度を維持する路線となった。
 
安倍政権は秋にプログラム法を成立させ、並行して個別の改革内容を具体化する作業も進めていく方針。また、国民会議の求めに応じ、改革の進み具合をチェックする組織をつくる。
 
国民に「痛み」を求める社会保障改革には、政治の場での幅広い合意が大切だが、民主党は今月、自公両党と続けてきた協議から離脱した。与党側には、民主党をつなぎとめるために、中長期的な課題を話し合う新たな有識者会議をつくる案も浮上している。
 
■関係団体、すでに異論 与党内からも抵抗必至
 改革のレールは敷かれたものの、この先もハードルが待ち構える。秋から具体的な中身を詰める作業の舞台は、厚労省の社会保障審議会。専門家のほか、保険団体や業界団体の代表も集まる利害調整の場だ。
 
すでにさまざまな異論も出ている。
 「国の財政責任を被用者保険に転嫁する方策は、国民の理解を得られない。強く反対する」。

大企業などの健保でつくる健康保険組合連合会は今月上旬、こんな声明を出した。
会社員らの健保が高齢者医療に出す支援金の算定方法を見直して浮かせた国の財源を、国民健康保険の赤字穴埋めに回す案を厳しく批判した。
 
また、重い病気になった直後の「急性期」向けに偏る病院の機能を、患者のニーズに合わせて都道府県の主導で再編していく案は、病院関係団体の警戒感が強い。医療機関の経営に大きく影響するためだ。
 
介護保険改革の柱となる「要支援」向けサービスを市町村事業に段階的に移す案に対しては、社保審の有力委員は「市町村が受け皿となり得るのか、国民会議ではほとんど議論されていない。
慎重に検討しないと、サービスの質が下がる」とクギを刺す。
 

社保審での検討作業は、介護保険については年内がヤマ場となる。医療分野では今年秋から来年後半にかけてさまざまな議論を重ねていく見通しだ。
議論がまとまれば、厚労省が法改正案を国会に順次出していくことになる。
その段階では与党の法案審査という別のハードルもある。
 
自民党厚労族の重鎮は「プログラム法案の骨子は決定期限が迫っていたので了承したが、本番はこれから。具体策の法案が出てくる時に、言うべきことは言わせてもらう」。

与党内では「社会保障でも負担増が続くのでは、何のための消費増税なのか」(公明党中堅議員)といった慎重論も根強く、「総論賛成」の空気が今後、「各論反対」に変わる可能性もある。
 
今回の骨子には、こうした状況を意識した「逃げ道」ともとれる、あいまいな表現も目につく。
70~74歳の医療費窓口負担の引き上げについて、国民会議の報告書は「早期に」とし、健保の高齢者医療向け支援金の算定方法見直しは「15年度」と明記した。だが骨子はこれらの時期を「14~17年度」と幅を持たせた。
 
厚労省幹部は「これから審議会で議論するので、細かいところまで決めるわけにはいかないものもある。強く反対する利害関係者もいる」と漏らす。
 ◆キーワード
 <社会保障改革のプログラム法> 自公民3党は昨年夏、社会保障国民会議の議論を踏まえた「法制上の措置」を1年以内にとることで合意した。ただ医療、介護、年金、少子化対策と範囲が広く、個別の改革法案を期限内に作るのは難しい。安倍内閣はまず、大まかな改革項目と実施時期を列挙したプログラム法案を準備し、「法制上の措置」とした。一定の拘束力はあるが、実現には別途、関連法の改正が必要になる。