(社説)医療の改革 患者の協力も必要だ

2013.08.21

(社説)医療の改革 患者の協力も必要だ
  朝日新聞 8・21


日本の医療は、今のままでは立ちゆかない。

私たち患者の側も意識を変え、協力していくことが求められている。
 
社会保障改革のスケジュールをまとめた法案の骨子が、きょう閣議決定される。なかでも大きな変革が想定されているのが医療の分野だ。
 

改革の設計図を描いた社会保障国民会議の報告書には、医師だけでなく、患者に対する厳しい注文が含まれている。
 特に注目されるのは、日本の医療に特徴的な「病院へのフリーアクセス」について、考え方の変更を迫っている点だ。
 これまでは保険証があれば、「いつでも、好きな病院に行ける」というのがフリーアクセスと考えられてきた。
 多くの病院は、患者を獲得するため、最新の医療機器を導入し、幅広い診療科で専門医をそろえようと競争する。
 
結果的に、ベッドはたくさんあるものの、病院間で機能が重複し、効率が悪くなった。
医師や看護師が手薄になり、当直勤務が頻繁になるなど、医療現場は疲弊した。
 
そこで、「必要な時に必要な医療が受けられる」ことをフリーアクセスと考えよう、というのが国民会議の提案である。
 
患者一人ひとりに必要な医療が何かを判断するのは、地域の「かかりつけ医」である。
患者を診て、大病院で最先端の治療が必要なのか否か、リハビリや介護に重点を移すべきなのか、などを判断する。
 
この振り分けが機能すれば、人材や設備が効率的に活用できるようになる。改革の成否は、かかりつけ医が住民に信頼されるかどうかにかかる。
 
この責任を果たすには、患者のニーズにあった病院や施設の受け皿が必要になる。
それらを整備し、連携・協力させる役目は都道府県が担う。消費増税分を財源とした基金も使いながら進めることになろう。
 
一方、患者は病院を自分で選ぶ自由を制限され、かかりつけ医の指示に従う「我慢」が求められる。
今でも、医師の紹介状なしで受診するのに5千円程度余分にかかる病院があるが、こうしたハードルはさらに上がる見通しだ。
 
簡単に進む話ではない。混乱を招く恐れもある。
 しかし、急速な高齢化で、医療や介護の費用は経済の規模が拡大する以上に増える。これ以上、今の世代が使うサービスの費用を将来世代にツケ回しすることは許されない。
 医療の効率化は、国民全体の責任と考えるべきだ。