厚生労働省が検討に入ったと報じられる基金は・・・・・

2013.08.05

「厚生労働省が検討に入ったと報じられる基金は、法的な枠組みを補正予算などではなく医療の提供体制に関する法律である「医療法」改正によって確保し、財源には引き上げられる消費税を充て、そのうえで規模・期間の拡大を目指したものと推測することができるだろう」
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社会保障制度改革国民会議で
何が行われているのか
――日本総合研究所上席主任研究員 西沢和彦


2013年5月15日 ダイヤモンド オンライン
   
 
安倍晋三政権では社会保障制度改革が話題に上ることはほとんどない。
あまり注目されることのない社会保障制度改革国民会議では、一体、何が行われているのだろうか。
国民会議は、昨年6月の民主、自民、公明の3党合意に基づき、社会保障制度改革推進法を根拠に、衆議院解散後の同年11月末に設置され、今年の8月21日が設置期限となっている。

国民会議は、現在まで11回開催されている。
確かに、今年4月4日の第8回まで、事務局をつとめる社会保障改革担当室の意図は、医療とりわけ提供体制に力点を置いているという以外は、見えにくかった。

昨年の第1回はキックオフ、第2回は衆議院選挙期間中でもあり委員間のディスカッション、安倍政権誕生後初となる第3回は仕切り直し、その後、第4回から第7回までの4回は医療を中心に各団体からの意見聴取が続いた。

しかし、4月19日の金曜日と22日の月曜日に土日を挟んで間髪を入れず開催された第9回と第10回の国民会議によって、事務局の意図の一端が垣間見えたといえる。
国民会議では、何も行われていないのではない。その2つのポイントについて検討してみよう。

医療・介護施設の効率的な配置を
促すための基金の創設

 1つは、医療・介護施設の効率的な配置を促すという目的で、2014年4月と15年10月の2回に分け、10%まで引き上げられる消費税収の一部を使って新たに基金を設け、医療法人などに補助金を支給するということである。

第9回の国民会議は、医療・介護に関する各委員からのプレゼンテーションであったが、1人の委員のプレゼンテーションを受け、翌20日に次のような報道が出た。

 「厚生労働省は、医療、介護施設の効率的な配置を促すため、医療法を改正し、地域の複数病院をホールディングカンパニー(持ち株会社)型化した地域独占の医療法人(非営利)の設置を認める方向で検討に入った。

「地域医療・包括ケア創生基金」(仮称)を新設し、新型法人などに補助金を支給する(中略)同基金には毎年、消費税の一部を投入することを想定している」(毎日新聞朝刊


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 医療、介護施設の効率的な配置とは何か。
例えば、わが国は、国民1人あたりのMRIやCTの台数が極めて高い国として知られている。
それぞれの病院が、それぞれ導入しているためだ。
財源に限りがある以上、これは無駄だ。
仮に、地域の複数の病院が連携し、医療機器を共同購入し共同利用すれば、効率的である。
病院ごと診療科など得意分野をすみ分けるということでも同様のことがいえる。

 あるいは、病院は緊急性の高い患者の受け入れや手術に特化し、そうではない慢性的な患者は診療所や訪問看護などとすみ分けることで、限られた医療資源を効率的に使用することもできる。
そのためには、病院、診療所、訪問看護ステーション間の連携が必要だ。
こうした連携は、もちろん自発的にもなされうるが、それにとどまらず、政府が政策で後押しするというのが、ここでのアイディアであろう。

 民主党野田佳彦前政権のもと進められた社会保障・税一体改革では、消費税率引き上げ分のうち1%相当(2.7兆円)については、社会保障の充実に充てるという全体像となっていた。
2.7兆円のうち年金0.6兆円、子育て支援0.7兆円については既に関連法が成立しているが、医療・介護の1.2兆円(給付増・負担減2.4兆円と重点化・効率化1.2兆円の差額)については、目的こそおおまかに示されていても、どのような手段をもってそれを実現するのか明らかではない部分があった(「税と社会保障抜本改革」入門第7回を参照)。

 例えば、社会保障・税一体改革では、病院・病床機能の分化・強化と連携、在宅医療の充実という目的と0.87兆円という所要額は掲げられていても、それが具体的にどのように進められるかは検討課題として残されていたのである。
今回、基金という事務局の意図が見えてきたことで、社会保障・税一体改革において欠けていたパーツが揃ってきたといえる。